悪役令嬢はやっぱり悪役になってしまった
授業と生徒会活動と、公爵家の執務の手伝いに明け暮れて、夜の添い寝以外楽しみのない生活。
えっ、15才になるのにまだ添い寝してるのか?って?
いやー、俺もさすがにどうかと思うけど、お義父さんとリザちゃんが一緒に寝よーと誘ってくる。
たまにお義父さんが居なくて、リザちゃんと二人の時もある。
そういうときは前世の28才の記憶が甦り、未成年にそういうことしちゃダメ!絶対!と標語が頭に浮かぶ。
ほっぺたにキスと、胸にリザちゃんを抱き締める以外はしてないよ。
それに15歳ともなると身長もだいぶ高くなり、リザちゃんより頭一つ分背も高くなった。
いまだに夜中に成長痛でミシミシと軋む間接に、少年らしさが無くなった顔立ちでは以前のように胸にグリグリも躊躇われたし(-_-;)
リザちゃんの豊満なバストに触れてしまったら、標語もぶっ飛びそうなので我慢だ!
クラスでは生徒会のメンバーと一緒にいることが多くなった。
やはり王子と一緒に居ると、なかなか話かけづらいのか他の生徒が寄ってこない。
ミリアも男爵令嬢だが、生徒会のメンバーということと、元々の分け隔てなく誰にでも愛想の良い性格があってか、男性5人の中にも普通に入ってくる。
しかし、女の子の友達がいないかと言えば、女の子にも愛されている。
ハロルドやエリックは最初、ミリアに婚約者の居る男性にみだりに触れるんじゃない!とまるでゲームでのリザちゃんのような発言を繰り返していたが、全く聞き分けないミリアにそのうち何も言わなくなってしまった。
元々甘えん坊キャラのマーロンは最初から仲がいいし、
王子に至っては、人が寄り付かないから寂しかったのか、
丁度いい感じに甘えてくるミリアに心を開いて来ているようだった。
俺は今のところ絶賛リザちゃん以外の女子には冷たい系のキャラを確立しているので、ミリアにも素っ気なくしている。
しかし4人がミリアに優しいなか、俺だけツンツンしてる感じになっていた。
王子やマーロンにはあんまりミリアに冷たく当たるのはどうかと思うよ。とか、もっと優しく話せばいいじゃんとか、言われるが、本命のリザちゃん以外に媚びを売るような真似はしないと決めているので他の女生徒にも同じ対応だと説明する。
それにしても、テレスは生徒会の時にしか王子や他のメンバーに接触してこないし、やはり気を回し過ぎたのかなと楽観視していた。
***
ある日学園の休みの日にリザちゃんはルミエール、マーガレット、レベッカ、そしてミリアを家に招いてお茶会を開いていた。
そこにうっかり足を踏み入れてしまったが最後、
女子たちに捕まってあれやこれやと尋問されることになってしまった。
「さっき聞きましたよー!リザと一緒のベッドで寝てるんですってー!!やー、ラルクさまったら、エッチー!!」
「えっ!リザ!言ったのか!?ダメだよー!」
「やーん!照れてるー!」
かわいいーと女子たちの黄色い叫びにくらりとする。
リザちゃんも真っ赤になって、内緒って言ったのにー!
とわちゃわちゃしだした。
女子って恋バナ好きよね。
「リザは寝顔もかわいいから、毎晩幸せな夢を見れるんだよね」
と折角なので女子に胸キュンしてもらおうとリップサービスをする。
リザってば愛されてるのねーと肘でちょいちょいされているリザちゃん。頬に手を当てて真っ赤な顔をふるふると震わせている。
うーん眼福。
「ラルクってリザの事すんごい愛してるんだねー!
