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魔法の世界  作者: manam
そのよん
27/30

そのよん 3

「えっ…?」

「なんだこれは!どういうことだ?」

 まさか『リゼ・那美一号』の中から彩花が出てくるなんて予想もしていなかったので、私も少女もこの状況を飲み込めないで居る。彩花は気絶しているのかピクリとも動かない。どうして彩花がこんな所に入れられているのか。どうしてリゼインさんはこんなことをしているのか。それに彩花が女神…?いろんな思いが私の中を駆け巡る。

 いや、今は考えている場合じゃない!

「彩花!」

 私は彩花を助けようと駆け寄る。だが、リゼインさんが、

「あらあら、まだ話は終わってないのよ。大人しくしてなさい」

 そう言うと雷を手に帯びさせ、そして私に向かって放ってきた。だけど私は避けない。私に魔法は通用しない。あの時の友美ちゃんと同じように吸収する。そう思っていた。

 だけど…


「きゃうっ!」


 雷が直撃し、私は彩花まであと一歩と言うところで倒れてしまった。手を伸ばそうとするが、体が痺れて動かない。〈元の世界〉の人間で魔法を使えなければ効かないはずなのに…どうして…

「貴様!やはり騙していたのか!」

「まあ落ち着きなさい。私とやりあったところであなたは勝てないわよ?あなたはまだ魔法の素人なんだから。それよりも話を続けましょう」

「ふざけるな!」

 叫び声と同時に少女から炎が放たれたのが見えた。リゼインさんに向かって一直線に飛んで行く。しかしその炎をリゼインさんはどう言う理屈か、雷でかき消してしまった。

「なにっ…」

「だから言ったでしょう?まあ少し落ち着いて話を聞きなさい。『時空ホール』を安定させるには〔プログレス〕とシンクロさせて、この『空間移動装置』の制御をさせなければいけないのよ。装置の中の子の力を使ってね」


 違う…

「その子の力を使うには、本人自身に力を使うことを承諾させるか、あるいは〔鍵〕を見つけて強制的に開放するか。前者なら簡単でよかったんだけど、もちろん首を縦には振らなかったわ。だから必然的に、〔鍵〕を使っての強制発動ってことになるわね」

 騙されないで…

「確かにこれは褒められた方法じゃないわ。だけど、『時空移動』するにはこれしか手は無いの。あなたにもわかるでしょう?手段を選ばずに実力でこの装置を奪おうとしたあなたなら」

 この人は…

「迷うことなんて無いでしょう?私に協力しなさい。そうすればすぐにでも『時空移動』出来るようになるのよ」

『リゼインさん』じゃ…ない…

「なに?」


 私のかすれるような声を少女は聞き取ってくれた。このリゼインさんは『リゼ・那美一号』のことを『空間移動装置』と呼んだ。あの日私が初めてここへ来て、装置の名前を『リゼ・那美一号』と決めた時から、『リゼインさん』はずっとその名前で呼んでいたはずなのに。それに〔プログレス〕を知っていたのもおかしい。小さな『時空ホール』から見ただけでそんなことがわかるのか?いや、そもそもこの人は最初から〔プログレス〕のことを知っていたんだ。

 そう、この人は〈元の世界〉のリゼインさんだ。

 この人は私達を騙そうとしている。きっと『時空移動』するのに〔プログレス〕とシンクロさせたり、彩花の力を使う必要なんて無い。研究者さんの残していった術式を完全に完成させて、『リゼ・那美一号』に組み込めばきっとそれだけで『時空移動』出来るはずだ。そうでなければ、彼女達を『魔法世界』に飛ばした端末の説明がつかない。その端末は彩花の力無しでも、彼女達を飛ばしたんだから。その端末の代わりに使おうとしたのが、『リゼ・那美一号』だったんだから。

 私は途切れ途切れにその考えを少女に伝えた。


「……………」

 無言の少女。何かを考えているのだろうか?動かない体では確認できないけど…

 ここで少女にリゼインさん側に付かれたらおしまいだ。そうなると多分、リゼインさんの計画は完成し、『魔法世界』はほぼ消滅するだろう。

「確かに、お前の言う通りかもしれねえな」

「あら?その子の言う事を信じるの?そんな何もわかっていない子の言う事を」

「少なくとも、貴様よりはこいつの方が信用できる」

 少女は力強くそう言ってくれた。何だか嬉しくて涙が出そうになるね。

「何を企んでやがるのかしれねえが、さっさとそのちっこいのを解放しやがれ」

 リゼインさんは少女の方に近づきながら、

「何?この会社を襲った犯人のくせに、今度はヒーロー気取り?笑っちゃうわね」〈リゼインさん〉はクスクスと笑って、「まあいいわもうフリをする意味もなさそうだし、本当のことを教えてあげる。その子の言った通り私は〈元の世界〉のリゼイン。そして本当の目的は、〈元の世界〉を『魔法世界』同様の世界にすること。〈元の世界〉に魔力を送ってね。人間をアンテナにして魔力を送るんじゃ効率が悪いから、この『空間移動装置』を利用するのよ」


「一体何のためにそんなことを…」

「私は数年前『魔法世界』が存在すると知った時、『魔法世界』の技術を〈元の世界〉でも使えるようにしたいと思ったのよ。その技術開発のため、何度も世界を往復したわ。もちろん魔法も習得した。その結果、どうなったかわかる?」

 『魔法世界への帰化』…?

