File77 惑星ミンツトレニスへの貨物輸送③ 乗客が増えたが、料金は取らない
お待たせいたしました
2/11 冒頭部分が前話の最後と重複していたので、修正させていただきました。
さらに、修正時に一部文章が消えたため、新たに書き足しました
加筆もさせていただきました。
数回のコール音のあと、両方の相手がモニターにあらわれた。
片方はスーツ姿の年配の男性、もう片方は看護師の制服をきた年配の女性だった。
「初めまして。私は貨物輸送業者のショウン・ライアットともうします。今現在、ソンブレロ社様の荷物を、ナイトデイル市立総合病院のある惑星ミンツトレニスに向けて輸送中です」
『初めまして。私はソンブレロ社・ルニール支部・営業部のワイナフと申します』
スーツ姿の年配の男性・ワイナフ氏は、丁寧に挨拶を返してきた。
『私はナイトデイル市立総合病院で総合看護師長をしているアルローと申します。それで、連絡してきた理由はなんでしょうか?』
看護師の制服をきた年配の女性・アルロー女史は少しいぶかしげだ。
無理もない。
必要な荷物を運んでいる人間からの連絡など、荷物を破損したとか、無くしたとかそういう連絡が殆どだ。
しかし、こっちの要件はそれではない。
「実は、私の船は貨客船で、お客様を乗せているのですが、そのなかに妊婦の方がいて、今出産が始まってしまってるんです」
『なんと!』
『本当ですか?』
その要件に、2人ともが驚きの表情を浮かべた。
「はい。幸いそちらの病院に赴任される医師の方が同乗していまして、その方にお願いしています」
『その方につないでいただけますか?』
「ちょっとお待ちを」
アルロー女史の要請をうけ、俺は操縦室からでて、レシアさんの部屋に向かい、ドクターに話を通した。
「ドクター。いま、ソンブレロ社の営業さんと、ナイトデイル市立総合病院の総合看護師長さんとに連絡取ったんだが、総合看護師長さんがそっちに繋いでほしいそうだ」
「わかった。じゃあ私の端末を同調してくれる?」
「了解」
俺は操縦室に戻ると、ドクターの端末を同調させ、モニターにドクターの顔を表示させた。
『どうも、後日そちらに赴任するアキラ・パルケストスです。既に破水してから1時間ほど経過してます』
ドクターは経緯を説明をしながら、レシアさんの顔だけを写した。
『どうやら事実のようですな。それで私たちに連絡した理由はなんでしょう?』
間違いなく妊婦がいるのを確認すると、ソンブレロ社営業部のワイナフさんは、すぐにこちらに話を振ってきた。
「実は船に備えていた洗剤を切らしてしまったのと、タオルの数が心もとなくなってしまいまして。
なので、洗剤と赤ちゃん用のおくるみの分だけでも使用できないかとおもいまして。もちろん代金はお支払します。
それと、使用して病院の業務に影響がないかどうかも気になったのでその辺りの確認もしておきたかったのでご連絡致しました」
なので事情を説明したところ、
『こちらはかまいませんよ。そもそもそれらの品は、そういうことのために使われるべきものですからね。不足分は、次便の時に補充しておきましょう』
ソンブレロ社営業部のワイナフさんは、笑顔を浮かべながら使用を許可し、
『こちらも了解しました。遠慮なく使ってください。産婦人科のベッドも空きがあるから準備しておくわ。それと、さっきは失礼な対応をしてごめんなさいね』
アルロー女史は、許可を出すと同時に、さっきの対応について謝罪をしてきた。
『お詫びにもならないけど、貴女が出産するときは是非うちに受診に来てちょうだいね♪うちは腕のいい先生がそろってるから安心よ』
「はあ…ありがとうございます…」
なんで俺が…と、思ったが、今は女の姿だし、シュメール人としては、確率は0じゃあないんだよな…。
まあ俺は出産する気はないけど。
「ともかく、ありがとうございます!ありがたく使わせていただきます!」
『いえいえ。無事出産が終わることをお祈りいたしますよ』
ワイナフさんはそういって通信を終了したが、アルロー女史はドクターと話があるからとそのままドクターと会話を続けていた。
ともかく、洗剤とタオルの使用許可が出たからには、貨物室に必要な物を取りにいくことにする。