羨ましいくらいお似合いの二人だわー!」
とミリアがにやにやしながら「私にももっと優しくしてー」
と言ってきた。
「ミリア嬢、すいませんが、俺の名前は呼び捨てしないでください。
あと私が優しくする女性はリザローズただ一人と決めています。
申し訳ないが、いくら友人でも、リザローズが居るとき以外では女性とはあまり接触したくないのです。
それがリザローズに対する誠意のつもりなんですよ。」
とわざと紳士の振る舞いで牽制した。
ルミエールとマーガレットとレベッカは大層感動したようで、
「そうよ!ミリアってばラルク様はリザの愛する婚約者なんだから、そんな呼び捨てとかダメよ?」
「私たちだけの会話の時はまだいいとしても、他の方々は浮気を疑う方もいらっしゃるわ。」
「大切な友達の恋人と噂になるのはあなたもいやでしょ?」
とお姉さんのように優しく諭す。
すると、少し考えてからミリアは
「ごめんなさい。今まで、エリック様やハロルド様にも同じように言われたことがあったのに、態度を改めることをしなかったの。
友達の大切な人だから私も仲良くしたかっただけなの。
なのに浮気を疑われるなんて…
それでもしみんなとケンカしちゃうことになったら私嫌だわ。
これからは気を付けるわ。ごめんなさい。」
本当に反省したようにしゅんと項垂れるミリアに、ルミエールが
「いいのよ!私たちはあなたを疑ったことないもの!」
とミリアの背中を優しく撫でる。
すると、反対の隣に座っていたレベッカも、
「ミリアは天使みたいに純真だから、男女のあれこれなんて分からなかったのよね。これからは私たちが色々教えてあげるわ。」
と末っ子のくせにお姉さんぶりだす。
そのあとのミリアは俺に対してもラルク様と敬称を付けてくれ、
それぞれの恋バナや、学園の事、家族の事などを愉快に話した。
***
ミリアが学園でも、教えられたように生徒会のメンバーの事も敬称を使って呼ぶようになり、前のように軽々しくボディタッチもなくなって王子以外の面々は良かったと胸を撫で下ろしていた。
王子は最近ふれあいの少なくなったミリアに自分から声をかけたり、なるべく近い位置に立ってミリアの気を引こうとしてるようだった。
生徒会の仕事をしているときに、ミリアが高い棚にある書類を取ろうと踏み台に上り手を伸ばすと体制を崩した。教室と同じようにミリアの側に立っていた王子がとっさにミリアを抱き寄せる。
「助かったー!フィル様ありがとうございます!」
と安堵したようにふにゃりと微笑む。
「それなら良かった!ミリア、高い所のものなら取るから私に言え。」
「フィル様は優しいですね!でも婚約者のいる方とはあんまり馴れ馴れしくしないように気を付けてるので大丈夫です!あっでも本当に取れないときはお願いします」
と王子の胸を手で押しながら、ふいと顔を背けて腕から離れようとする。
「大丈夫だ、私にはまだ決まった人は居ない。だから甘えてもいいんだよ。」
と腕に力を込めてミリアを逃がさないようにする。
いや、今みんな見てるから…王子、弁えようよ…恥ずかしい…
するとテレスが、そんな二人の間に割って腕を差し入れ、
「フィル様!ダメですよ!嫌がってる女性にそんなことをしてはは!」
「ミリア様もお嫌でしたでしょ?ねっ?」
と二人の甘い雰囲気をぶち壊す。
「嫌だったのか、ミリアすまん!」
と腕を手解き、いたたまれないように部屋から出て行ってしまった。
その王子のあとを追ってテレスも部屋を出ていった。
「嫌とかじゃないの…でも、いけないことなんだよね?」
とぽそりとミリアはこぼした。
***
その数日後、学園の廊下を歩いていると、ふと廊下に立って談笑していたグループと目が合った。すると視線が不自然にそらされる。
少し違和感を感じ、すぐそこの角を曲がった先で立ち止まり聞き耳をたてた。
そのグループはとんでもない噂をしていた。
「リザローズ様とミリア様がテレス様にひどい嫌がらせをしてるらしいよ」
「裏庭の人気のないところに連れて行かれて頬を叩いたみたいだ。そのあとの授業で頬を腫らしてテレス様かわいそうだったわ。」
「ラルク様もあんな性悪女と知らずに、お可哀想に。」
「あんな二人は生徒会なんて辞めさせればいいのに!」
この噂話は少しずつ広がりを見せた。
一体どうしたんだ?
これじゃまるで悪役令嬢じゃないか!!
憤りを感じつつ、しかしリザちゃんを守るためには冷静に対処しなくてはならないと、心を鎮めることにした。




