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File173 惑星ビーテンツでの突発事故② 場所が変われば似た奴が居るもの

「順番を守ってください!」

上の客室(キャビン)に乗り込もうとしたおばさんを、タラップの前でアディルが制止すると、

「ちょっと!なんで邪魔するのよ?」

と、文句を言ってきた。

「乗れる人数には限りがありますから勝手に乗り込もうとしないでください!なにより順番を守ってください!」

おばさんに対してアディルがまっとうな理由を述べるが、

「じゃあ今乗っている連中を今すぐ全員降ろして、私を乗せて今すぐ出発しなさい!目的地はヴォルダルよ。急いでちょうだい!早くしないと窒息死してしまうじゃないの!」

おばさんは自己中心的超理論を展開してきた。

なので俺は、コンテナへの乗り込みを中断し、

「だったら余所にいってくれ、この船は脱出する人達をビーテンツに降ろすための船だ」

おばさんにそう通告した。

以前にも、脱出時だというのにこういうセリフをはいた馬鹿がいたが、そういう連中はなんで自分以外の人間をおろそうとするんだ?

はっきりいって理解に苦しむ。

「何ですって!?無料で乗せてくれるというから定期便に乗らずに来たのよ!さっさと他の連中を降ろしてすぐに船をだしなさい!」

もちろんこのおばさんが納得するわけはなく、自己中心的超理論を振りかざしてくるだけだ。

「脱出のためなら無料で乗せるが、チャーターするなら料金を払ってもらう。しかも全員の脱出が完了した後に、きちんと組合を通してな」

罵声の一つも浴びせてやりたかったが、なんとか声を荒げずに通告することができた。

「なっ…私の言うことが聞けないの?!」

おばさんは信じられないといった表情を浮かべていた。

「聞く必要はないな。あんたがどれだけ高い地位に居るのか知らないが、あんたは避難者ではなく、他人の船にいきなりやってきて避難者全員を降ろせと命令してくる頭のおかしい人間だ。そんな奴の戯れ言を聞く必要はない」

そう通告すると、おばさんは顔を真っ赤にし、

「私を虚仮(こけ)にしたことを後悔させてあげるわよ!」

そう捨てゼリフをはきながら停泊地(アンカーレイジ)をでていった。


そして乗り込みを再開し、乗せれるだけの人間を乗せたので、出港するために停泊地(アンカーレイジ)にいる人達には通路に退去してもらった。

さっきのおばさんを見ていたせいか、全員が素直に従ってくれた。

まあそのままここにいたら宇宙空間に放り出されるからな。

そうして出発準備が整ったところで、管制塔(コントロール)に連絡を入れる。

「管制塔(コントロール)。こちら停泊地(アンカーレイジ)No.373・ホワイトカーゴⅢだ。出港許可をくれ」

『了解しました。出港を許可します。出港後の降下のタイミングは任意。降下後は速やかにマッテルトン空港に向かってください。降下後はそちらの管制塔(コントロール)にしたがってください』

さっき地図をくれた時は男性の管制官(コントロールオフィサー)だったが、今度は完全閉鎖されていた時のあの管制官(コントロールオフィサー)の女の子だった。

「了解した。何度かピストン輸送をしたいから停泊地(アンカーレイジ)の調整をよろしくたのむ」

『おまかせください』

女の子はにっこりと頼もしい笑顔を浮かべた。

『停泊地No.373の隔壁を開放します。宇宙服未装着の者は即座に入り口ドアから通路に退出してください』

彼女の案内が入り、ランプが点灯。停泊地(アンカーレイジ)内の空気が抜け、真空になったらランプが消灯する。

『エアロック処理終了。隔壁を開放します。どうぞお気をつけて』

そうして隔壁が開き、船が宇宙空間にでると、船内からは歓声があがった。


次は宇宙港から少し離れての大気圏突入だが、これが少しばかり時間がかかる。

太古の昔には大気圏突入は神経を使うものだったが、今では全ての船、どんな小型船であろうと、熱の壁による空力加熱(断熱圧縮)の心配はしなくていいような素材で出来ている上に、バリアを張ればより安全かつ簡単に惑星表面に降りることができる。

が、その分燃料を食うので俺としてはあまりやりたくはない。

が、それは普段の事で、緊急事態の時にケチッたりはしない。

そうやって大気圏に突入すると、惑星ビーテンツの地表がゆっくりと近づいていく。

ビーテンツもオルランゲアと同じタイプの居住可能惑星で、特出するところのない惑星だが、位置的に北方宙域における移動・物流の拠点(ハブ)の一つな事もあり、早いうちから宇宙港が建設された。

