File71 惑星ルニールへの貨客輸送⑤ 古今東西を問わず失恋した人には気を使う
ますます寒くなってきました…
「てっテメエ何しやがる?!」
ラキドニスは鼻血を出しながら睨み付けてきた。
「これは俺の船だ。なに自分の物みたいに振る舞ってんだ?」
なので俺は自分の権利を主張してやった。
俺が船長だと聞いたラキドニスは、俺の外見から、この一撃は不意打ちを食らっただけで、腕力で捩じ伏せれると考えたのだろう、
「じゃあこの瞬間からこの船は俺様のものだ♪」
鼻を摘まみながら、死ぬ程頭の悪い発言をした。
それを聞いた瞬間、怒りより哀れみが湧いた。
「頭の中にゴキブリが湧いてるんだな…可哀想に…」
「なんだとテメエ!」
ラキドニスは立ち上がって、怒りの表情をしながらこちらに近寄ってくる。
どうやら鼻血は止まったらしい。
「偉そうな口を利きやがって!俺様は産まれてこのかた喧嘩に負けたことがねえんだ。なぜな」
能書きを垂れ流し始めたので、短針銃で眉間を撃ってやった。
その光景に全員があんぐりと口を開けていた。
「あんた腕っぷしに自信あるんじゃないの?」
そのフリーズからすぐに立ち直ったレイリアが、俺に詰め寄ってくる。
「こんなバカに付き合う暇はない」
タラップの下まで、ラキドニスを転がしに行こうとドアを開けると、隔壁がしまり始めている光景が広がっていた。
俺はすぐに操縦室に取って返し、
「管制塔!隔壁を開けてくれ!」
『ダメだ!海賊が近くにきちまったんだ!開けるわけにはいかない!』
管制塔に隔壁を開けるように要請するが、にべもなく断られた。
隔壁のしまり具合から考えると、数分か数秒前なら出ていけたかもしれない。
くそっ!あのバカがこなけりゃ脱出できてたんだ!
まあすんだことを嘆いても仕方がない。
「あんたらはこのまま船にいてくれ。下手に動き回るより安全だ。だが、下手なところを触らないでくれよ」
ラキドニスを拘束しながら、レイリア達に指示をだす。
「何する気なの?」
「こいつを警察につきだす。不法侵入者だからな」
目を覚ませばうるさいだろうし、不愉快になる。
なにより不法侵入者兼密航者だ。
本当なら、生身で宇宙空間に放り出してやってもいいくらいだ。
「だったら私が案内してあげる。道、あんまりくわしくはないんでしょ?」
「ああ。よろしく頼む」
正直この申し出はありがたかった。
ここにきたことは何回かあるが、道がかなり複雑で分かりにくくなっている。
ギルドのカウンターまでなら大丈夫だが、救出に行った商店街までの道は、案内がなければヤバかった。
おそらく元々は軍事要塞のため、攻め込まれた時の対策でこうなっているのだろう。
普通の状態なら、案内用の立体映像看板や、自動案内の移動板があるのだが、緊急事態のためか、一切稼働していない。
そのため、地元の人間でないと、目的地にはたどり着けないだろう。
ともかくラキドニスを軽トラの荷台に乗せ、レイリアを伴い、警察署に向かった。
どうやら入り込んでいた帝国貴族はそこまで多くはなかったらしく、先ほど同様に出くわすことはなかった。
警察署の前には大勢の警官や、捕縛された帝国貴族達が転がされていた。
その帝国貴族達を監視している警官の1人に、さっきのディックスがいた
レイリアは、ディックスを見つけて安堵の表情をみせる。
軽トラから降りると、こちらを見つけたディックスが慌てた様子で近寄ってきた。
「レイリア!一体どうしたんだ?脱出したんじゃなかったのか?」
レイリアは荷台に乗せていたラキドニスを引きずり下ろすと、
「こいつが!」
思い切り蹴り飛ばした。
「せっかく脱出に協力してくれたこの人の船に不法侵入して、船を占拠しようとしたのよ!さらにこいつにかまったせいで、隔壁が閉まって脱出できなかったのよ!」
それを聞き、驚いた表情のディックスが、こちらに視線を向けたので、
「間違いない。不法侵入だから麻酔銃で眠らせた」
そう報告し、やたら重さのあるラキドニスのバッグを手渡した。
これで任務完了だ。
早いとこ船に戻ることにしよう。
