File78 惑星ミンツトレニスでの休日① 新人がやるお決まりのパターン
お待たせいたしました。
翌日の正午近くには、惑星ミンツトレニスに無事に到着した。
俺の船が通された停泊地には、病院のスタッフと旦那さんが待ち構えていて、感動の再会となった。
「レシア!ナアナ!エリック!無事でよかった!会いたかったぞ!」
旦那さん.マットレイ・ルマーノさんは、奥さんと娘さんの姿が見えた瞬間にかけよってきて、奥さんと娘さんと赤ん坊を力強く抱き締めた。
それとは対照的に、レシアさんとナアナちゃんは物凄く冷静だった。
「やだ。もう名前を決めてたの?ちゃんと相談してからって言ってたのに!」
「女の子の時の名前もちゃんと考えておいたんだぞ?!」
マットレイさんは、レシアさんに叱られて少しへこんだところに、
「お父さん!少しは落ち着きなさい!」
「はい…」
と、娘のナアナちゃんからも叱られてしまった。
どうやらマットレイさんは、家ではしっかりと尻に敷かれているらしい。
ドクター・アキラ・パルケストスは、俺と一緒に病院のスタッフに囲まれていた。
俺は物資を使用させていただいたことに、感謝の言葉を述べていただけだったが、ドクターの方は、これから同僚になる看護師さん達に絡まれていた。
サルビロ・ソイグさんは、挨拶をしている時に仕事の電話がかかってきたので、そのまま忙しそうに停泊地を後にしていった。
お客が全員船を下り、荷物も引き渡して、貨物配達受付で報酬もいただいたところに、誰かから声をかけられた。
「よう!ショウンじゃねえか!奇遇だな!」
「おっさん!なんでここに?」
その声の主は、同業の先輩であり、祖父が存命だった頃から世話になっていた、『セクハラ大王』こと『ホーゼン・トラックス』団長のガルダイト・ホーゼンだった。
「仕事ついでに、休暇を兼ねてメーカーにメンテナンスをな。お前は?」
「仕事なのは一緒。ただ、ルニールの事件には巻き込まれた」
「おいおい。大丈夫だったのか?」
「じゃなきゃここには居ないよ」
「それもそうか!」
おっさんは、自慢の髭を撫で付けながら、陽気かつ貫禄ある態度で話しかけてきた。
流石に組合の受付前でセクハラはやらないようだ。
セクハラさえなければ、なかなかに頼れる人物なのは間違いない。
「そうだ。久しぶりにうちで飯を作ってくれんか?かみさんも会いたがってたんでな」
実は、祖父が存命のころ、祖父がぎっくり腰をやってしまった時に、半年間だけ世話になっていたことがある。
その時は、積み荷のあげおろしに掃除に食事の支度に必要書類の作成などたっぷりとこき使われ、たっぷりと可愛がってくれたものだ。
特に、ホーゼンのおっさんのかみさん、当時の『ホーゼン・トラックス』の副社長、セイリーナ・ホーゼンには、女の子がいないからと、女の姿を要求されていたのをよく覚えている。
「じゃあ明日の昼下がりにでもお邪魔して、夕食を出してもいいか?」
「おう。かみさんも喜ぶわい♪」
おっさんは髭を撫で付けながら、笑顔を浮かべる。
そこに、高校生らしい男女の2人組がやってきた。
そして、ホーゼンのおっさんに近寄ると、
「おじさん。受け取りは終了したぜ」
「書類はこちらです」
「おう。ご苦労」
女の方が、おっさんに書類データを送信した。
どうやらおっさんのところの人間らしい。
見たことがないので新人のようだ。
おっさんの率いる『ホーゼン・トラックス』は複数の船を所持しているため、新人が入ってくるのは当たり前だ。
「こいつらは最近入った新入りだ。といっても、以前のお前と同じ一時預かりだけどな」
ホーゼンのおっさんは、俺に顔を向け、やって来た2人が何者か説明し、
「こいつはショウン・ライアット。儂の先輩の孫で後輩だ。お前達よりは先輩だな」