「そう。だから魔力の流れでどちらの私かわからなかったでしょ?まあ帰化しちゃったのは、つい最近だけど、それを見越して準備していたのが〈元の世界〉の〔プログレス〕よ。だけど実用化までこぎつけたのにそれは完全じゃなかった。『魔法世界』からの魔力の漏出を防ぐ者が存在したからよ」

 それが…彩花…?


「そう、あの子は『マグネット』を使用して〔プログレス〕に干渉し、完全な稼動を抑えていた。だから私は対抗策として、この『空間移動装置』に罠を仕掛けておいた。あなた達が起動するのを見込んでね」

「ちっ…やっぱりな。だが、あたしらは完全に起動することは出来なかった。そのちっこいのに邪魔されてな。だから貴様の罠も発動しなかったはずだ」

「そう、『空間移動装置』に仕掛けた罠はね。それも見越していたのよ。あの子はきっと起動を阻止する。そして阻止するためには『マグネット』を利用する。だから…」

 『マグネット』の中にも罠を…?

「時限式の罠を『マグネット』に仕掛けたのよ。あの子が『マグネット』にアクセスして数日後に起動する罠をね」

 そうすることで彩花に気付かれないようにしたのか…


「お陰で『マグネット』の不正プログラムの修正に力を使わせ、〔プログレス〕への干渉を弱めることに成功したわ」

 だから彩花はあんなに疲れていたんだ…『マグネット』の修正に力を使い、少女達のケアに力を使い…そして捕まってしまったんだ…

「ちっ…なんて奴だ。自分が助かるためにそこまでするなんて」

「まあ、他にもこの計画を推進している人が居るのだけれど、別にどうでもいいわね。それにこれはあなた達のためにもなるでしょ?このままだと魔力が無ければ生命維持出来なくなるんだし。〈元の世界〉が『魔法世界』なら死なずに済むじゃない。」

 まさか〔プログレス〕に必要な魔力を得るためだけではなく、自分と同じ境遇の人間を増やすために少女達を『魔法世界』に送り込んだの?

「そうよ。だけどそれだけじゃないわ。そうすることによって私の計画の邪魔をしている研究者を炙り出せると思ったのよ。まあ結局どこの誰かはわからなかったけど、自分から舞台を降りたみたいだしこの際もうどうでもいいんだけどね」

「ふん!あたしらはまだ完全に『帰化』したわけじゃねえ!〈元の世界〉に戻っても死ぬことはねえんだよ!てめえの言いなりにはならねえぞ!」


「そうだったわね。それじゃあ『帰化』するまで『魔法世界』に居てもらおうかしら。そうすれば私の気持ちをよくわかって貰えると思うし。それにしても、こんな世界さえなければ私もこんな体にならずに済んだのに。まあ、『魔法世界』にはちゃんと報いを受けてもらいましょう。滅びと言う報いを」

 なんて自分勝手な人だろう。あの人が度々『魔法世界』に来て魔法を習得し、徐々に『気化』していったのは『魔法世界』のせいではなく、あの人自身の責任ではないのか。少女達と違い自分から『魔法世界』に来て勝手に『帰化』したんだ。その責任を『魔法世界』に転嫁してその報いとして『魔法世界』をメチャクチャにしようだなんて、横暴すぎる。悪役の美学も何もない、究極の自己中だ!

 止めなきゃ!あの人を!絶対に!動け…私の体…動いてよ!


「貴様、本気であのちっこいのが『魔法世界』を創った女神だと思ってんのか?」

「そうよ。あなたにもわかるでしょ?あの子の特殊な魔力の流れが」

 特殊な流れ…?

「あの子の体には空間の魔力が流れ込んでいない。にもかかわらず、体の中には魔力があり、そしてそれを空間に放出している。あの子は、体の中で魔力を作り出し、それを空間に放出し『魔法世界』を維持、管理しているの。これを女神と言わずして何と言うの?」

「仮にそうだったとしても、貴様の言う〔鍵〕が無ければどうしようもないだろう」

 彼女の言う通りだ。〔鍵〕がなければ彩花の力は使えない。この事実は私達にとってかなり有利だ。あの人を何とかして、彩花を起こすことが出来れば、私達の逆転勝利が見えてくる。

 痺れも取れてきた。私は少し身を起こして二人の方を向いた。すると〈リゼインさん〉が、余裕の笑みを浮かべて少女に、

「〔鍵〕ならもうそこにあるじゃない」

 そう言って指差したのは…私だった。


「…………………え?」私…?私が〔鍵〕って…どういうこと?

