File178 惑星カブルスへの貨物輸送③ 凄いサファリは大人でも楽しい
この惑星カブルスは、基本的に自家用船での降下は許可されていない。
これは惑星全体が観光資源であり、原生生物の密猟を防ぐためというのが一つの目的だ。
この惑星の原生生物は、おとなしく可愛らしかったり、食用肉として飼育されているものもいるが、狂暴だったり、近寄るだけで危険だったりするものも居たりと多種多様だ。
そのなかには、素晴らしい毛皮や鱗を持つものや、立派な爪や牙を持つもの。身体の一部が妙薬になったりするものがいるため、それらを求めてどうしても密猟が行われてしまう。
そのため、生態系保護の概念から惑星への出入りは宇宙港からの専用シャトルのみ、離脱は専用のマスドライバーのみとなっており、それ以外の侵入物・離脱物は問答無用で撃ち落として良い事になっている。
もう一つの目的としては、空を飛ぶ原生生物との衝突を避けるためだ。
巨大かつ空を飛ぶものが多いため、惑星開拓当初は頻繁に発生したらしい。
そんな惑星における、人類の唯一の生息場所である都市・ルシーシスは、元は開拓者であった地元民の生活拠点であり、サファリ観光の拠点でもある。
その町並みは、中身や機能はともかく、外見のデザインは実に牧歌的でレトロなものだった。
「高い建物があまりないんですね」
「高すぎると原生生物に敵認識されるって噂だ」
俺とアディルは、そんな街並みを眺めながら、街中で一番大きな建物である星庁舎兼サファリ本部にむかった。
そこは星庁舎というよりはターミナルビルのような出で立ちをしていて、サファリ申し込みの窓口や待合室。各種レストランやお土産物屋まで充実していた。
サファリの予定表をみると、飛行船でのサファリが一番近い時間だったのでそれに乗ることにした。
飛行船の内部は壁面が超強化ガラス張りで、外が見える様に椅子が配置されていた。
更には、飛行船全体に多くの原生生物が嫌う匂いを塗布しているらしく、これは観光用のバスやスタッフ用のエアカー、降下専用のシャトルと離脱用のマスドライバーにも施されているそうだ。
とは言え、その匂いを無視して突進してくる原生生物もいるため油断は出来ないらしい。
乗客には家族連れやグループが多く、中でも子供達は待ちきれない様子だった。
「皆様お待たせいたしました。これより惑星カブルスサファリツアーに出発いたします!」
解説係のアンドロイドの言葉と同時に、飛行船が空中に浮かび上がった。
それからの時間は本当に圧巻と感動の一言だった。
広い草原を走る二足歩行の爬虫類の群れ。
深い森林で草や木を貪る巨大な四足獣とその子供。
溶岩の流れている岩山の岩をバリバリとかじっている巨大な岩のような生物。
真っ白な雪山で縄張り争いをしているホワイトカーゴⅢよりデカそうな巨大な猪達。
エメラルドグリーンの海を切り裂き、大ジャンプする巨大な水棲生物。
ため息がでる程美しい鱗を持った巨大な空を駆るドラゴンとしか言い様のない爬虫類など、本当に凄いとしか言いようがなかった。
そして一番驚いたのは、飛行船の何倍もありそうなデカイ鳥が、飛行船の間近を、こちらなど意識すらせずに優雅に飛び去っていった事だ。
なんでも地元民でも滅多に見られない生物だったらしい。
そんなサプライズがあったツアーが終了して都市に戻ってくると、大人しく可愛らしい原生生物達と触れ合えるコーナーがあるというので行ってみたところ、かなりの賑わいで、とくに子供達が楽しそうにしていた。
ちなみにアディルも目を輝かせながら触れ合いコーナーに参加したのは言うまでもない。
それが終わるとちょうど夕食の時間もちかかったので、ターミナルビル内のレストランで、食用に飼育されている原生生物のステーキや原産の野菜を使ったサラダや果物をいただいた。
そうしてたっぷりとサファリとグルメを堪能した結果、午後8時をまわろうとしていた。
「この星のサファリは本当に素晴らしかったですね!」
その帰りのマスドライバーの船内で、アディルは犬っぽい原生生物のぬいぐるみを大事そうに抱えていた。
「あのデカイ鳥は本気でびっくりしたけどな…」
ここのサファリは初めてだったのもあり、俺も実はなかなかに楽しかった。
そんな話をしているうちにマスドライバーは出発し、原生生物に衝突することなく、宇宙港に到着した。
俺達は宇宙港に到着すると、アディルには船に向かってもらい、俺はそのまま貨物配達受付に向かった。
報酬を受け取った時と違い、あの見習いの子達はおらず、
「いらっしゃいませ。銀河貨物輸送業者組合惑星カブルス支部・貨物配達受付にようこそ。依頼の受領ですか?お仕事完了の手続きですか?」
見習いではない一人前の受付嬢が、見習いの子達が指摘されていたミスもなく応対してくれた。
「仕事の依頼を受けたい」
「では検査機に端末をどうぞ。………はい結構です。ではこちらをどうぞ」
腕輪型端末を検査機にかざしてOKがでると、受付嬢が一覧表を見せてくれた。
そのなかの惑星ダグロウゼク行きの物だけをチョイスして、5件の依頼を受けた。
「搬入は早い方がいいんだが」
「内一つは明日の朝9時の搬入になりますがよろしいですか?」
「ああ。よろしく頼む。搬入は船の方に相棒が居るからすぐに開始してくれ」
「かしこまりました」
受付嬢との会話が終わると、すぐにアディルに連絡を入れながら停泊地にむかった。
停泊地に到着すると、既に搬入は開始されていた。
搬入はそのままアディルに任せ、俺は燃料の補給と船体のチェックを進めた。
ちなみに積み荷は『衣料品』『医薬品』『衛生用品』『日用雑貨』で、明日の朝に搬入予定なのは『加工食品』だ。
そうして、今の時点で搬入される予定のコンテナが全て搬入されると、貨物室の鍵を中からしっかりと施錠した。
そうして船室に戻ると、明日の朝食の仕込みやテレビの視聴、入浴などを済ませた後、ちょっぴり遅めに就寝した。
翌朝はいつも通りに目が覚め、朝食を済ました後はもう一度船をチェックする。
そうしているうちに、残りの積み荷がやってきた。
「おはようございます。ホワイトカーゴⅢはこちらで間違いございませんか?ブラストハム株式会社からの依頼品の『加工食品』です。積み込みを開始してよろしいですか?」
「ああ。頼むよ」
やってきたヒト型のロボット達は、テキパキと積み込みを開始し、あっという間に終了させた。
そうして積み込みが終了すると、再度各部のチェックをしてから出発になる。
その最終チェックの最中、
「マスター。この箱はなんでしょう?昨日の時点では載せていなかったと思うのですが」
「なに?」
そのアディルの報告を聞き、その箱を見てみると、外見は特に変わったところはないが、周りにある『医薬品』の箱とは違うものだった。
『日用雑貨』の品がこちらに混ざったかのようにも見えるが、アディルが前の日に見てない時点で怪しさしかない。
俺は腕輪型端末で直ぐ様警察に連絡した。
「すみません。船内に不審物が紛れ込んでいます」
舞台になった惑星はお察しいただけると…
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