やって来た2人に、俺が何者か説明をした。
俺はそれにつづけて軽く挨拶をする。
「はじめまして。ショウン・ライアットだ」
「メリッサ・サーズウッドです」
すると、女の方、メリッサ・サーズウッドは挨拶を返してきた。
が、男の方は無視を決め込んでいる。
するとメリッサが、
「ちょっとベン!挨拶ぐらいしなさいよ!初対面の人に失礼でしょう!」
ベンと呼ばれた男は、背が高く、筋肉もがっしりとついている、分かりやすい体育会系の人間のようだ。
ベンは俺を睨み付け、
「けっ!こんなひょろくて弱そうな奴に礼儀なんかいらないだろ?おまけに貧乏そうな個人業者にぐべっ!」
そこ迄まくし立てたところで、ガツン!という鈍い音と共に、ホーゼンのおっさんの拳が、ベンの後頭部に炸裂した。
「すまねえな。実はこいつは俺のかみさんの弟の子供でな。ちいとばかし性根を叩き直してくれと頼まれたんだよ。ま、息子の方だけだがな」
「すみません。馬鹿な兄で…」
「うぐぐ…くそ…」
ホーゼンのおっさんと、メリッサが頭を下げる。
ベンは後頭部を押さえながらも、何故か俺を睨み付けてくる。
「お前の父親から容赦するなといわれとるからな。怪我の1つ2つは覚悟するんじゃな」
ホーゼンのおっさんは、笑いながらベンに拳を見せつける。
「すみません。こいつ、脳筋でバカなんです」
メリッサがベンに冷たい視線を向けながら暴言を吐くと、ベンは
即座に反応した。
「てめえメリッサ!兄貴を脳筋バカ呼ばわりしてんじゃねえ!」
「脳筋を脳筋っていって何が悪いのよ?」
「へっ!こんな真っ白野郎より俺の方が強いに決まってんだろうが!」
どうやらベンは、自分の腕っぷしに相当自信があるらしい。
その様子を見ていた、ホーゼンのおっさんがにんまりと笑った。
「だったら勝負してみるか?」
「へっ!こんな奴にまけるかよ!」
おっさんの挑発に、ベンはあっさりと乗ってきた。
「わりいなショウン。相手してやってくれ」
「じゃあジムかどこかに…」
そして、おっさんが笑いながら事後承諾を取り付け、場所はどこにしようかと話している最中に、
「必要ねえ!」
突進しての右フックを放ってきた。
俺がスウェーバックでそれをかわすと、すぐに左の回し蹴りを放ってきたので、それもスウェーバックでかわしてやる。
その事態に、回りの連中はおどろき、受付嬢の誰かが声をあげた。
そんなものは意にも介さず、ベンは右のストレートを放ってきたので、それを半身でかわしつつ、左のフックを右の顎先に叩き込み、間をおかずに左のこめかみに右のハイキックを叩き込んでやった。
すると、ベンのやつはあっさりと気絶した。
「勝負ありだな。て、聞こえてないか」
まわりからは、称賛の声が上がる。
しかしこう綺麗に決まるとはおもわなかったな。
「すまねえなショウン。こいつはあとでみっちり説教だな」
ホーゼンのおっさんは、申し訳なさそうに謝罪をしながらも、ベンの容態をチェックしていた。
「本当に申し訳ありません!きちんと謝罪させますので…」
妹のメリッサは、兄の代わりに必死に頭を下げてくる。
この兄では、昔から苦労してそうだな。
「あんたに責任はないから気にするな」
俺はそうメリッサに声をかけ、
「おっさん。材料費は多めにいただくからな」
ホーゼンのおっさんには、監督不行き届きとして、迷惑料をいただくことにしよう。
新しい後輩兄妹の登場です。
実生活での所用や、体調や自身の筆の遅さ、他作品の製作などもあって、どうして遅くなってしまいました。
さらには近々『狩り』に行く予定まで…
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