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第13話 困っている姉妹を助けたい

更新しました~!!

宜しくお願い致します~!!

「――あ、あの! 妹を……妹を助けてほしいにゃ!」


 ボロボロの恰好かっこうをした黒髪でケモミミの生えた女の子が、必死な顔で話な顔で懇願している。


「はぁ……はぁ……」


 背におぶる小さな銀髪の女の子は明らかに衰弱していた。


「私は獣人族のタマと言うにゃ! ウチはどうなっても構わないので妹をお助けほしいにゃ!」


 ケモミミの生えた女の子……もとい、獣人族のタマさんは必至に頭を下げる。


「杏輔様。お下がりくださいまし」


 シルフィさんは俺を庇うように前に出る。


 全身から殺意と緊張感を漂わせる。


 俺が知っているシルフィさんの雰囲気ではないことはたしかだった。


「答えなさい。この領域は絶対不可侵。何人たりとも入れぬよう結界を張っております。事と次第によっては……我が主に仇名す者だと判断致しますわ」


 両手に赤と青の魔法陣を展開させる。


 手を洗う時に水を魔法陣と違い、明らかに攻撃の意志がある魔法。


 事実として赤の魔法陣からは炎が、青の魔法陣からは氷が現れている。


「今、ここを出て行き、何も見なかったとするならば不問と致しましょう」


「う、ううっ……」


 シルフィさんの有無を言わさない空気に獣人族のタマさんはたじろいでしまう。


 シルフィさんは俺のことを思って行動をしているのだろう。


 だけど、


「ちょ、ちょっと待ってください。見るからに病人じゃないですか。俺はほっとけないですよ」


「関係ありません。子供だろうがなんだろうが杏輔様に害を為す可能性がある以上、私は看過できませぬ。ご理解を」


「シルフィさん。お願いですから、この子達を助けましょう。このままじゃ夢見が悪いですから」


 俺はシルフィさんを説得する。


「この状況で放っておいたら、間違いなくこの子達は危険ですって。それにそんなことしたらじいちゃんだって怒ると思います。だから今は……この子達を助けましょうよ」


「どうか……! どうかお願いにゃ! 妹が助かるなら、ウチはなんだってするにゃ! だからどうか……! どうか……!」


 ケモミミを生えた女の子は地面に額を地面に擦りつける。


 そこに一切の躊躇ためらいがなかった。


「シルフィさん、俺からもお願いですから。せめてこの子の体調が良くなるまでは……何かあった時の責任はちゃんと取りますから」


 俺も頭を下げる。


 頭を下げるのは辞めた仕事で慣れている。それで済むならいくらだって下げてやる。


 するとシルフィさんは諦めたように溜息を吐いて、


「……はぁ~。本当に杏輔様はお人が良すぎです。もう少し警戒心というのをお持ち下さい」


「ということは……?」


「はい。そこの獣人の姉妹。我が主の慈悲に感謝なさい。私は看病の用意を致しますので」


「シルフィさん……ありがとうございます」


「あ、ありがとうにゃ! この御恩は絶対に忘れないにゃ!」


 ケモミミの生えた女の子は再び頭を地面につける。


「いいですから、とにかく今は急ぎましょう。妹さんを看病するのが先です」


 そうして、俺達はケモミミが生えている姉妹を別荘《家》に招き入れる。


 取り急ぎ、病に苦しんでいる妹の子をベッドに寝かせた。


 とりあえず、シルフィさんがタマさんの妹を着替えさせ身体を綺麗にしてもらった。


 即興で氷枕を作った時はかなり驚いた。


 俺もいつかそんな風に魔法を使ってみたいと思った。


「本当に……本当にありがとうにゃ!」


 一段落ついた頃、タマさんが頭を下げる。


 よく見ると、かなり痩せている。明らかに栄養状態が悪いことはたしかだった。


 年は恐らく16才くらいだと思う。


 ただ見た目の年齢以上に、かなり苦労をしていそうな雰囲気があった。


 タマさんは家の中をキョロキョロと見渡すと、


「それに……こんな綺麗なお屋敷に入れてくれて……汚さないようするから、どうかご容赦してほしいにゃ」


 何故かタマさんは頭を下げる。


 DIYしたばかりだから褒められると嬉しいけど……、


「気にしなくても大丈夫ですよ。えっと……タマさん……とお呼びすればいいですかね?」


「あ、タマでも獣人の娘でも……お好きなようにお呼びほしいにゃ」


「それじゃあ……普通にタマさんと呼びますね。俺のことは杏輔って呼んで下さい」


