File164 惑星リーシオでの休日② どっきりの仕掛人は良く笑いを堪えられると思う
視点変換 ◇UNKNOWN◇
ドラッケン邸から離れていく車の中で、ドラコニアル人の男女が片手でハイタッチをしていた。
「やったぞ食いついた!」
「『宝珠煮卵』はドラッケングループの名物だからね。絶対こうなるとおもったんだ!」
男はハンドルを握り、女は着ていた上着を着替え始めた。
「半信半疑だとしても調査はするはずだからな。製作者に会えなかったとしても、確認の為の実物を用意させて、これは間違いなく弟が作ったものだと宣言したあと、事実をばらさない。レシピをこちらに渡すってのを取り付ければ慰謝料が手に入る」
男はにやにやしながらハンドルを捌き、街中を疾走していく。
「それで、もしレシピが手に入ればレシピを売ればいいし」
「製作者を連れてくれば、拐っていって作らせて売りさばけば」
「「大儲けだ!」」
男女はまたもハイタッチをした。
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
疲れた身体に鞭うって船に戻り、煮卵を持ち出そうとしたところ、
「ねえショウンちゃん。今の仕事は楽しい?」
と、リチェリーナさんが声をかけてきた。
「ええ、まあ。大変なことはありますけどね」
「一緒にいてくれる子も出来たし、一人だった時よりも安心ね」
リチェリーナさんは、アディルを見つめながらそういった。
そして改めて俺に向き直ると、
「もし辛くなったら遠慮なく私達を頼りなさい。私や主人や娘達。お義父さんもお義母さんも、貴方の一生に寄り添いたいと思っているんだからね」
と、ありがたい言葉をかけてくれた。本当に心配してくれているのがわかる。
しかし、何回も何回も聞いている上に、この後に続くセリフがある。
「というわけで、寄り添い料はこれでいいわ♪」
「そうくるとおもいましたよ…」
いつの間にか船内にリチェリーナさんの部下がいて、食糧庫から果実酒の瓶をごっそりと持ち出していた。
ホバー式の台車に載せられた果実酒を眺め、
「これこれ!梅酒!あら、こっちは新作?!パイナップルにさくらんぼにキウイなんかもあるのね!」
と、瓶に頬擦りをしかねない様子だった。
「あ、さすがに材料費は支払うからね♪あ、美味し!」
さっそく梅酒の瓶を開け、取り分け用の柄杓で味見をする様子を見るに、サラ姉ちゃんの酒好きは、間違いなくリチェリーナさんからの遺伝だ。
そんなこんなでなんとかドラッケン邸に戻ってくると、マヤ姉ちゃんにティナ姉ちゃん。じいちゃんにばあちゃん。エドガーおじさんが屋敷に戻ってきていた。
全員で夕食を食べながらさっきの二人組の話になると、
「んなもん、鱗を全部剥がしてやりゃあ良かったんだ!」
と、ティナ姉ちゃんがかなり物騒な話を始めた。
ちなみにドラコニアル人の鱗は生え代わりをするとはいえ、生え代わり時期でもないのに無理矢理剥がされるとめちゃくちゃ痛いらしい。
「まあまあティナ。それではこちらが悪者になってしまうだろう。きちんと証拠をそろえてぐうの音もでないようにして、その上で向こうが暴挙に出た時にやってやりなさい。そうすれば正当防衛が成立する」
エドガーおじさんは、苺酒を美味しそうに飲みながらティナ姉ちゃんをなだめつつも、なかなかあくどい事を言っている。
ちなみに果実酒は船から持ってきた煮卵と共に全部の種類が1瓶ずつならべられ、俺とアディル以外の人達の胃袋に全部納められていった。
そんな夕食が終ると、直ぐに煮卵づくりを始めた。
味の決め手は自家製の醤油の漬け込みダレなのでそれを作りながら、卵を半熟に茹でていく。
卵が茹で上がったらからを剥き、漬け込みダレに沈めて弱火でコトコト煮て、煮汁が少なくなったらパッドやタッパーにあけて漬け込みダレを足し、熱が失くなるまで放置する。
