File106 首都惑星ヴォルダルでの手続き色々① 謝罪の時のセリフは絶対ににかよってしまう
お待たせいたしました
ケータリングの助っ人に駆り出されてから8日目。
ついに『フライングテーブルクロス』での短期アルバイトが終了することになった。
その仕事の終了時は、実にあっさりしたものだった。
多分、いろんな人が入れ替わり立ち替わりしているからだろう。
俺が居る間に入ってきた人もいれば、辞めていった人もいる。
さらには、入って1週間で辞めた人もいるぐらいだ。
退社時に挨拶をしてくれたのは、社長と副社長と主任さん、それと会話をすることがあった数人ぐらいだった。
しかし社長だけは、
「やっぱり女の子の格好で働いてほしかったな~」
と、のたまい、奥さんに尻をけとばされていた。
帰り際には、給料と一緒にデリバリー用の特製ミートソースパスタをいただいた。
なんでもこれは、サンドイッチだけを車で移動販売していた頃に、社長と副社長の2人で開発したメニューだったらしい。
発言はスケベではあったが、お客様と社員のことを本当に大事にしている社長さんだった。
ちなみにこの特製ミートソースパスタは、何度も食べさせてもらったが本当に美味しく、絶対に真似は出来ないと本気で思った一品だった。
そうして、宇宙港のカプセルホテルに戻るべく、軌道エレベーターに到着したところで、リュオウ警部がまっていた。
「お疲れさん。どうだったバイトは?」
「意外と性に合ってましたね。賠償金と保険金がショボかったら、暫く続けたいぐらいですよ」
正直、もし両親が事故で亡くならず、高校・大学にいってバイトをしていたら、こっちが本職になってしまっていたかも知れないレベルだ。
「その賠償金と保険金だが、ちゃんと確認をいれてるか?」
「汎用端末でチェックしてますよ。警察以外はすでに支払いが可能だそうで、明日受け取りに行けるように、アポイントメントも取っておきました。あと、船の方もなんとかなりそうなんですよ。ほら、これ」
ケータリングのパーティー会場で、准将閣下からもらった情報に従い、翌日の休憩時間には、確認の電話をいれていた。
そこで見せてもらった型落ち品の中に、下部貨物室型貨客船MAF―02というタイプがあり、それが値段的にも性能的・内装的・外装的にもバッチリで、かなり気に入っていた。
警部殿に画像を見せるぐらいに。
「販売は月末になるんですけどね。これ、貨物船なのに時速3光年はでる高速艇なんですよ」
するとリュオウ警部が意外な提案をしてきた。
「だったら高速許可証を申請しておけ。お前なら通るだろうし、もっておいて損はないだろ。なにより、何かあった時にスピード違反にならんからな」
「とばす気はないんですけど…。まあ、無事故無違反のために申請しておきますよ」
飛ばす気はないから必要がないだろうと思っていたが、取り締まる側の人がいうなら、取っておいた方がいいだろう。
「それより何かご用ですか?」
昔からの知り合いだから、普通にお疲れ様を言いにきたでもおかしくはないけれど、それにしては表情が真剣だった。
「地元警察の方から、慰謝料支払いの手続きが出来たそうだから、明日まとめて受け取りにいくぞ。GCPOとしても用があるから同行させて貰う」
多分、車を出してくれるだろうから、こちらとしては有難いが、なんの用事があるのかは聞かない方がいいんだろう。
「それから、『ヘンリー・タダヤマ』らしき人物の遺体が、星域連邦内で発見された。公表はまだだが、被害者だから教えておこうと思ってな」
聞いた瞬間、特製ミートソースパスタの入った袋を落としそうになった。
見つかったら殴ってやろうと思っていたが、死んでしまったのではどうしようもない。
なんで星域連邦で死んでいたのかは分からないが。
そして翌日。
リュオウ警部とラツィム巡査と共に、警部の運転する車で、まずは保険会社のカサハス・インシュアランス・グループに向かった。
アポイントメントはとってあるので、トラブルなく豪華な応接室に通され、少し待っていると以前の担当者がやってきた。
そして丁寧な挨拶をすますと、さっそく本題に入った。
「ショウン・ライアット様。当方のトラブルにより、保険金の支払いが無効になってしまい、大変申し訳ありませんでした。
今回は、前回のお支払分と、ご迷惑をかけた慰謝料とあわせまして、8600万クレジットをお支払いたします。
