File51 惑星オルランゲアでの休暇③ 海と水着と秘密とお願い
今年は色々なイベントが中止で寂しいですね
ちょっと短いです
色々あった墓参りから帰ってくると、船の前でササラにでくわした。
受付嬢の制服ではなく、完全な私服姿だった。
「なんでいるんだ?」
「なんだとはご挨拶だなあ。せっかく労災の申請と、停泊地の長期使用申請の許可証を持ってきたのに」
その手には、許可証の納められた記憶媒体があった。
「そりゃどうも。手間をかけさせたな」
通信回線で送ればいいのに、わざわざ記憶媒体にして持ってきたということは、なにがしら用事があるのだろう。
「で、ついでにごはんもご馳走になりにきたよ♪」
堂々と言いきったなこいつ。
だがまあ、ササラに料理をつくるのは初めてではない。
じいちゃんが生きていたころに、何度も振る舞った事がある。
取り敢えず許可証を受け取り、飯をだしてやることにした。
今晩のメニューは、リーシオ料理の天津炒飯と焼売と卵スープだ。
ササラは満面の笑みを浮かべながら焼売を頬張りつつ、質問をしてきた。
「ねえ、なんで惑星上でホテル取らないの?」
「船をオーバーホールにだすまでに、保存食以外はできるだけ消費しとこうと思ってな」
そう答えながら、俺は卵スープをすする。
我ながらまあまあの出来だ。
そこに、またササラが声をかけてくる。
「ねえ。海にでもいってくれば?波と潮風に身を任せていれば、リラックスできるかもよ?ちょうどそのためのプレゼントも用意してあるしさ♪」
ササラはそういって、なにかが入った紙袋をテーブルに置くと、今度は天津炒飯を掻き込み始めた。
彼女なりに俺を気遣ってくれているのだろう。
そう思うと、その助言に乗ってみようとおもった。
「やっぱり美味しいねえ♪これでいつでもお嫁にいけるから、バルクスさんも草葉の陰で喜んでるよ♪」
しかし取り敢えず、デザートの杏仁豆腐は出さない方向にしよう。
翌日。
特に予定もなかったため、言われた通り海にやってきた。
いわゆる有名な観光ビーチで近くにはホテルやイベント会場なんかもあるところだ。
ササラが寄越してきたのは水着で、シンプルな黒のビキニだった。
あいつならネタに走ってどこかの学校指定水着でも寄越しかねなかったが、デザインもシンプルで際どくもなければ、変な仕掛けもなかったので、使ってみることにした。
まずは思い切り泳ぐことにした。
船や宇宙港やコロニーでは重力制御装置が常に働いているため、地上とあまり変わらない。
もちろん非常時には重力制御装置をOFFにするため、様々なものが無重力で浮かないように固定されていたり、飛び出したりしないように収納されている。
なので、水の中の浮遊感はなかなかに気持ちいいものだ。
そうしてひとしきり泳いで、心地よい疲労感をあじわいながら、スポーツドリンクを飲み、紫外線100%カットの高級サングラスをかけてから、備え付けのビーチチェアーに寝転んだ。
するとやっぱり湧くものが湧いてきた。
「ねね、カノジョ♪俺達このビーチの近くにコテージ借りてるんだけど、一緒に来ない?」
ナンパをしてきたのは、俺と歳の近い大学生っぽい連中で、あきらかにチャラい雰囲気を醸し出していた。
「久しぶりの休暇なんだ。邪魔しないでくれ」
サングラスをずらして、睨みながら要件を伝える。
「だったら尚更俺達のコテージで休めばいいじゃん!」
しかし連中は聞く耳をもたず、にたにたしながら俺の腕を掴んできた。
なので、その腕を捻りあげ、
「監視員さ~ん。連れ去られそうになってます~助けて~」
と、声をあげてやった。
すると直ぐに監視員と警備ロボットがやってきて、チャラ男達を警備詰所に連行していった。
こういうビーチではきちんと監視と警備が行われているのに、連れ去っていこうとする根性がすごい。
しかしそれから5分も立たないうちに、まただれかが声をかけてきた。
「へい!お嬢さん!おいらと一緒にスポーツドリンクの飲み比べでもやらないか~い♪」
しかもナンパの台詞がおかしい。
どういうセンスしてるんだこいつ?と、思いながら視線をむけると、
「こんにちはライアットさん。女性の姿で海にきてるなんて珍しいですね」
そこにいたのは、惑星ソアクルの受付嬢のロナ・フラングだった。
さっきみたいなチャラいやつのナンパではないとわかると少しほっとし、
「体調不良でしばらく男に戻れなくなってな。医者の指導で現在休暇中」
「あら。それは大変ですね。ですがこの際、ゆっくりしたらいいですよ。ライアットさんは仕事詰めな感じがありましたからね」
「そういうあんたも休暇か?」
「はい。明後日まで有給とったんですよ!」
「豪勢だな」
軽い眠気と潮風を感じながら、ロナと会話をする。
その時、ロナの汎用端末に電話があった。
彼女は、失礼。と、言いながら電話にでる。
「もしも~し。あ、ティミー?今船?夜には到着できる?」
「えーっ!風邪引いた?売り子どうするのよ!?私たち壁サークルでそれなりに大手だからお客さんくるんだよ!?」
「かわりって…簡単に捕まるわけないじゃない!」
「わかった…とにかく風邪治しなさい。本は買っておいてあげるから!」
「もしもし。ティミーが風邪でダウンしちゃって…。うん。そうなんだよね。誰か時間のある人…」
彼女の電話での会話が耳に入りつつも、心地よい疲労感から、ゆっくりとまどろみはじめた。
しかし次の瞬間、
「ライアットさんっ!」
「うわっ!」
ロナの突然の大声に、慌て身体を起こした。
するとロナは突然俺の手を握りしめ、
「お願いです!売り子を手伝ってください!」
と、泣きながら懇願してきた。
「売り子?なんの?」
俺は混乱しながらも、内容を尋ねてみる。
「明日のイベントでのです!私達のサークルは壁サークルなのでお客さんが大量にくるんです!」
「イベントって…。同人誌即売会ってやつか?六角形の庭でやってた」
オルランゲアにあんな大規模な施設があったかなと思い返していると、それを察知したのか、ロナが追加の説明を始めた。
「あれは共和国規模。今回のは地方規模です。ですが!超有名アニメ会社がグッズ販売をするために、お客さんが大量にくるんです!お願いします!助けてください!」
ロナは、物凄い勢いで俺に売り子を手伝ってくれと懇願してくる。
聞いた話だと、数百とか数千の列が出来るとか聞いたことがある。
ロナがそういう趣味の持ち主だったのは初耳だが、ササラの次くらいに世話になってる彼女の手助けくらいは、してもバチは当たらないだろう。
「わかったわかった!あんたにはテバル・ウィグルスのことも含めて色々世話になってるからな。それくらいなら手伝うよ」
「ありがとうございますー!」
ロナは歓喜しながら俺の腕を上下に振り回しはじめた。
だが、俺はこの時の自分の選択を、死ぬ程後悔することになるとは、この時は微塵も思っていなかった
取り敢えず水着です!
色気は皆無ですが…
サングラス部分を修正
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