File121 惑星ダナークズでの待機時間② 引っ越しや家具の運び入れは意外と人手がいる
「ショウン・ライアット!この娘を何処から誘拐して来たの!?」
リリーナは、憤怒の表情を浮かべ、俺を睨み付けてくる。
ちなみにアンドロイドやバイオロイドで、アディルくらい見た目が人間に近いと、性能にもよるが、600~700万クレジットはする。
アディルと同じ、『オートヒールシステム』搭載した最新の『シールダーシリーズ』だと、最低でも1000万クレジットはするらしい。
リリーナにとっては、俺は貧乏人という認識しかないのだろうから、怪しんだのだろう。
しかしこちらには、鉄壁のアリバイ?がある。
「例の荷物の分配で、たまたま俺の船に載せられてて、引き取りを待ってても取りに来ず、おまけに廃棄処分されてたから、タダで引き取ったんだよ。証人は、ここにいる仲介人のチャーリー・レックだ」
俺の説明に、チャーリーが軽く手をあげる。
「そんな不純な…」
リリーナは不愉快そうな表情を浮かべる。
そしてアディルに顔を向け、
「貴女!そいつは女性じゃないのよ!半分男なのよ!」
と、実は犯罪者なのよと言わんばかりに詰め寄った。
「はい。存じていますよ」
「半分とはいえ男と一緒に同じ空間で生活するのよ?!めちゃくちゃ危険じゃないの!」
「私は護衛用バイオロイドですから、マスターを危険から守るのが一番の使命です」
リリーナの剣幕とは対照的に、アディルは冷静に返答していた。
しかし、
「そんなカタツムリなんか守らなくていいからうちに来なさい!」
というセリフにだけは、
「お断りします!私はマスターの所有物ですから貴女のところには行きません!」
と、きっぱりと否定した。
するとリリーナはいきなり俺を睨み付け、
「ショウン・ライアット!この子を私達に引き渡しなさい!」
と、怒鳴り付けてきた。
すると、俺が反論する前に、ヴィオラ・ザバルがリリーナに声をかけた。
「止めないかリリーナ!今のお前の発言と行動は、ショウン・ライアットに対する侮辱罪と恐喝罪に当たる」
「ですが!バイオロイドとはいえ女性がこいつと一緒なんて!」
リリーナはどれだけ俺が気にくわないんだ?
『天使の宅配便』にも入りたくないと公言しているし、ヴィオラ・ザバルに連絡すら取ってないのに。
まあ、理由はわかっている。
ヴィオラ・ザバルが俺に声をかけることそのものが気に入らないからだ。
そのリリーナに、ヴィオラ・ザバルが険しい表情で注意をする。
「リリーナ。最近のお前の仲間内以外、特に男性に対する言動や態度の悪さは目に余る。以前も、握手を求めてきた依頼者をものすごい形相で睨み付けていただろう?」
「そんな!私は団長のために…」
団長の為にというのはつまり、ヴィオラ・ザバルは同性愛者だから男に触りたくないだろう。
だから、握手なんか求めるんじゃないと、男性達を威嚇していたという事だろうか?
「確かに私は同性愛者を公言しているが、男性と会話をしたり、握手をしたりすることを、嫌悪や拒否をしているわけではない。相手が失礼や侮辱や危害を加えて来ないかぎり、普通に応対するものだろう」
「でも…」
「お前への処遇については後で話すことにしよう」
ヴィオラ・ザバルはリリーナの反論を許さず、俺とアディルに向き直ると、黙って頭を下げ、
「すまなかったなショウン・ライアット。それと、アディルだったか?私の部下が大変失礼をした。なにかお詫びをしたいのだが…」
こうして躊躇なく謝罪ができるところが、ヴィオラ・ザバルが真に優秀で慕われる理由だ。
が、リリーナのような、感情と好き嫌いだけで行動するようなタイプの扱いは不得手だ。
事実、彼女の後ろから、悪いのは全部ショウン・ライアットのせいだと言わんばかりにこっちを睨み付けてきやがる。
それもあって、何かお詫びをと言われても、特には思い付かない。
なにより、下手なことを言うと、また噛み付いてくるだろう。
「それなら、貨物用のカーゴシャトルと重力板を借りたらどうだ?どっちも持ってるだろう?ちょうど借りようとしていたところだったし」
そこに、チャーリーが絶妙な提案をした。
たしかに『天使の宅配便』ならどちらも持っているし、レンタル代金がかからないならありがたい。
「そうだな。借りられるか?」
「そのぐらいなら御安い御用だ」
「じゃあ、こっちの準備ができたら連絡するから、貨物用シャトルの発着場の入り口にきたら連絡をくれ、その時に細かい位置を知らせる」