「女神は、『魔法世界』にしか存在できない。そして女神に創られた〔鍵〕は、一つしか存在しない。そうだ、その子に教えてあげれば?あなたが見えてる、その子の魔力の流れを」

「ど…どういうことなの…?」

 私が聞くと、少女は私を見て、

「お前には…魔力の流れがまったく見えないんだ…体にも通っていないし、体の中にも留まっていない。そして空間への放出も無い。あたしはお前のことを、そう言う体質の『魔法世界』の人間だと思っていたんだ」ホントに…?冗談じゃなく?

「今月の初めだったかしら。私は『時空ホール』の発生を感知したの。調べてみると、二人『魔法世界』に飛ばされていた。それは言わなくてもわかるわよね?それで私はあなた達の素性を調べたわ。するとどうかしら。アイザワトモミは合わせて二人存在しているのに、あなたはあなた一人しか居なかったのよ」


「…………………え?」


 梢ちゃんが今の私の顔を見たらきっとこう言うだろう。『那美?顔がアホな上に、狐に豆鉄砲を撃ち込まれたあと、つままれたみたいになってるよ?』…と。

「だとしたら答えは一つ。一人しか存在しないあなたは、女神に創られた〔鍵〕なのよ。女神が自分の力を使われないよう〈元の世界〉に隠していたのね。だけど、予期せず『魔法世界』へ飛ばされてきた。だから私は捕まえようとしたんだけど、女神に邪魔されたわ」

 まさか…あの結界に閉じ込められて、烏賊に襲われた時のこと…?

「それ以降、あなたの姿を見つけることが出来なくなったの。女神が『認識阻害魔法』を使って目眩まししていたから。だけどここ数日、私の仕掛けた罠で女神の力が弱まってやっとあなたの住む家を見つけたのよ」

 あの時私の家に来ていたのはそう言うことだったのか。だけどあの時はまだその『認識阻害魔法』の効力が残っていて私の呼びかけに、このリゼインさんは気付かなかったんだ。


「でも!私は〔鍵〕なんかじゃない!私にはちゃんと両親もいるし、思い出だってある!私が彩花に創られたと言うなら、何で私はあの両親と一緒に住んでるの?」

 リゼインさんはクスクスと笑いながら、

「『魔法世界』と〈元の世界〉の人間は基本的に記憶を共有しているのよ。『魔法世界』独自の部分と〈元の世界〉独自の部分を除いてね。そこで女神はそれを利用して、『魔法世界』にいるその二人の共通部分の記憶を捏造したのよ。あなたは二人の子供だってね。そうすれば、〈元の世界〉にあなたを送っても、二人は自分の子供だと信じて保護するでしょ?あなたに思い出があるのは『そう創られた』からよ」

「そ…そんな…」


 私は床に両手をつき、ガタガタと震えていた。私が今まで信じていたことは皆…創られた…虚構だったの…?私には魔力が無い。なのに効かないはずの魔法が効いた。そう言えば彩花は『魔法世界』の私がどうなったのか教えてくれなかった。そう言えば私には魔法を使わない方が言いと忠告しなかった。そう言えば『魔法世界』の私と会ったことは無いと言っていた。全ての状況が、私が彩花に創られた〔鍵〕であることを示しているように思える。そう考えると全ての辻褄が合う…合ってしまう!

「おい!奴の言う事を信じるな!全部嘘に決まっている」

 少女は私に向かって言ってくるが、

「だったら試してみる?もしこれが〔鍵〕じゃ無いとすれば、女神もこれも何も反応しないはずよ」

 〈リゼインさん〉が私の方に歩み寄ってくる。

 

「橙色の光は鍵。水色は女神の心。そして最後に橙色が上ったのが水色の空」

 脱力状態の私の左腕を〈リゼインさん〉に引っ張られ、引き摺られて彩花の前まで連れて行かれて、

「鍵は心に…つまり胸に置けと言うこと。さあ、〔鍵〕よ!女神の力を解放しなさい!そして生まれた場所へ帰りなさい!」

 そう叫ぶと同時に私の手は彩花の胸の上に置かれ、その途端、私の目の前がぐるぐると回り始めた。目眩のような感覚。気分が悪くなってくる。私の体が光り始め、今までの思い出が私の目の前で回り始めた。彩花に出会った時のこと、高校に入学した時のこと…中学校、小学校…どんどん過去の思い出に遡っていく。

 そして、突然目の前が真っ白になった。



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