File136 惑星リーシオ経由惑星ヤルマド行き貨物輸送⑤ 新たなる秘宝の誕生?の瞬間
祝勝会の会場は、ドラッケン邸内部にある大ホールにおいて立食式で、午後6時から行われた。
その祝勝会でまず注目されたのは、当然だが『宝珠煮卵』だった。
身内でも一部の人間しか食べたことのない物のためか即座に殺到し、あっという間になくなった。
そして祝勝会開催直前まで作っていた卵焼きにも人が殺到し、『料理の顔』ですぐに製作者が同じ人物だとばれ、この卵焼きは『黄金煉瓦』なんて呼ばれ始めてしまった。
まあ今回はドラッケングループ内だけでのことだし、噂が広まることも少ないと思いたい。
俺は男の姿でホールの隅に避難し、冷たい烏龍茶を飲んでいた。
ちなみに俺の扱いは、たまたま立ちよったクロイド・ドラッケンの友人の孫というそのままの立ち位置だ。
そして男の姿のため、『宝珠煮卵』の製作者らしい謎の妹だとは思われなかった。
「しかし君の本業が貨物輸送業者とはな。本気で料理人に転職する気はないかい?」
「それは、お断りしますよ」
グウェンツさんはワインを手に持ち、一応部外者な俺の横につき、話し相手になってくれた。
じいちゃんをはじめとしたドラッケン一家は、部下や幹部達に囲まれたり、プロジェクトの功労者に声をかけたりと忙しそうだ。
こうして見ると、やっぱり住んでる世界が違うなと実感してしまう。
そこに、アディルが料理を乗せた皿を持って戻ってきた。
「見て下さいマスター!美味しそうなお料理がこんなに!」
アディルは目をキラキラさせながら、とってきた料理を見つめていた。
「これがプロの料理ってやつだからな」
「マスターのお料理だってプロ級です」
アディルは取ってきた料理を美味しそうに食べ始めた。
グウェンツさんとは、卵焼きの材料調達なんかをしていた時に話し合いでもしたのか、嫌悪感はなくなっているようだ。
するとそこに、高価そうなスーツを着た、水色の鱗に金髪碧眼の男性のドラコニアル人がこちらに近づいてきた。
そして俺やアディルを素通りし、グウェンツさんに話しかけてきた。
「やあグウェンツ。久しぶりだね。相変わらずティナロッサ様の遊び相手かと思ったら部外者の見張りか」
グウェンツさんに嫌みっぽく挨拶をした上、俺とアディルを不愉快そうに見つめてきた。
「彼等は客人だぞ」
グウェンツさんが男性をたしなめるが、
「しっている。クロイド前総帥の友人の孫とその所有バイオロイドだろう」
と、切り返してきた。
そして俺達に視線をむけ、
「ところで君は仕事はなにをしているのだね?」
と、明らかに見下すような態度で声をかけてきた。
「貨物輸送業者ですが」
無視の一つでもしてやりたかったか、パーティー会場でもめるのはヤバイだろうと、仕方なく返答した。
「なるほど。クロイド前総帥の道楽と同じか。どうやってこの祝勝会の情報を得て潜り込んだかは知らないが、クロイド前総帥に金の無心など出来ないと思っておくんだな」
その返答への返しも非常に腹がたった。
アディルは声を上げたりはしなかったが、しっかりと男性を睨み付けていた。
しかし次の瞬間、
「ん?まてよ…。もしかして君はあの『宝珠煮卵』と『黄金煉瓦』を運んできたりしたのか?」
と、尋ねてきたので、
「いえ。オルランゲアからリーシオ経由でヤルマドに荷物を運ぶ際、安全の為にここで一泊する予定のところをティナ…ロッサさんに捕まって祝勝会に参加しろと」
俺が『宝珠煮卵』と『黄金煉瓦』の製作者だとは言わず、それ以外の事実を告げてやった。
「なるほど。君は身の程知らずに潜り込んだわけではないわけか。ティナロッサ様の戯れにも困ったものだ。まあ、ドラッケングループのパーティーに参加できたことを光栄に思うことだな」
