File174 惑星ビーテンツでの突発事故③ 他人への親切はいずれ自分に帰ってくる
バカのナンパをあしらった後は特になんの問題もなく、避難者を下ろした後、再度宇宙港に向かい避難者を地上に降ろす作業を繰り返した。
途中、宇宙港側の支払いで燃料補給をし、さらに避難者の輸送を繰り返していく。
そして避難を開始してから5時間後。
主動力源修理のために残っている整備部の人間とドロイド達。
そして彼等の脱出用の船の乗組員を除いた全員が避難を完了した。
主動力源が停止後暫くしてから爆発したという情報は流れて来ないし、その後も続報がないので復旧作業は順調なのだろう。
ちなみに主動力源が停止した原因は、ある一部品の劣化からの破損によるものらしい。
どうせ廃棄するのだからと、港長が交換を禁止させた結果らしい。
それだけなら、部品交換すればすぐに復帰しそうなものだが、そこ以外にも劣化部品や劣化部分がいくつも発見されたため、いまだに復帰はできていないらしい。
爆発の危険がないということで、俺たち貨物輸送業者と港の貨物運搬係は、総員宇宙服を着用し、真空でも大丈夫なドロイド達を軸にした貨物の積み込み業務の再開が通達された。
受付はマッテルトン空港内に急造した簡易カウンターでおこない、ドロイド達を乗せて宇宙港へ向かい、貨物を搭載後に出港という流れで、ドロイド達はそのまま作業に従事する形で宇宙港に残る形だ。
その連絡を聞いて簡易カウンターに向かうと、見覚えのあるおばさんが大声を張り上げていた。
「とにかく!私は乗船拒否をされたのよ!こういう時の脱出を手助けするのが貴方達のところの組合員なんじゃないの!?」
「は…はあ…」
ブランド物の服を着て大きめのトランクを持ち、列を無視して乗り込もうとし、避難者全員を下ろせと命令し、行き先まで命令してきたあのおばさんだった。
受付嬢はおばさんの剣幕にたじたじになっていた。
悪いのはあのおばさんだが、俺が関係者なのは間違いないので、堂々と近づいていく。
「あっあの男よ!あの男が私の乗船を拒否したのよ!」
すると当然おばさんに見付かるので、
「ふざけるなよ。あんたが乗っている全員を下ろせとか、ビーテンツに降りずに首都のヴォルダルにいけなんて言わなきゃ乗せてやったさ」
しっかりと反論してやった。
「嘘をおっしゃい!確かにこの男が『お前みたいなのは乗せない』ってはっきり言ったのよ!」
もちろんこのおばさん、もうババアでいいか。ババアが引き下がるわけはなく、受付嬢に噛みついた。
「本当に言ったんですか?」
受付嬢は『よくもこんなトラブルを引き起こしましたね!』という恨みがましい表情をしたので、
「自分が乗るから避難者全員を船から下ろせ。さらに、無料で首都ヴォルダルに行けと言われたからな」
きっちり真実を話してやると、『貴方の言ってる事が事実ならこのババアやばいんですけど』という表情に変わった。
「嘘よ!そんなことは言ってないわ!」
もちろんババアが認めるわけはなく、
「言ってもいないことを言った事にされ、ありもしない非難をされ、脱出できたからよかったものの、命の危機にも陥ったのに。私はなんてかわいそうなのかしら!皆さんもそうおもいませんか?」
周りにいた人達に、同意を求めるように大声をあげる。
そして俺と受付嬢に向き直ると、
「これはもう慰謝料を払ってもらうしかないわね。そうね、1000万クレジットでいいわ。トランスポーターは意外に高給取りって聞くもの。それが無理だったら組合が支払うのが道理ってものよねぇ?」
と、ムカつく表情をしながら詰めよってきた。
このババア、計画的か突発的かはしらないが、俺に乗船拒否されたと組合に訴え、俺と組合から金をむしり取るつもりのようだ。
