File192 惑星フオホサへの貨物輸送④ 親しき仲にも礼儀あり
帝国貴族のアホどもを炙り出す検問のせいで、俺の女の姿がオオキタ・ソーナに似ている事が、アルドル人の彼等にバレてしまった。
ついでにアディルにも。
すると当然のように、是非とも写真を取らせてくれと、なぜか3人揃って土下座で頼みこんできた。
断ると後々まで面倒臭そうなので、1枚だけならと釘を刺すと、アディルも含めての全員での写真を撮る事になった。
集合写真を撮ったあとは、約束など無視して『女になってコスプレしてからのやつを撮らせてくれ』などと言われるかと思ったがそんなことはなく、彼等は執筆に力を入れはじめた。
てっきり来るだろうとおもって身構えただけに拍子抜けだ。
何故彼等が執筆に集中し、写真を1枚撮ったあとはなにも要求してこないか。ラトム氏曰く、
「〆切まで時間があるからといって油断すると、すぐにサボってしまい、気がつくと〆切の前日という恐ろしい可能性(実体験あり)がある。それに、宇宙船の船長に無礼を働いたら、生身で宇宙空間に放り出されるのだろう?アルドル人に超能力があったとしても、宇宙空間での生存は流石に無理だ。まあ、我等の先祖には宇宙空間でも生存出来る能力者がいたという話はある」
と、おかしな口調をすることもなく答えてくれた、
「太古の昔ならともかく、現代では犯罪ですから放り出しませんよ」
太古の昔、惑星上の海の上では、航行中の船から放り出す事は普通にあった事らしい。
現在だと、法律上は生身で宇宙空間に放り出す事は殺人罪になる。
惑星上の海上でも罪にとわれる。
だから、今までに放り出してやりたいと思ったやつらも放り出さなかった。
人間の倫理としても、犯罪者・密航者といえど、生身で宇宙空間に放り出すのは流石に残酷だ。
なにしろ生身で宇宙空間に放り出されれば、10分もしないうちに体液が沸騰、そのため身体が膨らみ、肺の空気も流れ出て窒息死してしまう。
種族によっては身体が破裂してしまうものもいるなんて話もあるらしい。
だが船乗りの感情としては、危険な人物・無断で乗り込んできた奴・乗員乗客に迷惑をかけまくる奴を船に乗せておきたくないというのも事実だ。
そういう連中をどうするかは、船のトップの裁量次第だが、大抵は拘束して最寄りの警察につき出すぐらいだ。
それ以降、翌日の3日目もなにも起きることはなく、俺の船は彼等の仕事場のようになってしまった。
まあ食事は相変わらずすごい量だったけどな。
そして、惑星ダグロウゼクを出発してから4日目の夕方に、ラトム氏に電話がかかってきた。
「なんの用だ?原稿はまだ上がってないんだけど」
ラトム氏は原稿が気になるのか、早く電話を終わらせたいらしく、おかしな口調は成りをひそめていた。
『なに。ちょっと気になっただけよ。貴様達が我と交わした盟約についてな…。よもや忘れた訳ではあるまい?』
が、相手は気にする様子もなく、おかしな口調で話しかけてきた。
するとラトム氏の表情がかわり、真剣な会話をはじめた。
「忘れるわけはないだろう!妹と両親は無事なんだろうな?!」
「安心しろ。我らダークアルドル人は約束を守る…」
しかし会話のなかには不穏な言葉が混ざっていた。
さらには、ダークアルドル人という、聞いたことがない単語が発せられた。
まさかアルドル人の突然変異か?
いや、でもアルドル人だからなあ、などと考えていたところ、
「電話の相手の彼は私達の友人でガセラ・エボイフィーといいます。私達にイベントでの買い物をたのんできた、日焼けしただけの普通のアルドル人です。ラトムとはご近所さんで、家族ぐるみの付き合いがあるんですよ」
その辺りを見抜いたレールス嬢が、説明しながらラトム氏の電話の相手が映っている画像を見せてくれた。
その画像は、どこかの建物内のロビーで撮られたものだった。
その時、彼等が乗り込んできた時からの疑問をぶつけてみた。
「そういえば、あなた方は学生なんですか?この場所って大学みたいにみえますけど」
若い見た目でも、俺よりは確実に歳上だろうから、既に成人・就職している可能性もあるが、長期に渡って国外に居続ける事できるのだから、時間のある身分には違いないだろう。
「はい、大学生ですよ。単位は十分取れているので時間があるんです。ガセラ・エボイフィーも来る予定だったんですが、単位が取れていなかったんです」
なるほどそういうことか。
しかし彼等の学生生活というのはどのぐらいあるんだろうか?
また新たなる疑問が沸いたときに、
『それからもう一つ、貴様のアカシックレコードに記してあったことは事実か!?』
という、電話の相手であるガセラ・エボイフィーの声が響いてきた。
そのセリフを聞いたラトム氏は、にちゃりとした笑みを浮かべ、
「だとしたら?」
と、返答した。
するとエボイフィー氏はおかしな口調を忘れ、
『ずるいぞ!俺だってリアルソーナちゃんに会いたい!代われ!今すぐ代われ!出来ればコスプレをしてもらって!』
と、喚きはじめた。
「残念だがそれは無理だ。友人ならともかく、初めて知り合ったばかりの人物にコスプレなど強要できぬし、本人は似ているだけであり、コスプレに興味はないそうだ」
『だったら本人にあってお話だけでも!』
「仕事中の人間を我等の児戯に付き合わせる必要はない!さらばだ!」
ラトム氏はそのまま強引に電話を切ってしまった。
友人らしいが、あんな切り方をして大丈夫なのかと心配になる。
するとそこに、
「ときに船長。本日の晩餐は何なのだろうか?」
クリューナ・ロイス嬢がそわそわしながら話しかけてきた。
彼女は3人のなかで一番の大食いで、ドラコニアル人並みに食べるため、食事の準備がなかなかに大変だ。
本人はそれが申し訳ないと考えているのか、後片付けやら掃除やらを進んで手伝ってくれている。
「我に封ぜられし力のコントロールには、こういった作業が適しているのだ」
という謎のセリフを吐きながらではあるが。
視点変換 ◇ガセラ・エボイフィー◇
『仕事中の人間を我等の児戯に付き合わせる必要はない!さらばだ!』
くそっ!切りやがった!
交渉ぐらいしてくれたっていいだろうにグラナスの奴め!
俺だって本来ならあいつらと一緒に銀河共和国に向かっていたはずだった。
なのに、単位の担当の教授が『しばらく所用で休む』とか言って長期の休みを取ったせいで、期日までに単位が取れなかった。
それだけならともかく、
『今期は単位に必要分の授業をしたら講義を終了する』
とか抜かしやがり、よりにもよって銀河共和国に向かう日程の最中に授業を詰め込みやがったんだ!
グラナスの奴だってその苦しみが理解できるだろうに、なんてひどい奴だ!
まあ確かに、嫌がる人にコスプレを強要するのはどうかとは思う。
まあいいか。
取り敢えず惑星フオホサにいる知り合いに、あいつのアカシックレコードにオオキタ・ソーナのそっくりさんの画像があるのを教えてやるか。
視点終了
先日、新紀元社様からこの作品の書籍化のお話をいただきました。
なかなか忙しくなりそうです…
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