「分かったにゃ。杏輔様……本当にありがとうにゃ……」


 言い方に引っかかりがあるけれど、今は気にしていられない。


「あの……答えづらかったらいいんですが、なにがあったんですか……?」


「えっと、実は……」


 タマさんは話始める。


 曰く、両親が亡くなってから妹と二人で暮らしていた。


 村の人達に迫害を受けるもなんとか生きていた。


 住んでいた村がここ一年に飢饉に晒された結果、神様の怒りを抑えるために生贄にされそうになった。


 殺される前に妹を連れてなんとか逃げて来た。


 ということらしい。


「ひどいな」


 言葉にならない。


 まだ未来のある子どもを生贄にしようとする神経が分からない。


「俺が言えるのか分からないですけど、大変でしたね」


「いえ……こうして手を差し伸ばしてくれただけでもウチは幸せにゃ」


 あぁ……なんて良い子なんだろう。


「実はさ、俺も両親が死んじゃってさ」


「え?」


 気が付いたら、自分の事を話していた。


 なんとなく、タマさんと境遇が近いようにも感じたから。


「時折、じいちゃんが遊びに連れてってくれてんだけど、そのじいちゃんも天国に行っちゃってさ……」


 きっと、俺も誰かに話を聞いてもらいたかったのかもしれない。


 ここ数年、ブラックな職場環境で疲弊しながらも、じいちゃんまで死んじゃって……全部を失ったような感覚があった。


 きっとシルフィさんも似たようなことを思っていただろうからこそ、俺は言葉には出せなった。


 今まで心の内に止めていた言葉が、まるで決壊したダムのように流れ出す。


「だから、タマさんほど苦しい訳じゃないけれど、少しはタマさんの気持ちが分かるからさ」


「杏輔様……。そう言ってくれるだけでもウチは嬉しいにゃ」


 タマさんは安堵まじりに微笑んだ。


 シルフィさんには怒られるかもしれないけれど、説得してみようと思う。


 タマさん姉妹にとって、ここが心安らぐ場所になるなら……、


 ちょっとくらい賑やかな方がじいちゃんもきっと喜んでくれるはずだから。


「杏輔様。少しよろしいでしょうか?」


「あ、シルフィさん。色々とありがとうございます」


「いえ、私は杏輔様の願いに応えたまででございます……それでタマ様でよろしいでしょうか?」


「は、はい! タマと言うにゃ!」


「一度、身体をお流しになってはいかがでしょう? 着替えも用意しておきますので」


 シルフィさんは優しく微笑みながら言う。


「わ、分かったにゃ!」


「それでは、お風呂場の場所は1階の通路の奥。暖簾の先に脱衣所がございますのでいってらっしゃいまし」


「あ、ありがとうございます! いってきます!」


 タマさんはそう言って、お風呂場に向かった。


 この調子だと数分は戻って来ないだろう。


 俺は意を決してシルフィさんに声を掛ける。


「シルフィさん。度々で申し訳ない。お願いがあるんだけど」


「えぇ。構いませんわ」


「え、あ、いやまだ何も言っていないんだけど?」


 予想外の答えに俺は困惑してしまった。


「聞かなくても分かりますわ。あの獣人の姉妹をここに住まわせたいと言いたいのですわよね?」


「え、まぁ……そうです」


「それなら、杏輔様がお好きなようにして頂ければと。ここの主は杏輔様でございます。その杏輔様が望むのであれば、このシルフィは精一杯サポートをするだけでございます」


「シルフィさん……」


「ただそうですわね……申し訳ないと思うのでしたら、今後も変わらず毎晩共にして下さいな。それでしたら、いくらでも杏輔様のワガママくらい許して差し上げますわ」


 シルフィさんは小悪魔っぽい微笑を浮かべる。


「それくらいで済むなら、安いものですよ」


 あとあと高く付きそうな気がするけれど。


「ただ彼女達が望んでくれれば。だけどね」


「そうですわね。その選択をするのはタマ様達の選択でございますから」


 もちろんこの別荘を去るという選択もある。


 だけど、もしも別荘ここで一緒にいてくれるという選択をしてくれるならば、


 タマさん達にとって、ここが癒しの場所になるようにしてあげたい。


 傲慢な考えだけど、それで彼女達の過去も癒えてくれたなら俺にとっても、きっとじいちゃんにとっても嬉しいことだから。


 俺はそんなことを強く思った。

 


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