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ワンダーワールドⅡ  作者: 白龍
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風邪ひいたドクロ

「ゲホ!!グホ!!」

ドクロが、風邪を引いた。

最近溶けたパリアやら何やら短期間で色々な事が起きたので、さすがに体がバテてしまったようだった。

風邪は目に見えないし、油断した隙を狙ってやって来るので、どうしても対処できない事もある。

仲間たちは勿論心配し、よくお見舞いに来てくれた。


「大丈夫?ドクロちゃん」

葵がドクロの部屋に入ると、紫色の壁や床の部屋に骸骨男のテリーがドクロを心配そうに見つめていた。

妹大好きな彼はこうして一日中ドクロを見つめてる。

気持ちは分かるが、ドクロからしてみれば正直物凄くうざったいのだが…。

ドクロの顔は赤く、中々高熱のようだった。マスクもしているのもあって暑そうだ。

テリーは今にも垂れそうな涙を空洞の目に溜めていた。

涙を溜めすぎて顎の隙間からジワジワと滲み出ていて物凄く気持ち悪い。

「死ぬな…死ぬな妹よ…」

葵は半笑いでポケットから出したある袋をドクロの枕元に置く。

「これ、強い薬草よ。潰して飲めば大抵の風邪は治るわ」

「ありがと…」

マスクでやや聞こえにくかったが、弱々しくもはっきり聞こえた。

「多分疲れすぎたのよね。ゆっくり寝てて。あ、後で粉砕男も来るからね」




「は!?粉砕男!?」

とんでもない。

恋心を抱いてる相手なんか来たらますます熱が上がってしまう。

それだけはやめてくれと言おうとしたのだが、葵は既にドアを開けて帰ってしまっていた。


「じゃ、俺もちょっくらネギ買ってくるから、ちゃんと寝てるんだぞ」

何とテリーまでこんな事を言い出した。

もし粉砕男が来たらこんな醜態を晒す訳にもいかない。

テリーがいてくれれば粉砕男の気を引いてもらう事もできたかもしれないが、彼まで外出すると言い出した。

このままでは自分は死んでしまう。

何とか引き留めようとしたが、咳が出て駄目だった。




テリーが家を出てからしばらくたった頃、今回の騒ぎは起きる。


咳をしながら苦しむドクロを窓から覗いていたのは、蝙蝠のナスビだ。

魔王軍からの調査に向かわされたのだと思われるが、こんな所で覗きをするとは暇なやつだ。

「ドクロが寝込んでるじゃないか」

いつも元気なドクロの姿を見ているナスビは新鮮な物を見る目をしていた。

男性アイドルのポスターや綺麗なテーブルと、整った乙女の部屋を見て満喫した後、ナスビはしめしめと牙を出す。



咳が止まらないドクロ。

今日一日は駄目そうだった。

ここ数日間はモンスターは出なかったが、もしも今日出てきたら…真っ赤な顔のままボコボコにされる未来は目に見えていた。

「もし何か来たらこの風邪をうつしてやる」

そう考えるが、こんな風邪を引いて弱っていては、いつ敵に襲われるか分からなかった。

そう考えると、落ち着いて寝ている訳にもいかず…だが動いても悪化するだけだし…。

部屋を見て横たわっていたドクロだが、ゴロンと向きを変え、壁のほうを向いた。


「…!」

脈拍が早くなる。

玄関に誰かがいるのを感じたのだ。

モンスターか!?粉砕男か!?

どちらにせよ、まずい。




一方ナスビは魔王の城からあるモンスターを連れて、森を進んでいた。

ドクロが風邪で寝込んでいる隙に倒す作戦である為、弱いモンスターでも十分と思ったようだが、魔王には念には念を入れるように言われ、仕方なく連れてきたモンスター…。

両手が鉄球になっており、鋼鉄の体を持つ、いかにも力の強そうな巨人だった。

「アイアンドン、風邪を引いた小娘をいたぶる役目を任すのは申し訳ないが、楽な任務だぞ!」

ナスビの言葉に共鳴し、両手の鉄球を地面に叩きつけるアイアンドン。

地面には巨大な亀裂が入る。こんな強い力を、風邪を引いて動けないドクロにぶっぱなすつもりなのだ。

「今回はきっとやつらに勝てるぞ!そしてオイラは魔王様に気に入ってもらって、毎日歯を磨いてもらえる日々が始まるんだ!」

歯を磨いてもらいたいという謎の願いを暴露するナスビ。

早速森のナスビは木をすり抜け、アイアンドンは押し退けて先へ進んでいく。

ドクロの家はもう知っている。このまま一直線に森を進んでいけば、テクニカルシティが近づいてくるはずだ。

テクニカルシティと森の境目の所に、彼女の家はあるのだ。

「どんどん進めアイアンドン!」




その時!

アイアンドンは突然金属音のような鳴き声をあげながら勢いよく仰向けに倒れてしまう。

地面に生えていた雑草が衝撃を吸収しつつ大きく揺れ動いた。

「な、何事だ!!」



ナスビが上を見上げると…。


右足を突きだすれみが飛んでいた。

またお前かとばかりに気取ったポーズを取るナスビ。

「ドクロちゃんを狙ってるんでしょ?そうはさせないよ!」

れみは全てお見通しだ。

彼らと長く戦い続けるうちに、彼らの魂胆も分かるようになってきたのだった。

右手を振りかぶり、ナスビとアイアンドン目掛けて急降下していくれみ!


アイアンドンは巨体と重そうな鉄のボディに似合わぬ速度と反射神経で、鉄球の右手を突きだしてれみを叩きつける!

