おしまい
おしまい
翌月曜日、目覚ましが鳴って起きてみると、私はベッドの上で寝ていた。いつの間に着替え
たのかちゃんとパジャマも着ていた。目覚ましに起こされたのは何日振りだろうか。
私は顔を洗いに一階の洗面所へ向かう。さて、私はちゃんと〈元の世界〉に戻ってこられた
んだろうか。まさかまだ『魔法世界』に居るんじゃなかろうか。どちらの世界にいるか、それ
は朝の情報番組のお姉さんが、毎日言っていた『魔法量』と言う言葉を言わなかったことで〈
元の世界〉に戻ってきたことを確認できた。いや、もっと簡単な方法があった。クーちゃんの代わりにガスコンロが置いてあるし、テレビから電源コードが延びている。ここは間違いなく〈元の世界〉だ。
「戻ってきたんだ…」
私は日課の牛乳を飲みながらホッと一息ついた。だけど心のどこかで寂しさも感じていた。
もう、彩花達には会えない寂しさを。
「おはよう」
そう言って台所にやって来たのは我が家のボサボサ、お父さんだ。そう言えば〈魔法世界〉
のお父さんはずっと家に居たような気がするけど…
「お父さん仕事はまだ始まらないの?」
「いや…仕事よりも忙しいことがあったんで、もう疲れて疲れて、それどころじゃなかったん
だよ。まあ仕事も中止になったし、当分はのんびりさせてもらうよ」
それはいいけど、我が家の家計はそれで大丈夫なんだろうか…一抹の不安を感じる。私もつ
いにバイトデビューの時が来るのか?
私は用意されていた朝食をさっさと平らげ、自室へ戻り準備をする。
「あれ…これは…」
鞄の中から彩花に返しそびれていたライターと、紐のついた五円玉が出てきた。
「こいつらも一緒について来ちゃったのか」
私はその二つを眺め、そして五円玉だけ鞄の中に戻して玄関へ向かう。そして壁に掛けられ
た額縁を見て、
「はあ…やっぱりこの額はずっとこのまま飾っとくのかな…?」
私としてはさっさと取り外して、素敵な絵でも飾って欲しいところなんだけど、親が頑とし
て譲らない。お客さんが来るたびに自慢して、恥ずかしいったらない。
まあ、そんなことを思いながら、私は玄関を出た。
学校に着き、上履きに履き替えていると、友美ちゃんが声をかけてきた。
「おはよう那美ちゃん。無事に帰ってこられてよかったわね」
「そうだね。なんだか『魔法世界』でのことは夢だったんじゃないかって思えてきちゃうよ」
「そうね。それより…」友美ちゃんは少し怒ったように、「どうしてリゼイン社にいく時、私
を誘ってくれなかったの?リゼインさんは三人でいらっしゃいって言ってたでしょ?」
それはそうだけど、もしかしたら危険があったかもしれないから念のために…
「危険があるならなおのこと誘って欲しかったわ!私達友達でしょう?」
「ごめんなさい…」怒られた…
「もう!これからは何かあったら絶対私にも声をかけてね」
じゃあ、放課後に部室でと言い残し、友美ちゃんは自分の教室へと向かって行った。そして
私はというと、教室に行く前に部室へ行っておきたくなった。結局ロボットの部品を『魔法世
界』に置きっ放しで戻ってきちゃったから、ちょっと気になっていたからだ。
「あ…しまった、部室の鍵…」
閉まってるだろうなと思い戸を引いてみると、開いていた。誰か居るのかなと思い中を覗い
て見たが、誰も来ていなかった。
でも、部室の奥を見て驚いた。いつも私が座敷童をしていたテーブルの上に、見覚えのある
物が置かれていた。私は急いで駆け寄る。途中で足を椅子にぶつけた…痛い…私はぶつけた所
をさすりながら、
「これは…私が半田付けした部品だ」間違いない。
それにその部品の下にはもう一つ、ある物が置かれていた。
私はそれを持って教室へ向かう。その途中で登校してきた梢ちゃんに声を掛けられた。
「那美ーおっはよー」
「あ、梢ちゃんおはよう。体の方はもういいの?」
「へ?体?何のこと?私はいつでもどこでも元気だぞ?」
あ、そっか。寝込んだのは『魔法世界』の方の梢ちゃんだったね。
「んー?」梢ちゃんは私の顔を覗きこみ、「那美、顔が恋人が出来た時みたいに幸せそうにな
ってるよ?」
「ん?まあね」
「うっそ…マジで彼氏できたとか…?」
「それは想像に任せるよ」
私がそう言うと梢ちゃんはショックを受けた様子で、「私というものがありながら!」とか
言って来たけど、まあ当然無視した。
ところで、どうして私がそんな表情でいたのかというと、もちろん部室で見つけたもう一つ
のある物を見つけたからである。それは手紙。『ナミへ』と書かれた封筒の裏にはちゃんと差
出人の名前も書いてあった。それは、綺麗な黒髪が背中の真ん中辺りまで伸びている、中学生
にも見える私と同い年の女の子の名前だった。
私は自分の席で、この手紙を読むことにする。私の席を暖めてくれている、誰もいない、入
学以来ずっと空席のまま、まるで誰かを待つように置かれている机の前で、ね。
ここまで読んで頂き本当にありがとうございます。
これにて完結です。
でもまだ続きを書きたいなと思うのでそのうち『魔法の世界 に!!』を
投稿しようかと思います。
次回作はもっと『魔法世界』っぽいものをどんどん出します。
それに自転車を作った時のエピソードとか、カットした部分もあるので。
それではまたお会いしましょう。