ヴィオラ・ザバルが了承してくれたので、買い出し用のボックスを載せたカートを押し、カプセルを受け取りに向かった。
その途中に男にもどり、アディルのカプセルを回収する。
その時に、アディルが自分を回収してくれた係員にお礼をいっていた。
彼等が回収しなければ、彼女は超新星爆発にまきこまれこの場には居ないわけだから、その感謝は計り知れないだろう。
それにしても、アディルの人工頭脳は随分と感情豊かだ。
もしかしたら、人間の脳でも載せているのかと思うぐらいだが、それは絶対無いようだが。
その挨拶が終わると、ピンボール台を預けてあるという、シャトルの発着場に向かった。
そこに到着してからヴィオラ・ザバルに連絡し、宇宙服を回収しているうちに、向こうからも連絡があり、こちらの場所を伝えると、時間を置かずにカーゴシャトルがやって来た。
「待たせたな」
カーゴシャトルに乗って現れたのは、ヴィオラ・ザバルの他に、
ニ対の腕に、栗色の髪をポニーテールにした、快活そうなロブワ(多腕)人の女の子と、
長い黒髪に紫の眼。背中に白い羽毛の翼をもったラフィム(有翼)人の女の子がいた。
以前にザバル達の救助をした時には居なかったと思う。
居たなら彼女達は目立つ筈だ。
そしてやはり、リリーナの姿はなかった。
「紹介しよう。新しく入ったリナリー・ラムエストと、シャルミナ・ウェディスだ」
「リナリー・ラムエストです!ショウンさんの噂はかねがね」
多腕人のリナリーは、2本の右手で敬礼をしてきた。
もしかすると、元軍人なのかもしれない。
しかし気になったのは、彼女の言動だ。
「どんな噂か聞いていいかな?」
「船が遭難したときに助けてくれたのと、お料理が上手って話ですよ」
どうやら彼女の聞いた噂は、問題なさそうだ。
「シャルミナ・ウェディスともうします。あの…オルランゲアの受付の人達の間で、手作りお菓子の末端価格が天井知らずって本当なんですか?」
しかし、有翼人のシャルミナの噂は、聞き逃せないものだった。
「それ誰に聞いたの?」
「主任のササラさんに…」
そのせいで、大人しそうなシャルミナに思わず詰めよってしまった。
あいつ、帰ったら折檻だな…。
まあ、噂話に腹は立つが、彼女達のせいじゃないし、積み込みを始めさせて貰おう。
ピンボール台は衝撃緩衝材に梱包されていて、なかなか巨大だ。
実際にはカプセルのほうが大きいのだが、梱包材のせいで大きくみえる。
どちらも重量があるので、重力板に乗せてそのままシャトルに積み込んだ。
そして、簡易停泊地にある俺の船に到着すると、貨物搬入用の連結通路を接続し、船内に入った。
搬入用の連結通路というのは、通常の連結通路よりかなり広く、こういった宇宙空間内で船内に大型の荷物を運び入れるための連結通路だ。
ちなみにこの船の入り口も、少しだけ広げる事ができるようになっている。
そして当然だが、ヴィオラ達も船に乗り込んでくる事になる。
「以前乗ったことのあるやつより随分広くなったんだな。大きなダイニングテーブルがあるとはな。船体が短いのに居住空間が広めに取れるのが、下部貨物室型貨客船の利点の1つか」
ヴィオラ・ザバルは、ソファーに座りながら船内を見回し、
「昔は船脚が遅くて到着まで何日もかかったから、居住空間の広い下部貨物室型が主流だったんだ。今は船の速度も上がった上に、積載量がデカくて速度のでる後部貨物室型が流行りだから少なくなったんだよ」
「詳しいな」
「ブローカーとしちゃ知っておいて損はないからな」
チャーリーの奴は、ソファーに座ってヴィオラ・ザバルと会話をしている。
「こっちは寝室がありますよ!しかも2人部屋が4つも!」
「晋蓬皇国風のお風呂がありますよ!ちょっとしたホテルですよねこれ…」
後の2人は船内を物珍しそうに見回し、他にも、ソファーにすわったり、厨房を覗いたりしていた。
アディルは、俺の横でキョロキョロと周りを見回し、これから住むことになる場所に興味津々だった。
そして全員に共通することとして、
「おーい。搬入手伝ってくれ」
だれも搬入を手伝おうとしないことだった。
久しぶりの別種族です!
いずれは、多眼や出ていない獣人も出したいですね。牛とか馬とか虎とか…
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