File190 惑星フオホサへの貨物輸送② 言動は変でも普通の人間に変わりはない。はず
「ええと……便乗をご希望されたお客さんで?」
仲間内での言い合いをしている彼等に声をかけると、
「うむ。木を隠すには森の中ではあったのだが、我の力が強力すぎてどうしても目立ってしまってな!それで仕方なく船を調達したも…」
「はい。惑星フオホサへの便乗を希望したものです!」
赤い髪の青年が一歩前に出てきて、説明?をしているところに、金髪でショートボブの女の子が青年を押し退け、簡潔に説明をしてくれた。
「取り敢えず乗ってください。直ぐ出発しますので」
「了解した」
「わかりました」
「わかった…」
俺が出発を促すと、3人は荷物を担ぎ直して足早に船内に乗り込んだ。
いつもの手順で宇宙港から出港し、超空間に入って自動航行に移行してから、ラウンジにいる彼等に、改めて挨拶をすることにした。
「改めて自己紹介します。俺はショウン・ライアット。この船の責任者です」
「船員でバイオロイドのアディルです」
俺とアディルが挨拶をすると、先ほど同様に赤い青年が立ち上がり、
「我はグラナス・ラトム!真の名を『劫炎の鬼神』という!ああ、安心したまえ!我が劫火は、我に弓引く者にしか放たれることはない!」
と、オーバーアクションを交えての自己紹介を始めた。
これがアルドル人の平均的な挨拶なんだろう。
以前に会ったアルドル人もこんな感じだったしな。
そしてその自己紹介を聞き、一つ気になることがあった。
「そういえば『定期船の時みたいな事』とか言ってましたが、能力の暴走かなにかあったんですか?」
仲間内での言い合いの中にあった『定期船の時みたいな事』と言うのが気になった。
なにしろ彼等は超能力者だ。
能力を使用するのに何かしらのデメリットがあるのかもしれない。
すると赤い青年・ラトムがまたオーバーアクションをしながら説明を始めようとする。
「そう!我が強大な力が溢れて…」
が、金髪でショートボブの女の子が割って入り、
「このグラナスが子供達にせがまれて火の玉でお手玉してたら、消火装置が反応して私達全員がずぶ濡れに。その濡れた服を乾かそうとしたんですが、定期船のコインランドリーがいっぱいだったので開くまで待ってたら、こいつが自分の炎で乾かそうとして服を燃やした上に、それに反応した消火装置のせいで替えの服もずぶ濡れになって、船員さんに滅茶苦茶怒られました…。そのせいでコインランドリーも借りれず、仕方なく無事だったコスプレの服を着てるんです…。もちろん宇宙港で服を買おうとはしたんです。でも、高くてお財布に余裕がなくて…」
と、恥ずかしそうに自分達が定期船を追い出された経緯を話してくれた。
「ああ…それ、コスプレの服だったんですね。てっきり星域連邦のどこかの軍服かと」
星域連邦は、惑星一つから三つまでが一国家であり、その政府ごとに色々と違いや特色がある。
とはいえ、司法・行政・立法の大筋は同じだし警察組織はきちんと連携がとれているそうだ。
しかし、俺のこの発言は、金髪でショートボブの女の子のなにかの琴線に触れてしまったらしく、
「たしかに軍服は間違いありませんね!この服は共和国発信の今絶賛放送中のアニメ『宇宙勇者戦記』内の惑星盟友軍の制服なんです!デザインは某有名アニメーターが手掛け、某服飾メーカーが協力し、公式から販売されたものなんです!」
かなりの早口でまくし立てられた。
が、すぐに彼女は冷静さを取り戻し、
「あ、失礼しました。私はティリア・レールスと申します」
と、丁寧に自己紹介をしてくれた。
殆んどのアルドル人は、基本的に特徴的な挨拶をするが、稀にその挨拶をしない人がいるというのを誰かに聞いたか本で読んだことがある。
目の前に居る彼女がそのタイプだろう。
そして最後に挨拶をしてきたのは、灰色の長い髪に、左目に医療用の眼帯をした、アディル程ではないが背の高い女性だった。
「私はクリューナ・ロイス…。この左目は、私の力が暴走した時に失ってしまった…。怪我をしたくないなら私に近づかない方がよい…」
彼女・ロイス嬢は、眼帯をしている自分の左目を押さえながら、随分と重い雰囲気をだしていたが、
「おとといものもらいができて、共和国の病院で目薬もらったでしょ」
金髪でショートボブの女の子・レールス嬢が、ロイス嬢の眼帯の理由を話してくれた。
「ティリアの意地悪…」
そのティリア嬢を、ロイス嬢は恨めしそうに見つめていた。
全員の自己紹介が終わると、ティリア嬢が自分の荷物から、膨れ上がった耐水袋を取りだし、
「あの…洗濯機があったらお借りできますか?濡れた服を乾かしたいのですが…」
と、訪ねてきた。
「いいですよ。ランドリーも客室も奥にありますから。アディル」
「はい。こちらですよ」
「ありがとうございます!」
なのでアディルに案内を頼み、俺は厨房に引っ込んだ。
視点変換 ◇グラナス・ラトム◇
「それにしても、貨物船とは思えない内装ね。立派なホテル並みよ!」
借りた洗濯機に洗濯物を放り込んで戻ってきたティリアが、僕の部屋に入るなり嬉しそうにはしゃぎながら、クリューナが寝ている方のベッドに座りこんだ。
「正確には貨客船だ。貨物も人間も運べる船だからな」
しかし正直いって、今まで乗り継いできた定期船より環境がいいとはおもわなかった。
貨客船といっても、狭い段ベットがあるぐらいに思っていたからな。
「このベッドのスプリングは良い…。私の失った左目の傷を癒してくれる……」
クリューナは自分の部屋に荷物を置くこともせず、僕の部屋にやってくると直ぐ様ベッドにダイブした。
「だったら自分の部屋にいって寝ろ」
「グラナスが部屋を移ればいい。ここは私とティリアの部屋にする……」
「今度は火を出さないでよねグラナス」
「わかっている。ここには子供がいないからな。あの様な児戯は使わぬ」
クリューナの我が儘やティリアの小言をかわしていると、ノックの音が響いた。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
彼等アルドル人は、ドラコニアル人程ではないがよく食べるらしい。
その理由は、超能力を使うと腹が減り、超能力を制御する脳には糖分が必要らしい。
なので、今回は量があって手早く作れるリーシオ料理の定番にしてみた。
【夕食メニュー:炒飯・回鍋肉・芙蓉蛋=餡掛けオムレツ・空芯菜と牛肉のオイスター炒め・鶏肉と揚げ南京豆の唐辛子炒め・水餃子・豆腐と水菜のスープ・杏仁豆腐】
テーブルに並べたメニューを見て、彼等は軽く歓声をあげた。
「うわあ美味しそう!惑星盟友軍結成式の時の御馳走みたい!」
「これは…リーシオ料理か!物質世界最強の存在である龍人達が産み出した至高の料理!」
「これが我が血肉となれば、我が左目も再生されること間違いない!」
彼等なりの言い回しをしながらも気に入ってくれたらしく、フォークとスプーンが止まる様子はなかった。
特にロイス嬢はいたく気に入ったらしく、
「ふみまへん!ちゃーふぁんおかはりくだはい!」
あのおかしな口調をするのも忘れて、夢中でスプーンとフォークを使い、料理を口に運んでいた。
中二病のセリフが難しい…
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