そのとき、意外な人物が現れた。
「この宇宙港の警察はここでよろしゅうございますか?」
さっきまでの俺の依頼人だった、アルフレッド・セバスチャン氏だった。
そしてその後ろには、
「我が帝国の恥さらしどもを連行してきた!」
腕を後ろ手に縛られ、首に縄をかけられ、数珠繋ぎにされた帝国貴族達をつれた、軍人御嬢様ことクロネーラ・エーリカ・ギルテンス少佐と、もう1人人影があった。
その姿を見た警官達は、ひそひそと会話をしたあと、代表者らしい人物が前にでてきて、
「あんた、もしかして帝国側の海賊討伐部隊の人かい?」
どうやらそのあたりの情報は回ってきているらしい。
というより、その手の情報はいの一番に入手しているだろう。
だが、この御嬢様は帝国軍人なのは間違いないが、趣味のための品物を受け取るためだけに、帝国からやってきている。
どう返答するのだろうと黙っていたところ、
「えっ?…うっうむっ!私は銀河帝国軍主力艦隊・第五部隊所属軽巡洋艦『ゴルトフォックス』艦長・クロネーラ・エーリカ・ギルテンス少佐。今回は包囲作戦の先行調査要員としてここにきていたのだが、連中の動きが意外にも早かった。そのためにこちらに被害がでてしまった。本当に申し訳ない」
と、調子のいいことをのたまっていた。
「この海賊どもは、そちらの司法で裁いていただいてけっこうでございます」
その間に、アルフレッド氏は帝国貴族達を警察に引き渡していた。
その時、
「ディックス!」
という、女性の声が響いてきた。
その方向をみると、もう1人の人影だった若い女の子が、ディックスの胸に飛び込み、
「アニー!」
ディックスもしっかりと彼女を抱き締めると、そのまま流れるような自然さでキスをしていた。
ああ、恋人なんだなと理解し、彼女も連れていった方がいいのかレイリアに尋ねようとしたところ、
「やっぱね…そうだよね…あは…あはは…」
魂が抜け出ていた。
とりあえず彼女を軽トラに乗せ、そっとしておくことにした。
すると警察署内から警官が慌て飛び出してきて、
「大変だ!南の2番の停泊地が海賊に侵入された!」
さらにヤバイ状況になった事が報告された。
警官達が騒然となり、帝国貴族達は歓喜の声をあげた。
「さっさとこの拘束を解いて詫びを入れろ!」
「今ならお前達の全財産と美形な女を全員差し出すだけで許してやる」
など、自分の立場を全く理解していない発言を繰り返しはじめた。
ともかく、より危険な状況に、おちいりつつあるので、早く船に戻った方がいい。
レイリアを乗せた軽トラに乗り込んで出発しようとしたとき、
「ちょうどいい!たしかトランスポーターのライアットだったな。それで私を南の2番の停泊地に連れていってくれ!」
軍人御嬢様に捕まってしまった。
「悪いが道に詳しくない。案内板は消えてるし、軽トラもナビがつかえない」
「あー…そうだな…」
事実を伝えると、軍人御嬢様もさすがに渋い顔をした。
おそらく最初は迷っていて、一緒にいたディックスの恋人にここまで連れてきてもらったんだろう。
すると突然、
「私が案内する。私なら道、分かるから」
レイリアが声をかけてきた。
すると、軍人御嬢様がすぐに反応した。
「危ないぞ。このライアットだって、運んでもらったらすぐに避難してもらうんだからな」
軍人として、帝国貴族として、民間人を巻き込みたくないのだろう。
それなら俺も巻き込まないでほしいものだ。
しかし、危ないのは間違いない。
レイリアだけでも降ろして行こうと思ったのだが、
「ここ…居づらいから…早く移動したい…」
光の無くなった瞳で、ディックスとその恋人を見つめながら、ぼそぼそと返答する様子は、哀れみを誘った。
年末年始にかけて、所用などもあり、
更新ができないかも知れません。
その際はご勘弁ください…
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします。
読みきりの連載を準備中
https://ncode.syosetu.com/n2702gq/