現金と情報。両方ご用意できますが、どちらがよろしいでしょうか?」
「じゃあ情報で」
随分と準備がいいが、そんな大量の現金を持ち歩きたくないので、当然情報の方にした。
次は惑星上にある宇宙港管理局に向かった。
ここも同じように、丁寧な挨拶をすますと、すぐに本題に入った。
「この度は、我々の職員が多大なご迷惑をおかけしてしまいました。深くお詫び申し上げます」
対応してくれたのは、なんと管理局長だった。
そしてここにだけは、言っておきたいことがある。
「普段から宇宙港を利用するものとして、今後こういうことの無いようにお願いしたいですね」
本当は色々言ってやりたくはあったが、なかなか纏まらなかったので、これぐらいにしておいた。
「肝に命じておきます。それとこちらが、今回の不祥事に対しての賠償金です。どうぞお納めください」
管理局長の後ろにいた人物がテーブルに置いたのは、現金1億クレジットのはいった、でかい銀色のトランクだった。
現金で支払うことで、情報の偽造で誤魔化したりしていませんよというアピールなのだろう。
ちなみにもしこれが偽札だったら、ここの管理局は本当にアウトになるから、それはないだろうというのが警部の見解だ。
宇宙港管理局で受け取った現金を、銀行口座に入金してからやってきたのは、全ての元凶スターフライト社の本社だ。
どうやら売り払う予定の色々な物の運び出しや、抗議団体なんかも押し掛けたりしているらしく、かなり混沌としていた。
そんななかで案内された応接室では、年配の部長さんらしき人が応対してくれた。
「申し訳ありません。本来なら私よりも上司か、当事者や関係者が謝罪するべきなのですが、ほとんどのものが、退職、警察の事情聴取や逮捕・勾留などでこの場には居なかったり、出てこられなかったりするもので…」
部長さんは本当に疲れた様子で、嘘をついたりしている様子はなかった。
「ともかく、お詫びのしようもございません。これは、ショウン・ライアット様への慰謝料でございます。元・副社長の指示で被害者の皆様に同じようにご用意しております。どうぞお受け取りを…」
そうしてテーブルに置かれたのは、管理局と同じく現金1億クレジットのはいったでかい銀色のトランクだった。
部長さんの疲労の様子から考えると、これを何度も何度も繰り返しているのだろう。
「大丈夫ですか?」
と、思わず声をかけてしまうほどに。
すると部長さんは深くため息をついた。
「…これでよかったのですよ。我が社は完全におかしくなっていました。これでようやく、世間様に迷惑をかけずにすみます…。先代や先々代も安堵されていることでしょう」
多分この人は、おかしくなる前のスターフライト社の時代からここに勤めていたのだろう。
そのおじさんは本当にほっとした表情をしていた。
そして最後にやってきたのは、地元警察の本部だった。
「今回、所轄の不良警官の、警察官としてのあるまじき行動で、ご迷惑をおかけしたこと、誠に申し訳ございません!」
お決まりの挨拶をする前に、どのくらいかは分からないが偉い人が、テーブルに四角い箱のような物を置いてから土下座をしてきた。
「実行犯の警官は現行犯逮捕の後、違法薬物所持・暴行・殺人未遂等で起訴。無期懲役は確実です。今後は綱紀粛正を徹底させる所存です!」
確かに土下座をしているが、なんとなく俺ではなくリュオウ警部に頭を下げているようにも感じる。
リュオウ警部もそれを理解しているのか、かなり不愉快そうに、
「ここにはしばらくGCPOからの監視が入る。今後は
ああいった警官が蔓延らないようにしていただきたいものですな」
明らかに煽りの入った返答をしていた。
多分この偉い人は、自分のせいじゃないのに。と、思っているんだろう。まあそれは確かにそうだろうけど、組織の偉い人としてはダメな気がする。
ちなみにテーブルの四角い箱が慰謝料で、金額1400万クレジット。
警察が一番ショボかった…。
特に問題がないので、足早になってしまいました。
ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします
来週にコロナワクチンの接種(1回目)をうけます。
どうなるか分かりませんので、次週は投稿をおやすみさせていただきます。
場合によってはということもありますので、ご理解のほどをよろしくお願いいたします。




