File67 惑星ルニールへの貨客輸送① 帝国からの依頼者
ほんのり長め
日にちのチェックでミスがあったので修正しました
ビーテンツに到着したのは、ちっちゃいおっさんこと、ニゼー・コギアを引き渡した翌々日の朝だった。
まずは依頼された荷物を引き渡し、依頼を終了させて報酬をいただいた。
それからは、ちっちゃいおっさんをどうやって船に乗せたかを、地元警察に説明する時間になった。
航海記録や、救難カプセルのビーコンなんかの記録もあったので、説明はあっさりと終了した。
むしろ、フレデリック・オーシェライドの方が、女の子になって食事につきあってくれとしつこく付きまとってきたので、非常に邪魔臭く、一番時間を取られてしまった。
そのあと、フードコートで昼飯を食ったあとに、依頼を受けるべく貨物配達受付に向かった。
カウンターにいたのは、以前に世話になったビステルト人・キーゼル種の女の子だった。
「いらっしゃいませ、惑星ビーテンツ銀河貨物輸送業者組合へようこそ!」
彼女の笑顔を眩しく思いながらも、腕輪型端末を検査機にかざした。
「依頼一覧を見たいんだけど」
「かしこまりました。ショウン・ライアット様ですね。…お持ちの船は貨客船で間違い御座いませんか?」
彼女は、俺の身分証をチェックしたあと、俺の船の種類を確認してきた。
「ああ、そうだけど」
「じつは、貨客船をチャーター希望している方がいらっしゃるんですよ。荷物もそちらの船に載せれるぐらいのもので、荷物と一緒に到着したいらしくて」
なるほど。よくある話だ。
どうしても品物と一緒でないと駄目な場合や、盗難や破損を心配して一緒にという客がたまにいるのだ。
「荷物と希望者の人数は?」
「人数はお一人、荷物はエア・カーです」
「エア・カー?」
エア・カーは、フライトバスと同じ、大気圏内で使用する移動手段だ。
バスやトレーラーなどの大型はフライト◯◯。
小型はエア・◯◯という。
大きさ以外は仕組みは変わらないが、何故か呼び名はちがうらしい。
単純に『車』とだけ言うこともある。
普通は大型の貨物船に何百台と積んで運ぶものだが、個人の納品物なら1台だけというのもおかしい話ではない。
「目的地は?」
「惑星ルニールです。それと依頼者は銀河帝国の方なんですよ」
そう彼女が答えるのと同時に、彼女のデスクの通信音が鳴った。
俺はどうぞとジェスチャーし、引き受けるかどうか考え始めた。
銀河帝国の人間が、共和国にいること自体は問題はない。
しかし今現在、一部帝国貴族による海賊行為が横行しているため、この依頼自体がなにがしらの罠という可能性がある。
すると、通信にでていた彼女から、意外な言葉がはっせられた。
「あの、依頼者の方がお話したいそうなのですが、お話願えますか?」
そういって、俺の許可をもらうことなく、彼女は画面を俺の方に向けてきた。
『お初に御目にかかります。私は銀河帝国貴族、ギルテンス侯爵家の筆頭執事のアルフレッド・セバスチャンと申します』
画面の向こうにいたのは、執事というものを絵に描いたような老人だった。
そしてアルフレッド氏は、こちらの名前を聞くこともなく、熱弁を振るいはじめた。
『まず、当然お疑いになるでありましょうことから宣言しておきます。
私と私の仕える侯爵家の方々は、決して海賊行為を肯定したり、その支援活動などは行っておりません!
先代の皇帝陛下の御代に、愚かな貴族によって戦争が起こり、それを教訓として、貴族にも厳しい罰則が敷かれました。
しかしそれは、きちんと貴族としての責任を果たし、義務を放棄しなければ、なんの問題もないものなのです!
現に私がお仕えする侯爵家の方々は、責任も義務も見事にこなし、領民からは慕われ、領地の生産も向上し、領民も侯爵家の方々自身も豊かな生活を送っております!
それに比べ、海賊行為をしている連中ときたら、責任も義務も果たさず、領民に重税をかけて富を搾り取り、さらにはありもしない事実にすがり付いて、この共和国や星域連邦に不法入国し、非道な海賊行為を行っておるのです!
ちなみにありもしない事実というのは、昔、銀河帝国が全てを支配していたというものです!
建国自体が共和国・星域連邦より遅いのは周知の事実。
それをあろうことか、『実は建国は500年早かったのだ』などと、恥も外聞もなく宣言したのです!
それゆえ、連中は好き勝手に両国に不法入国し、海賊行為に及んでいるのです!』
そこまで一気にまくし立てると、酸素が少なくなったのか、ぜいぜいと荒い呼吸をする。
『と…ともかく、私は正規の手段で入国し…、共和国産の…エア・カーを…購入したというわけです…』
そのお陰で落ち着いたらしく、ようやく話を進めてくれた。
だがまあ、海賊の関係者ではない事は理解できたし、またなんかがあった時の為の貯金を増やすため、依頼は引き受ける事にした。
「じ…事情はわかりました。依頼の方はお引き受けいたします。積み込みと出発は明日の朝になりますが、かまいませんか?」
『はい。それでよろしくお願いいたします』
アルフレッド氏は、俺の言葉に嬉しそうに胸を撫で下ろした。
翌朝早々に、エア・カーが格納されているコンテナを伴って、アルフレッド氏がやってきた。
「おはようございますライアット様。惑星ルニールまでの6日間、よろしくお願いいたします」
昨日、画面越しに見たままの、ピシッとした執事服姿だった。
「おはようございます。貨物室の準備は終わってますので、直ぐに積み込めますよ」
「ありがとうございます。では書類をお渡しいたします」
書類を受けとると、不備がないかチェックし、
「積み荷はエア・カー。車種は乗用車で、ロールスター社製ロールスターファントムMkーⅦ(7)。これで間違いはありませんね」
依頼者が居るので直接確認を報告する。
「はい。間違いはございません。では、最終チェックをお願いいたします」
そういうと、アルフレッド氏はコンテナの扉を開けた。
コンテナのなかにあったのはピッカピカの高級車であるロールスターファントムMkーⅦ(7)だった。
俺はコンテナの中に入り、怪しいものが紛れ込んでないかチェックをはじめた。
「これ、かなり古い車ですよね?まるで新品みたいですけど」
俺はなんの気なくそう質問した。
が、これが間違いだった。
「はい。この車が販売されたのは65年前。現在ロールスターファントムはMkーⅩⅥ(16)まで発売されておりますが、歴代で一番人気があるのがこのMkーⅦ(7)なのです!
じつはこれはレストア品でして、ある修理工がスクラップ置き場で見つけたものを、完璧に修理し、ロールスター社から本物のお墨付きをいただいたものなのです!
私がお仕えする侯爵家の方々は、エア・カーやフライトバスなどがお好きでして、それをご自分の収入で購入され、自費で博物館を建設され、その収入は全て、博物館の維持費と領地の財政にのみ使われております。
そのコレクションに、今まで加わっていなかったのが、このロールスターファントムMkーⅦ(7)なのです!
いやあ、私もカーマニアですので、見つけた時は興奮いたしました…」
昨日同様、アルフレッド氏はかなりの熱量で語ったのち、恍惚と感動の表情を浮かべていた。
その時に、俺の呆然とした表情を見たセバスチャン氏は、自分の行動を思い出し、
「失礼。車を語りはじめると止まらないのが、私の悪い癖でして…」
恥ずかしそうに頭を掻いた。
いや、車だけじゃないだろうと思いながらも、話を終わらせるためにも、直ぐ様反応した。
「ともかく、チェックは終わりました。怪しいものも紛れ込んでいたりはしていませんでしたので、コンテナを閉めて固定しましょう」
俺は愛想笑いをしながらコンテナを閉じ、貨物室に入れ、コンテナを固定した。
最終チェックをし、貨物室をロックし、船内に乗り込む。
こうして、積み荷は問題ないが、依頼者に難がある仕事が始まった。
この場を借り、ご指摘をいただいた箇所に対し、説明をさせていただきます。
この作品は、基本的に主人公であるショウン・ライアットの視点・主観で進んでいきます。
なので、主人公から別人に視点を変更する際には『視点変換 ◇誰々◇』と表記しています。
しかし別人から主人公に視点が変わる場合、『視点を主人公に返した』という意味で、
『視点返還 ◇ショウン・ライアット◇』と、表記しています。
ご指摘いただいた方には、ご親切を無にする形になってしまい、申し訳ありませんでした。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




