File128 惑星オルランゲアでの休日① 末端価格の拡散の責任は本人にもある
つまらない検問で時間を食ったものの、無事にオルランゲアにたどり着いた。
20時を25分は過ぎていて、お客たちを下ろし、荷物も下ろし終わった時には21時近くになっていた。
ちなみにレツィナ嬢とイトヤ女史、そしてティラナは、しっかりと果実酒を買っていった。
かなり遅くはなったが、貨物配達受付は24時間営業なので問題はなかった。
ササラの奴が遅番でまだ座っていたので、彼女のところに行き事情を説明する。
「災難だったね。それなりに被害者がいたらしいから捕まったのは幸いだね。ところで隣にいるのはどなた?」
しかし、俺が軍の偽検問にかかったことより、俺の横にいるアディルの方が気になっているようだった。
「縁があってパートナーになったアディルだ。この子の登録を頼む」
「初めまして。私は、パートナードールズ社謹製、ナノマシン搭載型護衛用バイオロイド『シールダーシリーズ』のファーストロット、型式番号BNG-タイプF、製造番号ADL19635。いただいた名前はアディルです!マスターの足を引っ張らないように頑張ります!」
アディルはササラにお辞儀をしながら定型文のような挨拶をする。
真面目なアディルらしいとは思うが、初対面かつ丁寧な挨拶は必要な相手にだけするように言っておかないとな。
その挨拶を聞いたササラはアディルを見つめながら、
「お爺さんが亡くなってからずーっと1人でやってきたショウン君がやっとパートナーを受け入れる余裕が出来て、お姉さん嬉しいなあ」
と、感慨深い様子でうんうんと頷いていた。
そこで俺は、末端価格の件を思いだし、少し仕返しをすることにした。
「てことはあんた俺より確実に歳上なんだな」
そう言いはなってやると、ササラはピシッと動きを止めた後、あざとい感じ?で言い訳を始めた。
「あ、間違えた間違えた。ショウンお兄さんにパートナーを受け入れる余裕が出来てササラは嬉しいなあ。私は17歳だから!ショウンお兄さんより歳下だから!」
ササラの言う17歳は、所謂『永遠の17歳』というやつで、実年齢は間違いなく17歳じゃあない。
「47歳かなるほどな」
なので適当な年齢をいってみる。
すると、怒りのこもった笑顔でこちらを睨み付けてきた。
「ねえスネイル?どういうつもりなのかな?」
推測だが、ササラは多分25か6くらいだろう。
47歳は流石に盛り過ぎたか。
女性に年齢の話がタブーなのは太古の昔からだ。
しかし此方には攻撃材料がある。
「末端価格の話を広めたらしいな」
するとササラの表情が固まり、焦った様子で目が泳ぎ始めた。
「えーなんのことー?私は知らないよー」
そんな棒読みで誤魔化されるはずはないだろう。
こいつの事だから、おしゃべりの最中にポロッと話してしまうんだろう。
本当に話してはダメなことは言わないのでまだマシだが。
まあいい。武器はあるから遠慮なく振るわせてもらおう。
「今後はアディルも世話になるからな、長年世話になってきたあんたになら、挨拶と手間賃代わりに後日にあんたの好物のカスタードプディングでもと思ったんだが、また嫌な話を広げられたらたまらないからな、後日別の人に頼むよ。それならプリンをつくらなくてすむからな」
と、言ってやった。
実はササラのやつはプリン全般が好物だ。
以前、ウィルティア・ルナーシュ評議員閣下に頼まれた時に切り分けられる固めのカスタードプディングにしたのは、彼女の好みに合わせたからだ。
そうしてそのまま立ち去ろうとした所に、たまたまミィミス・ラッペリオ女史が通りかかった。
「ラッペリオさんちょうど良かった。実は今回パートナーを購入しましてね。この子の登録をお願いできませんか?」
ラッペリオ女史は俺に話しかけられて軽くおどろくが、すぐにアディルを確認して、
「わかりました。では書類を作成していただいたあとに証明写真を撮らせていただきますね」
と、手早く手続きを開始するべく書類を取りに行った。
ちなみにパートナーを『購入』という言い方は、アンドロイド・バイオロイドをパートナーにしたという意味であり、アンドロイド・バイオロイドは登録上は備品扱いになるからだ。
「ちょっと待って!わかった謝る!末端価格の話を広めたのはすみませんでした!」
それにより、プリンがもらえないと焦ったササラは、慌てて俺に頭を下げてきたので、
「今度似たようなことがあったら、二度とプリンは作らないからな」
と、釘を刺してやった。
まあたいした釘にはならないだろうし、今回の事でササラを拒絶したりはしないが。
「じゃあこっちに来て。写真とるから」
ササラはそういうと、アディルの手を掴んで撮影室に向かった。
それと入れ替わりにラッペリオ女史が戻ってきて、『アンドロイド使用許可申請』の書類を渡してくれた。
「ところでショウンさん。カスタードプディングをエスンヴェルダ主任に作るっていってましたが、それってこの前ルナーシュ評議員閣下に頼まれて作った奴ですか?」
どうやら話が聞こえていたらしい。
「ああ、そうだけど」
「なんでエスンヴェルダ主任に?」
「今後はアディルが世話になるからな。そのお礼にと考えたのと、あのバカの自白の引き出し用」
「末端価格の話ですか…それについては私からも謝罪いたします。拡散を止められなかったのは貨物配達受付全体の責任ですから」
どうやらササラが話を広めていたのを知っていたようだ。
出来れば脅してでも止めて欲しかったな。
ともかく俺は、書き終わった書類をラッペリオ女史に渡す。
「…はい、不備はありませんね。後は彼女の写真をそえれば申請完了になります。ところで…」
ラッペリオ女史は書類を受けとりながら、俺の顔を真剣に見つめてきた。
こう言っちゃなんだが、一つ目人であるラッペリオ女史の目力はかなり強力なので圧倒されてしまう。
「そのカスタードプディングは私もいただけるんでしょうか?」
よく考えたら、以前ササラからカスタードプディングを奪い取った主導者は彼女だったっけか…。
さすが貨物配達受付の影の支配者だな。
まあ俺が勝手に思ってるだけだが。
「まあ2~3日はここにいるから、その間に持ってくるよ」
それを聞くとラッペリオ女史の顔がぱっと明るくなった。
「は~い。撮影終わったよー。書類が揃ってるなら発行は明日になるからね」
そこにササラとアディルが戻ってきた。
「ありがとうございました。これからよろしくお願いいたします」
アディルはササラに丁寧にお辞儀をしていた。
「もし何かあったら遠慮なく貨物配達受付嬢を頼ってね。お姉さん頑張っちゃうから!」
どうやらアディルはササラに気に入られたらしい。
アディルの性格からすれば、嫌われる事はないはずだけどな。
「じゃあ、明日の昼前には取りにくるよ」
「例のものはよろしく…」
ササラはこっそり耳打ちしてくるが、その後ろでラッペリオ女史がニコニコしているのには気がついていない。
多分また奪い取られるんだろうな…。
せめてフレーバーを増やしてやるか。
船に戻った後は、簡単な夕食(ピザトースト・コールスローサラダ・コーンポタージュ)をとり、早くに就寝した。
アンドロイドの扱いに関しては、
書類上とか登録項目には『物品』や『備品』扱いですが、
家族同然に扱っている人が圧倒的に多数です。
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