俺の船『ホワイトカーゴⅡ』は、下部貨物室型輸送貨客船である為に、下の貨物室部分にエアロックがある。
ラウンジの右舷部分にはしごがあり、そこからエアロックに入り、貨物室内の空気を抜き、後部ハッチを開けて、船外にでる仕組みだ。
なので、貨物はかならずコンテナに収容してもらうようにしている。
普段は貨物室に空気を注入してあるので、そのまま入れるようになっている。
そしてコンテナの中から、洗剤1箱とタオル十数枚を取り出してから上に戻った。
上にもどると、ドクターが看護師長に対して色々と質問していた。
専門医ではないため、アドバイスをもらっているらしい。
こっちも洗剤とタオルを確保したからには、多少の事態には対応できそうだ。
視点変換 ◇アキラ・パルケストス◇
レシアさんが破水してから1時間。
産婦人科の勉強はしたし、検体用バイオドールで帝王切開も経験してはいるけど、私の専門は外科だからどうにも不安だ。
そんな時に、私と同じシュメール人の船長から声がかかった。
「ドクター。いま、ソンブレロ社の営業さんと、ナイトデイル市立総合病院の総合看護師長さんとに連絡取ったんだが、総合看護師長さんがそっちに繋いでほしいそうだ」
やった!総合看護師長なら産婦人科も経験があるだろうし、なくても医師を呼んでくれる!
「わかった。じゃあ私の端末を同調してくれる?」
「了解」
船長は、妊婦さんに配慮して女の姿をしている。
その辺の配慮をしてくれているのも、この船の居心地がいい理由の一つなのだろう。
ともかく私は、自分の汎用端末のカメラを起動させ、通信に入り込んだ。
「どうも、後日そちらに赴任するアキラ・パルケストスです。既に破水してから1時間ほど経過してます」
レシアさんの顔だけを写し、顔色が見えやすいようにした。
『母体の状態は大丈夫なの?』
「はい。触診だけですが、逆子や帝王切開の可能性は低いとおもいます。あと、予定日は11日ほど先だったそうです」
もしもの時には、この部屋を簡易手術室にする必要がある。
『危険な早産ではないわね。このまま経過をみることにしましょう。このまま繋ぎっぱなしにして、妊婦さんの容態が変わったら教えてちょうだい』
「了解です。病院の方も受け入れをお願いします」
『もちろんよ!任せておきなさい!』
アルロー総合看護師長は、頼もしい笑顔を浮かべ、自分の胸をドンと叩く。
するとその後ろに女性の看護師が現れ、
『看護師長~内科のクロルマンさんの採血終了しました~』
『ありがとう。そうだわ、手が空いてるなら産婦人科の空きベッド使えるようにしておいて、いま船のなかで出産が始まった人に入ってもらうから』
『分かりました~行ってきま~す。あ、そっちお願いしますね』
アルロー総合看護師長の指示にしたがい。私に一声かけてから姿を消した。
そのやり取りをみて、私はこの病院でやっていけると思った。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
それから約1時間後。
無事に男の赤ちゃんが産まれた。
直ぐ様うぶ湯をつかい、タオルでくるんでから、レシアさんに手渡した。
ちなみにうぶ湯は、アルロー女史に習って俺が入れた。
ナアナちゃんは、お姉さんになったという自覚が芽生えたのか、動けないレシアさんに代わり、ずっと赤ちゃんに付きっきりで、様々に世話をやいていた。
そしてその時ようやく、レシアさんの旦那さんに連絡していなかったことに気がついた。
なので慌て連絡したところ、会社終わりに同僚達と酒場にいたらしいが、出産報告を聞くと、
「ホントに?マジか?やったぞ!聞いてくれ、俺に息子が産まれたぞー!」
と、大騒ぎし、近くにいた同僚達はもちろん、たまたま居合わせた見知らぬお客さんからも祝福を受けていた。
あれは今から、朝までコースだな…。
用語説明
惑星上の区分:惑星上は星都を特別区とし、広い方から、
エリア(地方)国
シティ(市)都道府県
タウン(町)市町村
ブロック(街区)番地
という感じに区分されている。
つまり、ナイトデイル市立総合病院は、日本でいうと都道府県立の病院になる。
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