すると、『役立たずが!』という表情をした後、俺とアディルに嫌味を吐いてからグウェンツさんに向き直り、
「グウェンツ。ティナロッサ様と幼馴染みだからといって、調子に乗らないようにな」
グウェンツさんに嫌味なのか嫉妬なのかわからないセリフを吐いてその場を去っていった。
「なんなんですかアレ?」
結局名前も名乗らずに嫌味だけ吐いていった男性が何者なのか気になり、グウェンツさんに尋ねてみた。
「ニルス・ホルグランツ。ホルグランツビルドシステム社長の息子で専務取締役だ。組織的に言えばサラフィニア総帥補佐の傘下になるかな」
偉いさんに間違いはなかったが、ホルグランツビルドシステム社とは知らなかった。
ホルグランツビルドシステム社は所謂建築会社で、俺でもしってるくらい有名なドラッケングループの傘下企業だ。
あそこの建築は信用が出来ると有名だったんだが…。
あいつが社長になった時が怖いな。
「ああいうタイプは面倒臭いんだよな…マジで」
「私はあの人は嫌いです」
「あいつは仕事は出来るんですが、職業貴賤の意識が強くて、よくトラブルを起こすんです」
初対面な上に、わずか5分にも満たない接触でありながらも、十分にムカつく人物だということは理解できた。
「3人でそんな隅っこでなにやってるの?」
そうやってうんざりしているところに、自分の鱗の色に近い青系のドレスで着飾ったサラ姉ちゃんがやってきた。
「サラフィニア様!」
「サラフィニアさん!」
「サラ…フィニアさん」
思わずサラ姉ちゃんと呼びそうになったが、ギリギリセーフだった。
「やっぱりショウンにその呼ばれ方はなんか違和感あるわね」
サラ姉ちゃんは、俺にあらたまった呼ばれかたをすることに違和感を感じているようだ。
しかし俺にはそれ以上に気になることがあった。
「ところでサラフィニアさん。こちらが提供した果実酒やその他はどちらに?」
俺の船から強奪した、果実酒や作り置きの品々が、会場に見当たらないことだ。
それを指摘すると、サラ姉ちゃんは視線をそらし、
「あれまでだしたら色々とまずそうじゃない?だから止めておいたのよ」
と、説明をしてきた。
まあ確かにそれは間違いじゃない。
あれを全部出していたら更に大変な事になっていただろう。
しかしそれなら、持っていく必要はない。
「はじめからそのつもりだったんだよな?」
「なんのことかしら~?」
俺が強く出ると、サラ姉ちゃんはあからさまにとぼけてきた。
でもまあ、こんなのはいつもの事だ。
仕方ないのできっちり請求しようと考えていると、
「そうだショウン。このアディルちゃん。ちょっと貸してね」
不意にサラ姉ちゃんがそんなことをいい、アディルの手をしっかりとにぎった。
「貸すってなんなんだよ?」
「それは秘密。アディルちゃんちょっとこっちきてね」
サラ姉ちゃんは有無を言わさずにアディルを引っ張っていく。
「マ、マスター!」
アディルは、売られていく子牛のような不安そうな表情を浮かべる。
アディルがその気になればドラコニアル人でも抵抗して引き剥がすことはできるだろうが、相手がサラ姉ちゃんのために手が出せないようだ。
「食べられたりすることはないから!安心して、少しの間相手してやってくれ」
サラ姉ちゃんの事だからヤバイ事にはならないだろうし、何かあったら最善の手段をとってくれるだろう。
コミケ会場で職業マウントをする人に出くわしたことがありますが、『でも、人間としての価値はお前の方が低いな』という、その場にいた人の一言で黙りました。
ざまあみろ。
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