File162 惑星アクサブへの貨客輸送② 真面目と不真面目の境目
このカレストロ・ゲイルス氏は、写真こそ撮ってはいないが、食事の度に料理を審査されているのは間違いないだろうし、満足して食べ終わるまで落ち着けないという、飲食店経営をしているわけでもないのになんで?!という状態が、目的地に到着するまで続くことになった。
その状況に耐え、後30分少々、午前6時には惑星アクサブに到着する予定だ。
ギリギリ朝食には早い時間だけど…間違いなく朝食を要求されるだろうな…。
そんなことを考えながら超空間から脱出すると、そんなことは些細な事になってしまった。
なぜなら、軍の検問が発生していて、しかも1隻ではなく20隻以上の艦が待ち構えていたからだ。
入港・出港両方の船が何隻も捕まっている上、検問・入港・出港の順番待ちまで発生しているらしい。
軍の検問は何度も遭遇したが、ここまで大規模なものは珍しいし、正規のものならともかく小遣い稼ぎだったら本当にたまったものではない。
とはいえ受けずに逃げると余計にヤバくなるので受けざるをえない。
「すみませんお客さん。検問に引っ掛かってしまったので少々時間がかかってしまいそうなんですが…」
俺が申し訳なさそうに現状を報告すると、
「ああ。私の貨物は時間には余裕があるから問題はない。他の貨物は大丈夫なのかね?」
「正直、『軍の検問を食らうかも』を前提に、余裕もって仕事を受けているので大丈夫です」
「やれやれ。まだ小遣い稼ぎがまだ横行しているのか。軍の綱紀粛正も不甲斐ない。元軍人としては耳が痛いな」
というありがたい返答をいただきつつも、元軍人だったらしいゲイルス氏は眉間を押さえてため息をついた。
どうやら内部にいた人からも苦言がでるぐらい、不良軍人のやることは酷いらしい。
すると一隻の艦から通信が入ってきた。
『こちらは銀河共和国防衛軍、第357派遣艦隊所属、軽巡洋艦『クーゼ』だ。現在緊急事態につき特別検問を行っている。速やかに停船し、調査を受け入れたまえ』
順番待ちしているのが先なんじゃないかなとおもったが、下手に意見するとヤバそうなので承知するこてとにした。
「了解した。しかし緊急事態というのはなんなんだ?」
『すまないが、軍の機密で教える事は出来ない。協力には感謝する』
画面に現れたのは男性の通信士で、割りと丁寧に応対してくれたけれど、緊急事態とか特別検問という不穏なワードがあったので尋ねてみるが、返答はきっぱりと断られてしまった。
そのうちに連絡通路がドッキングされ、軍人達が入ってきた。
「第357派遣艦隊所属、軽巡洋艦『クーゼ』艦長、オーヴィン・シグニキス大佐です。協力を感謝します」
責任者の大佐は、まさに軍人といった風貌の人物で、その態度からはどうやらまともな検問らしいのはすぐにわかった。これならすぐに解放されるだろう。
そんなことを考えていると、
「オーヴィンじゃないか!」
「カレスか?!久しぶりだな!」
ゲイルス氏と大佐が砕けた様子で挨拶をかわしていた。
「お知り合いですか?」
「ああ。学生時代からの友人でね。軍にいたころの同期でもあり出世頭だ」
「運がよかっただけさ。ところで積み荷はなんなんだ?」
「『研究用医薬品』だ。惑星アクサブにある研究所で新薬の材料に使うものでな。頼まれたり自分で探し歩いたりして色々と集めたものだ」
「まるで百貨店の仕入れ担当だな」
「それは近いかもな」
まさか、依頼主と検問官が学生時代から軍隊の時までの友人とは思わなかった。
これなら検問もスルーかな思ったが流石にそうはいかず、部下による検査はちゃんと実行され、兵士達が船内に散っていった。
するとゲイルス氏が、
「船長。検査の後もどうやら入港までには時間がかかりそうだし、朝食をいただけるかな?君の自家製のコーンポタージュは私の今まで飲んだものの中でもベスト5に入るものだからね」
と、いってきた。
いくら検問しているのが友人だからといって、どうかと思うのだが、依頼主の意向なら出すしかない。
事実、入港・出港の為の列ができているため、検問が終わってからの方が長そうだ。
ちなみにメニューは、コーヒー・トースト・コーンポタージュ・プレーンオムレツ・ベーコン・サラダだ。コーヒーはゲイルス氏のチョイス、トースト用のジャムは、苺・ブルーベリー・蜜柑・林檎の4種類を出しておいた。
すると、ゲイルス氏の友人でもあるシグニキス大佐がため息をついた。
「相変わらず食い道楽をやってるのか?」
「美食家といって欲しいね。それより君もどうだね?この船の船長の腕前は私が保証する」
ゲイルス氏は満足げにそういうが、仕事中の軍人が民間船で食事はしないだろう。
「仕事中だ…。が、民間人からの御厚意を無下にするわけにはいかないな」
って食べるのかよ!違う意味で不良軍人だなこの人!
仕方なく朝食をもう1人分用意すると、2人はにこにこしながら朝食を食べ始めた。
「どうだね?」
「これは確かに旨いな!こいつが軍本部や訓練場の朝飯に出てきたらどれだけ有りがたいか…」
大佐はしみじみと噛み締めながらオムレツを口に運んでいく。
「それにしても、軍本部の食堂はどうして不味いんだ?旨い食事の方が士気も上がるだろうに…理解に苦しむ」
「船ででる不味いコーヒーと同じだな。遊びでここにいるんじゃないって自覚を促す為らしいが…実際は将官クラスの贅沢費捻出の為らしい」
「一番下らない理由だな」
食事をしながら軍内部の諸事情がばらされていき、2人の食事が終わるころに検査をしていた兵士達が報告をしてきた。
「大佐。積み荷、船内共に異常ありません」
「そうか。撤退後には当番の者は食事を取ってから交代させるように」
「了解しました」
兵士の人達は、テーブルを見て呆れている人もいたり、羨ましそうにしている人もいたり、腹を立てている人と様々だった。
多分食べ終わるのを待ってたんだろうな…。
そうして彼等が退散してからたっぷり1時間以上またされてから、ようやく停泊の順番が回ってきて、なんとか無事に惑星アクサブの宇宙港に到着した。
視点変換 ◇カレストロ・ゲイルス◇
予想通り、横流しの主犯が無茶な検問を仕掛けてきたので、協力者のシグニキス大佐に検問に参加してもらい、無事にアクサブの宇宙港に到着し、貨物を無事に情報部の同僚に引き渡す事ができた。
貨物輸送業者の彼等に迷惑がかからずに作戦が終了したのは僥倖だ。
まったく、軍は上に行くほど腐るのはどうにかならないものか…。
まあ、軍情報部が証拠を集めているから、逮捕は時間の問題だな。
しかし今回は私にとっては運が良かった。実に素晴らしい料理に出会うことが出来たからだ。
まあ、それを提供してくれたのは料理人ではないがね。
とはいえ、彼をどうにかして軍に入隊させ、本部の食堂の厨房に配属させられないものだろうか?
そうすれば軍の食事事情も少しは改善されると思うのだがな。
まあ、本人の様子からして軍人にはなりそうにもないがね。
彼が貨物輸送業者をやめて、レストランでも経営してくれれば、足繁く通い詰めるのだがな…。
視点終了
今回は、主人公だからといって、なんでもお見通しではない。ということがいいたいだけです
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