「ほら!早く謝罪して慰謝料を寄越しなさい!」
ぶん殴ってやろうかと思いながらも、録音していた音声を流してやろうと思った瞬間、1人の婆さんが歩み出てきた。
非常識ババアよりも歳上で、杖をついた柔和な顔をした、俺の船に最初に乗った婆さんだった。
「やれやれみっともないねえ。ありもしない事をべらべら並べ立てて。みっともない」
「本当にそうよねえ。みっともないたらありゃしないわよ」
「貴女の事を言ってるのよ」
ババアは、味方が現れたと思い、こちらを蔑んだ表情をしていたが、婆さんの一言で表情が固まった。
婆さんは汎用端末を取り出し、
「貴女が船のタラップの下で、『じゃあ今乗っている連中を今すぐ全員降ろして、私を乗せて今すぐ出発しなさい!目的地はヴォルダルよ。急いでちょうだい!早くしないと窒息死してしまうじゃないの!』
こう騒ぎ立てていたでしょう?」
録音していたらしいババアの暴言を再生した。
それを聞いた瞬間、ババアの顔はみるみる青くなっていった。
「なんでそんなものが…」
「下のコンテナの外にいた孫が動画を撮ってたらしいのよ」
婆さんの横にいた、中学生ぐらいの女の子がVサインをする。
「プライバシーの侵害よ!その動画を消しなさい!」
ババアはさっきとはうって変わって、真っ赤な顔をしながら中学生に掴みかかろうとする。
するとその場にいた何人もの人がババアの前に立ち、
「自分に都合のいいことばかり並べ立ててんじゃねーぞババア!俺達全員を降ろせとか言ってたろうが!」
「そうよ!皆で脱出しようと協力しているのに、自分の我が儘を押し付けて来たくせに!」
と、そのババアを責め立て始めた。
どうやら、このババアに襲撃された現場にいた人達が、ババアの暴挙を見聞きし、集まってくれたらしい。
するとババアは、
「私は評議員の妻なのよ!」
と、大声をだした。
評議員という言葉がでると、流石に全員がたじろいだ。
しかしそこに、腕輪型端末を見つめているアディルが、ババアに声をかけた。
「では、貴女のお名前と、評議員だという旦那様のお名前をお教え下さいますか?」
「なんですって?」
「貴女が評議員の奥様なら、旦那様はこの評議員名簿に御名前が掲載されているはずですよね?」
アディルの腕輪型端末の投影画面には、評議員名簿が映し出されていた。
「いやよ!て…テロなんかの標的になったら危ないでしょ!」
ババアはかなり動揺し、思い切り目線をそらせた。
この瞬間、嘘なのは丸解りなので追い込んでやることにした。
「評議員の妻だって言っておきながら、名前は言えないっておかしいだろ。ほらほら。誰があんたの旦那なんだ?」
するとババアは評議員名簿をちらっとみてから、
「わ…私の主人はコーウェン・フッキネスよ!さあ!わかったならさっさと慰謝料の2000万クレジットを寄越しなさい!」
と、大声で返答した。
それを聞いた瞬間、俺は思わず噴き出しそうになった。
よりにもよってコーウェン・フッキネス評議員の名前をあげやがったからだ。
しかも慰謝料が増額してやがる。
俺は、アディルが反論しようとしたのを止め、
「じゃあ、あんたの旦那はコーウェン・フッキネス評議員で間違いないんだな?」
と、確認をとった。
「ええそうよ。わかったらすぐに土下座して、慰謝料の3000万クレジットを支払いなさい!」
当然ババアはどや顔をしながら俺を睨み付けてきた。
なので俺は腕輪型端末のアドレス帳を開き、フィナ・ヴルヴィア評議員補佐官に連絡した。
合間合間に書いてなんとか完成しました。
気を抜くと寝てしまっている日々…
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします




