File53 惑星オルランゲアでの休暇⑤ 予想外なゲスト
ちょっと短めです
開始の放送が終わってからは、まさに戦場だった。
ロナ達のサークル『竜巻洗濯堂』は、ロナがいった通りの人気サークルだったらしく、凄まじい客の列が出来ていた。
金を受け取っては本と釣りを渡し、金を受け取っては本を渡しをひたすら繰り返す。
時折手を握ってくる奴とか、写真を撮ろうとする輩はいたが、たいしたトラブルもなく、売り子としての仕事はこなせたと思う。
そうして3時間ほどたった頃、ようやく行列がなくなった。
それとほぼ同時に、カートに乗せた収納箱に大量の紙の本やら記憶媒体やらを携えたメンバーが帰ってきた
「「「「大・勝・利!」」」」
なぜか全員が、俺と同じゲームの別のキャラクターのコスプレをしており、その顔は、戦場を渡り歩いてきた兵士にも、獲物を仕留めてきた狩人にも見えた。
そうして、自分の名前の書かれた収納箱をならべ、薄い本の分配作業を始めた。
なお俺はその作業には一切反応するつもりはなかった。
その薄い本の内容は、彼女らの纏う黒いオーラとそのにやついた表情で理解ができると思う。
20分程でその分配作業が終わると、アーニャが俺とロナを見つめてきた。
「そろそろご飯の時間だけど…。たしかご飯は大丈夫って言ってたよね」
「ああ、昼飯の確保が大変だってきいたからな。船をドック入りさせるのに合わせての食材消費ついでに弁当を用意してきた」
その話を、昨日ロナから聞いた俺は、食材の消費をしたいからと、昼食の用意をかって出た。
そのおかげで、かなりの食材を消費することができた。
「ライアットさんは料理はプロ級だから味は保証するよ♪」
なぜロナがドヤ顔な理由はわからないが。
ちなみに弁当の内容は晋蓬皇国風の弁当で、塩とツナマヨと昆布のおにぎり・具入り厚焼き卵・唐揚げ・肉じゃがコロッケ・きゅうりのピクルス(浅漬け)・ミニトマトという、手やピックで簡単に食べられるものにしてみた。
「「「「「「「「美味しそう!いただきます!」」」」」」」」
彼女等は我先にと弁当に群がった。
ん?なんか1人多かったような気がしたんだが…
「まさに『ソーナの手作り弁当』だね♪」
「なんなんだそりゃ?」
今自分がさせられているキャラクターの名前が出てきたので、思わず質問してしまった。
「ゲーム内でキャラクターのHPを回復させるアイテムの一つに、『ソーナの手作り弁当』っていうのがあるんだよ。ポーションなんかもあるんだけど、そのアイテムはパーティーが全回復するんだよ。入手方法が戦闘後にランダムに手に入るだけだから、なかなかなレアアイテムなんだよ」
「へー。ってだれだ?!」
質問に答えてくれたのは誰だろうとふと横をむくと、いつの間にか俺の横に見知らぬ人がいて、平然と弁当をつついていた。
「やっほー♪さっきぶり♪あ、コロッケちょうだい」
よくみれば、さっき客としてきていた撮影娘だった。
「その人は北ポンさん。私達と同じ同人作家で、雑誌デビューしてプロとして活躍してる人なんですよ」
イリスがお茶をいれながら紹介してくれた。
その北ポンをよくみると、黒髪の一本おさげの頭の上には狸の耳があった。
どうやら彼女はビステルト人のラクー種らしい。
狐獣人=ビステルト人・フォグ種のネーヴェとならぶと、ちょうどいいコンビな感じだ。
「北ポンこと、キョウカ・ノスラウスだよ。ちなみにPNもそのまま『北ポン』。あ、卵焼きもらうね」
こうして食事は賑やかかつ楽しげに終了したのだが…
最後のデザートに出した、クレープロールのチョコバナナ・ミックスベリー・カラメルプリン・宇治金時をめぐって、仁義無き戦いが勃発したのは予想外だった。
視点変換 ◇スティックキャンディことキャロライン・ウィルソン◇
「ありがとうござました」
私は、本を買ってくれたお客さんに挨拶をすると、ふうとひと息ついてから、椅子に持たれかかった。
以前に受けた仕事の影響でものすごいお客さんが来ていたのだが、ようやく人の列が途切れてくれた。
そのとき、私の同人仲間であり、私の代わりに本の購入にいってくれたコロコロポックルさんが慌てた様子でもどってきた。
「キャンディさん!キャンディさん!」
「あ、コロコロポックルさんお帰りなさい。どうかしたんですか?もしかして頼んでた新刊売り切れてましたか?!」
私が頼んでいた新刊は、人気サークルのものだから、売り切れている可能性もある。
「そっちは無事ゲットしました!それよりこれ見てくださいこれ!」
「なになに…え?」
ポックルさんが見せてくれた画像を見て、私は固まった。
「凄いでしょう!キャンディさんが描いた、ソーシャルゲーム『ソードプリンセス 剣姫招来!』に出てくるキャラクター、オオキタ・ソーナそっくりなんですよ!」
「いや、そっくりなんてものじゃありませんね!むしろ本人?な感じしない?」
「そうそう!そんな感じなのよ!」
コロコロポックルさん以下、私の同人仲間たちは、先ほど見つけたという、ソーシャルゲーム『ソードプリンセス 剣姫招来!』に出てくるキャラクター、オオキタ・ソーナのコスプレイヤーを、まるで本物のオオキタ・ソーナのようだと盛り上がっている。
ええ。その通りよ。
この画像に写っているのは、間違いなくオオキタ・ソーナ本人よ。
だって…だって…
オオキタ・ソーナは、その画像に写っている、貨物輸送業者であるショウン・ライアットの女の時の外見をモデルにして描いたんだもの!
ゲーム会社から依頼されて、そのイラスト製作時の息抜きで、知り合いを使ってキャラクターを描いて遊んでたんだけど、
その時たまたまショウン・ライアットの女の姿を使ってオオキタ・ソーナを描いたやつを、担当者が勝手にもっていって企画会議に出して即採用になってしまったのだ!
しかも、たまたま書いてしまった、『お料理上手』という本人の特徴までキャラクターに採用してしまった。
当然抗議をし、差し替えを要求した。
それは息抜きに知り合いをモデルにして描いたからダメだって。
そうしたら「わかりました。外しておきますね」
とかいってたのに、後からちゃんと描いたのを送ったのに、なぜかそれを使用してたのよ!
訴えるっていったら契約不履行と見なして法外な慰謝料を請求してきた。
もともとあの担当もなんとなく気持ち悪かったし、あのゲーム会社とは二度と関わらないと決めたわ。
にしてもなんで?なんでこの会場にいて、さらにオオキタ・ソーナのコスプレしてるの?
絶対にこんなところにこないと思ってたのにどうしようー!!
視点終了
主人公の地獄の原因の登場です(笑)
ですが、諸悪の根元ではありません。
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