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File198  惑星オルランゲアへの貨客輸送・惑星ルーニル・惑星ビーテンツ経由② ありがたい再会

「ふむ……。いくら悩んだところで無い袖は振れませんからな。仕方ありません」

 執事はそう自分で納得すると、汎用端末(ツール)を使用し、

「お嬢様。よろしいでしょうか?」

『アルハンデル。積み荷はどうだったの?』

「はい。積み荷は最初にこの船の船長が言った通り、惑星フオホサの民芸品と加工食品や名物のツリーシロップだけでございました」

 この船の現状のありのままを、お嬢様とやらに報告した。

『はあ?!宝飾品やブランド品や高級生地はどこにあるのよ!?そういう船には積んであるものでしょう?!』

 その報告にお嬢様は困惑し、激怒していた。

 どうやら獲物には自分の欲しいものが積んでいて当然という考え方らしい。

「つまり。彼等は嘘はついてなかったという訳です。どうなさいますかお嬢様?」

 執事は冷静に報告をする。

 するとお嬢様は少し考え込むと、

『そうね……。ショボい荷物でも多少のお金にはなるわよね。乗員はみんな殺してしまってちょうだい。私が欲しい物を積んでなかった罰よ』

 と、残念そうな表情で、興味も無さそうに通信を切ってしまった。

 すると執事は、

「それでは皆様。お嬢様のご命令ですので死んでいただきます」

 最初のあいさつの時と全く変わらないトーンのまま、懐から銃を取り出してこちらに向けてきた。

 同時に部下もアサルトライフルを構える。

 アディルはケビン達の前に立ってビームシールドを展開し、俺は体勢を低くし、麻酔銃に手を伸ばした。

 しかし次の瞬間、物凄い振動が船全体を襲った。

「なっ、なんだ?!」

 不測の事態に、執事はこっちを睨んでくるが、こっちもなにがなんだか わかっていない。

 するとまた大きな振動が船を襲ってきた。

 そして、エンジンを切っているのに船全体が動いているようだった。

 そして急に停止すると、次になにか音がし、窓のそとに見知らぬ船が横付けされた瞬間に、執事と兵士達全員が身体を硬直させて床に転がった。

 突然の事態に驚いていると、連絡通路が開いた。

「大人しくしろ海賊共!まあ、うごけないだろうがな!」

 そしてその連絡通路から現れたのは、惑星ルニールで知り合った、ギルテンス侯爵家令嬢にして、銀河帝国軍主力艦隊・第五部隊所属軽巡洋艦『ゴルトフォックス』艦長・クロネーラ・エーリカ・ギルテンス少佐だった。

 超能力者である彼女がいるなら、執事達が硬直して転がった理由も納得だ。

「被害者の方にけが人などはいませんか?」

 以前に俺の船でパエリアを頬張っていた時とは違い、キリッとした有能な軍人モードだった。

「全員無事ですよ少佐殿」

「それは良かった……あ!ライアットさんじゃない!」

 俺が声をかけると、俺の船に入り浸っていた時の表情に変わった。

「お知り合いですか?マスター」

「ああ。以前にちょっとな」

「お前いつの間に帝国の軍人さんと知り合ったんだよ?」

「ルニールの事件の時だよ」

アディルとケビンの質問に答えている間に、ギルテンス少佐の部下達が執事と兵士達を拘束していく。

 どうやら宇宙の藻屑になることだけは避けられたようだ。

 

 

視点変換 ◇ルエルニア・レーリエッツ◇

 

 まったく冗談じゃないわよ!

 せっかく献上の名誉をくれてやったのに、私の欲しいものを用意していないなんて。

 それなのに拷問もしないで死罪だけにしてあげるなんて、私は本当に慈悲深いわよね。

 まあ民芸品やシロップ程度でも、売れば端金(はしたがね)くらいにはなるでしょうから収納しておきましょう。

 そうアルハンデルに命じて通信を切った次の瞬間、どこからかビームが飛んできて船体を掠めたわ。

 そして振動と轟音が船全体に響き渡ると、

『前方の共和国の船に偽装した我が帝国の恥さらし共に告げる。今すぐメインエンジンを停止し全面降伏せよ。さもなくば、帝国・共和国共同の艦隊で蜂の巣にしてくれる!』

 と、オープンチャンネルでの画面に現れた冷たい印象の男が降伏勧告をしてきた。

 伯爵のこの私に命令するなんてなんと無礼な!