それはつまり、当時は最新の技術や規格でも、技術の革新によって旧式になるのも早いということだ。

もちろんその対策として、なんども改築や増設なども行われて来たが老朽化には勝てず、前々から交換の準備が行われており、現在は惑星の真裏で新しい宇宙港が建設されている。

軌道エレベーターは宇宙港(ポート)よりかなり後に建設されたため、まだまだ耐用年数があり、場所を簡単には変えれないため、ドーナツ状の部分だけが交換されるらしい。

今年の暮れか来年の頭には取り替え工事が行われる予定だ。実行時にはかなりの見ものだろう

その後、古い宇宙港は解体して資源にするそうだ。

まあそんな古い宇宙港なため、追加での動力炉(リアクター)の設置が不可能だったり、予備電源が短めだったりするわけだ。

そして、さまざまな船に脱出の協力要請がきた理由だが、避難用の施設は、利用客増加で港の増設をする度に追加するのが規則なので足りないということはない。

しかし、定期船の運行会社や貨物輸送業者組合側が、『船乗りとしてはこのような状況において協力しないというのはあり得ない。しかし勝手にやってしまうと問題が起こるかもしれない』という理由から、要請をするように宇宙港側にお願いしているからだ。

もちろん。積み荷や保安上の理由で乗せられなかったりするので、そのあたりは船の持ち主の判断に任せられる。個人の自家用船(非商用)への要請はおまけだ。

流石に輸送業者でもない人に無理強いはできないのが理由だ。

そして大気圏を突破すると、ずんっと重力が襲いかかってきた。

惑星の腕に抱えられた瞬間だ。

軌道エレベーターだとこの感触を味わう事はない。

そして指示どおり、惑星に降下した後は地図のとおりにマッテルトン空港に向かい、向こうの管制塔(コントロール)の指示を仰ぐことになる。

見えて来たマッテルトン空港は、いわゆる一般的な航空機のための空港だ。

大気圏内部の空港としてはかなり大型で、惑星内部にいくつかの国家があった太古の時代には、『国際空港』と呼ばれていた規模らしい。

「マッテルトン空港管制塔(コントロール)。こちらはビーテンツ宇宙港からの避難船です。着陸の為の指示をお願いします」

『こちらマッテルトン空港管制塔(コントロール)。現在滑走路上は空きがない。そちらの船全般は大気圏内でも垂直離着陸(VTOL)可能と聞く。なので、緩衝用の空き地に着陸願いたい』

アディルの通信に答えたのは、意外に若い兄ちゃんだった。

「了解しました。上空到着後に再度通信いたします」

『どうせなら、君みたいな美人とはずっとお喋りをしていたいかな。どう?地上に降りたら俺とデートなんかどうかな?』

そしてなぜかアディルをナンパしてきた。

今は続々と避難者を乗せた船がやって来ているのに、よくまあそんなことができるもんだ。

外見はともかく、その雰囲気と口調が、惑星ソアクルにいるテバル・ウィグルス(くそやろう)を彷彿とさせた。

取り敢えず文句を言ってやるかと思った時に、

『おいネーブス!さっさと次を案内しろ!』

という男性の怒鳴り声が響き、

『はっはいっ!では失礼しますっ!』

ネーブスなる管制官(コントロールオフィサー)はさっと引っ込んでいった。

テバル・ウィグルス(くそやろう)本人と会う可能性がある時には注意しないとな。

別作品の書籍化作業のため、更新が滞ってしまうかもしれません。

あらかじめお詫びしておきます。

申し訳ございません。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


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― 新着の感想 ―
[一言] 今週はお休みっすか?って活動報告見ても無いのでこっちに来たら、暫く更新不定期って書いてあったの忘れてました! これはテヘペロ案件ですね!
[良い点] 今回は雑魚だな アシを自前で用意できないって庶民だし [気になる点] 周囲の避難民の皆さんが叩きだしてくれてると話が速かったんだけどね この世界の民度は主人公が各地移動することも相まってか…
[一言] 危機的状況にありながら安心感を与えてくれる管制官と、危機的状況なのに危機感ゼロでアホなことをしてる管制官、クソ野郎モドキは本当になぁ…
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