衝撃が全命中してしまったれみは両手と髪の毛を正面に突きだした凄いポーズをとって飛ばされてしまう。

顔面を両手で抑えつつ、二人を睨み付けるれみ。

これは手強そうだ。



その頃、ドクロはドクロでピンチに陥っていた。

玄関に立っていた何者かは、やはり粉砕男だったのだ。

焦りながら彼を出迎えつつ、部屋に入って再び寝込むドクロ。

粉砕男は彼女の看病の為に部屋に入り、初めてドクロの部屋を目にしたのだった。今まで隠してきた部屋を晒してしまい、ドクロは早速熱が上がるのを感じた。




「へードクロちゃん、意外と綺麗な部屋じゃないか」

「ぐっ…あ、あんまり見るな!」

布団をギュッと握りしめる。

声が震えていたのもあり、粉砕男はドクロの病状が悪化してしまったのかと勘違いし、急いで部屋から出ていった。


そして、しばらく立つと、自分で持ってきたある物をドクロに見せてくれた。

それは氷の塊だ。

「こいつぁ北の海で採れるメガアイスの欠片だ。これを使えば熱も下がるぞ!」

メガアイスを持つ粉砕男の手が、ドクロの目の前に伸びていく。

赤い目を見開き、心の準備をしようと必死になるが、そんな一瞬で覚悟を決められる訳がない。

好きな人がこんな近くで…しかも自分の為に…目が回るような気分だった。


「うげえ何じゃこの熱さ!!?」

ドクロの体温は、頭にのせられたメガアイスを、一瞬にしてドロドロに溶かしてしまった。



「ドクロちゃんを守らないと…!」

「れみ一人では恐れるものは何もないぞアイアンドン!」

れみはアイアンドンの重い攻撃に悪戦苦闘、ナスビは今度こそ作戦が成功するかもしれない気持ちに心を踊らせていた。

少しずつ後退していくにつれ、れみは皮肉にもアイアンドンをドクロの家に近づけてしまっているのである。

「これ以上下がったら…でも、こいつの攻撃はかなり強いし…!」

これ以上下がれば確実にドクロの家が狙われるのは分かっていた。だがアイアンドンは絶え間なく攻撃を続けてきており、反撃する隙がまるで無いのだ。

「そろそろとどめといくか!アイアンドン、いけ!」

アイアンドンの全力の鉄球突きが、れみ目掛けて飛んでくる!

回転しつつ右側に飛行する事でかわすが、同時に発生した石ころくらいなら吹き飛ばせる風圧の強風が、今の攻撃の破壊力を物語っていた。

両手を向けて迎撃体制をとるが、その目はかなり弱気だ。

「はははは!諦めろれみぃぃぃぃ!!」

テンションが高くなったナスビは、まるでスピーカーのように響く裏声で叫ぶ。



その裏声は、粉砕男の耳にも届いていた。

しかも、かなりハッキリと発音してしまっていた為に、己の首を締める事になったのだ。

「…ドクロちゃん、れみが狙われている。少し失礼するぞ」

危機を察知した粉砕男は立ち上がり、窓の外を見た。

まだ窓の外には誰もいないが、れみたちは少しずつここへ近づいてきているのが、彼の直感で分かった。

れみが危険な目に遭っている。粉砕男の黒目のない目に危機感が募る。

ドクロは心配して自分も行こうとしたが、粉砕男は当然ながらそれを止め、自分一人で行くと言った。

そんな彼から溢れるオーラに、ドクロはますます惚れ込んでしまった…。


「よし…行くぞ!」

玄関のドアを開けた瞬間に、粉砕男は物凄い速さで大地を走り抜ける!!






「ははは、もう動きが鈍くなってるのがオイラの目でも分かるぞ!」

れみはもう限界だった。

あれからアイアンドンの攻撃は一秒の隙も与えないのだ。

左手を常時振り回し、右手を突きだし続けるという戦法で、攻撃と防御を同時に繰り出してくるのだ。

リーチも長く、折角離した距離もすぐに詰められてしまうのだ。

ふと、後ろを見るとそこには巨大な岩があり、れみの行く手を阻んでくる。

避けようとするが、岩を確認してれみが動揺し、隙を見せるのをアイアンドンは金色の目で見逃さなかった。

今度こそとどめだとばかりに鉄球を振り下ろす!!



強い衝撃が、アイアンドンの鋼鉄の体に走る。

何かが鉄球に勢いよくぶつかってきた衝撃だ。

「…!」

ナスビは目を見開き、息を呑む。


「大丈夫か?」

ピンチに颯爽と駆けつけたのは、粉砕男だ。あと二秒でも遅かったられみに鉄球が直撃していたかもしれない。

両手で鉄球を受け止め、そのまま押し返す粉砕男。

ナスビは更にアイアンドンに命令を下そうとしたが、それより先に粉砕男はアイアンドンを持ち上げ、勢いよく投げ飛ばしてしまう。

ナスビ目掛けて飛んでくるアイアンドン!

「!!」

ナスビが状況を判断した頃にはもう既にアイアンドンの鋼鉄の体はナスビに命中していた!



倒れたアイアンドンとナスビを横目に、粉砕男はれみに手を差し出した。

「ありがとう粉砕男。あなたが来てくれなかったらヤバかった…」

「なぁに、これしきの事軽いもんよ。立てるか?」

粉砕男の大きな手が、れみの小さな手を握って引き寄せた。




一見すると一件落着に見えたが、一人納得いかない者がいた。

そう、ドクロだ。

何があったのか気になっていたドクロは望遠鏡で窓の外から二人を監視していたのだ。

じっとじっと、全く視線をずらそうとしないドクロ。

頭痛も咳もすっかり忘れ、ただただ悔しそうに歯を食い縛っていた。

「…ちくしょーれみめええええ!!!」


その後、ドクロは怒りのあまりまた熱を上げてしまったのだった…。






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