 と、思ったのだけれどこの男、いえ、この方は確かギルテンス侯爵家長男のシーモア・マルティス・ギルテンス様!

 ギルテンス侯爵家の領地は裕福で産業も発展している上、シーモア様は帝国軍主力艦隊司令官で階級は少将というエリート中のエリート!

 まさに玉の輿間違い無しだわ!

 この私、ルエルニア・レーリエッツの美貌をもってすれば、シーモア様も私の虜になるはず!

 レーリエッツ家は子供を2人は産んで、どちらかに継がせればいいわ。

「これはこれはシーモア・マルティス・ギルテンス様。お初にお目にかかります。私はルエルニア・レーリエッツ。レーリエッツ伯爵家の当主でございます」

 私は完璧なカーテシーを披露した。

 このカーテシーだけでも、殿方(とのがた)を魅了出来るのがこの私、ルエルニア・レーリエッツよ!

 シーモア様もさぞかしにこやかな表情を……

『先ほどの降伏勧告は聞いた筈だ。今すぐメインエンジンを停止し全面降伏せよ。さもなくば、帝国・共和国共同の艦隊で蜂の巣にするとな』

 してない?!どうして?私の美貌に魅了されないなんて!

「シ、シーモア様!どうして私に対してそのような勧告をするのですか?」

『レーリエッジ女伯爵。貴様が共和国内部に不法侵入し、海賊行為をしているからだ。まあ、貴様以外にも海賊になったカスは腐るほどいるがな』

「そんな!私は貴族としての権利と、下民たちへの躾をしていただけです!」

『以前に同じことをした貴族がどうなったか知らないハズはないだろう』

 私が悲哀と懇願の表情でお願いしたのに、どうして私になびいてくれないのよ!?

『最後通告だ。メインエンジンを停止して全面降伏せよ。さもなくば砲撃の的にする。あと、私の名前を呼ぶ許可を出した覚えはない』

 シーモア様は、不機嫌かつ冷徹な表情で私を睨み付けてくる。

 どうして?どうして私の美貌が通用しないのよ!?

 帝国でも共和国でも連邦でも通用したのに!

 違う!そうじゃないわ!

 今厳しい態度をしているのはカムフラージュなんだわ!

 正直私はこのままだと、以前の連中同様に恒星を領地に(たまわ)るのは間違いない。

 おそらくシーモア様は私を救うために、()()()厳しい態度を取り、私を拘束した後に、アンドロイドかなにかを使って私を逃がしてくれる、いえ、名を変え顔を変え、生涯の伴侶にと考えているに違いないわ!

 辛く当たっているのは、後から怪しまれないためね。

「承知いたしました。ご指示に従います……。メインエンジンを停止させなさい。あと、抵抗はしないように」

 シーモア様の意図を理解した私は、部下にシーモア様の指示に従うように命令した。

 すると船体に衝撃が走り、制圧部隊が船内に侵入してくる音が響き渡る。

 部下達は戦々恐々としているが、私はこの後のことを考えると笑いしか浮かんでこない。

 何しろ私には、富裕領地を持つ侯爵夫人としての輝かしい未来が待っているのだから!


視点終了

年末から新年にかけては色々あって更新できないかもしれません。

大掃除に新年の準備に親戚周り。お年玉のための引き落とし…


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


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― 新着の感想 ―
[一言] ああ、家宰は間違いをおこした主人は諌める立場だろうに。よりにも因って自分の心を殺して居たか。
[一言] あたおかな貴族ですな。まあ、特権階級で育ってわがままし放題だと人格がゆがむのも当然ですかね。 それにしても、これから処刑される運命だと認識していない所がアレですが、処刑される前にこの貴族の他…
[良い点] こんなんが貴族なんだな・・・w 餌付けw たしかにwww やっぱ「わたくしは悪くない!」って喚くんだろうなw [気になる点] 賠償金は出るんだろうか…出そうにないよな・・ [一言] 一切…
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