それが全部終ると、俺とアディルはあてがわれた部屋に引っ込み、シャワーを浴びてからすぐ眠った。
翌日の約束の時間。
2人のドラコニアル人の男女がやってきた。
髪も鱗も真っ黒な男はミゲール・サデイス。髪は黒で鱗がオレンジの女はサミー・ラカイと名乗り、応接室に通されるとさっそく本題をかましてきた。
「昨日のお話は御理解いただけましたか?」
「貴方の弟さんが『宝珠煮卵』の製作者で、今『宝珠煮卵』をこちらに納めているのは、弟からレシピを盗んだものである。なので販売者を捕まえてレシピを回収もしくは聞き出したいから所在を教えてくれ。というお話でしたね」
対応をしたのはリチェリーナさんとサラ姉ちゃんで、俺は別室に待機していろと指示を受けたので、部屋に設置してあるカメラの映像と音声を警備室でティナ姉ちゃんとマヤ姉ちゃんと共に眺めていた。
「ではまず、貴方の弟さんが『宝珠煮卵』を開発したという証拠はおありですか?」
「私達が嘘をついてるっていうの?!」
「やめろ。こういう場合、真偽を確認するのは当然だ」
サラ姉ちゃんの当然の質問に、女の方が噛みついてきたが、男の方が冷静に話を進めてきた。
多分これはそういう駆け引きのテクニックなんだろう。
「証拠になるかは少し弱いのですが、私達は『宝珠煮卵』を食べた事があるんです。食べさせてもらったのは7年前の事、そのすぐ後に弟はレシピを盗まれたんです」
「あなた方は『料理の顔』を知っているという訳ですね。しかし制作した本人なら、頭の中にレシピぐらい入っているのではないかしら?」
ドラコニアル人にとって、『料理の顔』は証拠になるくらいのものというのは驚愕だが、リチェリーナさんの言うとおり、自分で製作したならレシピくらいは把握していて当然だろう。
まあ、こいつらが作ったわけではないけどな。
すると、女の方がとんでもない事を言ってきた。
「犯人はリケールの恋人だった女よ!銀髪に白い鱗の女であんた達の妹!そいつがリケールのレシピを盗んだ犯人よ!」
これは以前に聞いた、経営に参加していない4人目のドラッケンの姉妹が製作しているという話を聞いて作り上げた話なんだろう。
「リケールというのは弟の名前です。恋人に裏切られた弟は、失意から茫然自失になり、徘徊している時に事故にあって亡くなったんです」
男は神妙な表情をしているが、端から見ていると笑いがこみ上げてくる。
リチェリーナさんとサラ姉ちゃんは、そんな様子はなく、冷静に反論を始めた。
「なるほど。しかし私どもの所に『宝珠煮卵』を提供してもらっている人物は、そちらの人物の特徴とは違いますね」
ある意味半分は合っているが、明確に違うところがあるのは間違いない。
そしてもちろん彼等が納得するわけがなく、
「嘘を言わないで!あんたらがレシピを奪ったせいでリケールが亡くなったのよ!」
女は怒りの表情を浮かべて詰め寄るが、
「私の娘は3人です。4人目の娘はいませんよ」
リチェリーナさんは平然と返していく。
「失礼いたします」
そこに、サラ姉ちゃんの秘書のミリンダさんが、昨日俺が作った煮卵のはいった深皿を持って応接室に入ってきた。
「それとこれが、私どもが入手している『煮卵』です。弟さんの作った『宝珠煮卵』かどうか、どうぞご確認ください」
リチェリーナさんは、テーブルに置かれた深皿に入った『煮卵』を、にっこり微笑みながら目の前にいる2人に進めた。
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他作品での初めての書籍化作業に追われ、執筆時間が削れてしまっています。
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