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File100 首都惑星ヴォルダルへの貨物輸送からの災難 ⑦ 思い出は大事 。保険はもっと大事。

お待たせいたしました。


賠償金のもろもろに対して御指摘があったので修正いたしました


「申し訳ございません!」

軌道エレベーターで惑星上に降りて、俺が航海保険を契約しているカサハス・インシュアランス・グループの本社に向かい、やけに客が多い応接エリアに案内され、担当者に保険金支払いの手続きを請求したら、開口一番にそう言われてしまった。

「えーっと…」

俺が事情をわかっていないのを察したのか、担当者は説明を始めた。

「実は、ライアット様が前回保険の支払い手続きを申請なさった時に、期限切れだとお伝えしたとおもいますが、実は期限切れになっては居なかったのです!

原因は、当社の管理ネットワークが何者かに操作されていまして、それがわかったのが最近なのです。

一昨日に報道され、経営陣が謝罪会見をいたしました」

「あー。それは俺は見てないわ」

意外な事実に驚くが、俺がそれを知らないのは無理もない。

俺はその時、留置所にいたのだから。

「そのような事情もあり、前回と今回の分とあわせてお支払致します。ですが、色々立て込んでおりますので、少しばかり御猶予をいただきたく思います」

なるほど。

それで俺以外にも客がいっぱいいて、手続きをしたり、なかには怒鳴ったりしてる奴がいるわけか。

まあ、保険金を払ってくれるというなら文句はないので、手続きをしてカサハス・インシュアランス・グループの本社を後にした。

そして車に乗り込むと、

「向こうは保険金支払を渋るようには見えなかったけど、なんでついてきたわけ?」

どうして2人が着いてきたのかの理由を聞いた。

「あの会社がこれ以上不正をするとは思ってないさ。お前が手続きをしている間、ラツィムの奴がいなかったろ?今回のことで、ハッキング対策を強化したいからと相談を受けたんで、その日程の確認の必要があったんだよ。

ちなみに犯人はそこの元社員。顧客情報を不正ブローカーに売った事で懲戒解雇されたことを逆恨みしての犯行らしい。最近まで発覚しなかったのは、それだけ巧妙な手口で隠蔽していたからだ」

「自業自得じゃねえか。はた迷惑な」

どうせなら他人を巻き込むようなことは止めて欲しいものだ。

「にしても、ハッキング対策をなんでGCPOが?」

そんなのはシステムエンジニアの会社にでも頼むべきだろう。

「GCPO(うち)のサイバー関連の部署には、1歩どころか半歩間違えれば犯罪者ってレベルのハッカーがひしめいてますからね。下手なエンジニアリングの会社に頼むより安心ですから」

俺の疑問に、ラツィム巡査が、諦めたような乾いた笑いを浮かべながら答えた。

「そういえば、寝泊まりするところはどうするんです?」

そうして次の瞬間には表情をもどし、心配そうに声をかけてくる。

「暫くは宇宙港のカプセルホテルを利用ですかね。長期利用するなら割引もあるし」

「あんなことがあったのに、よく宇宙港のなかで寝る気になりますね」

「身体に馴染んでるんでね」

ラツィム巡査は不安そうにしていたが、こちらとしてはセカンドハウスみたいなもんだから気楽でいい。

そのうちに軌道エレベーターに到着すると、

「俺たちはこのままGCPOの支部にいく。あとは構わんな」

リュオウ警部がこちらに顔をむけて声をかけてくる。

「ああ、大丈夫だよ」

「それから地元警察からの慰謝料だが、他のと一緒で少し時間がかかる」

そう言いながら、封筒を差し出してきた。

「当座に使え。捜査への協力金だ」

多分、というか間違いなく警部殿のポケットマネーだろうが、ここはありがたくいただいておこう。

「ありがたくいただいて、ステーキでも食うよ」

船が手に入ったら、いい肉を買って焼くことにしよう。

「そうそう。こいつも渡しておく。昨日言ってたチラシだ」

そう言って渡してきたのは、惑星ヴォルダルにあるフードデリバリーの店の、短期アルバイト募集のチラシだった。

たしかにケータリングのスタッフ募集もしているようだ。

「お前なら重宝されるだろう」

リュオウ警部は、本気とも冗談とも取れる笑いを浮かべていた。


軌道エレベーターで警部達と別れた後は、すぐに宇宙港(ポート)に上がり、サンライトイエロー(なじみの)リップル(みせ)で昼メシをくいつつ、じいちゃんと姉ちゃん達に電話をしたところ、釈放されたことを喜んでくれたのと同時に、心配させるなと怒られた。

船をどうするかも聞かれたが、大丈夫とだけ答えておいた。

他にも、友人や同業者。仕事で知り合った人たちなどから山ほど連絡が届いていた。

カプセルホテルにチェックインしてから、その1人1人に連絡をいれ、心配させたお詫びと、心配してくれた事への感謝を伝えておいた。

特にササラには、電磁警棒(スタンスティック)の礼と、コスプレ衣裳の文句を言っておいた。

まあ、姉ちゃん達を含めたそのうち何人かは、心配させた事への慰謝料(りょうり)の請求があったが…。


その日の夜のニュースでは、スターフライト社関連のもろもろが、大々的に報道された。

『この数ヶ月の間に発生していた様々な爆破事件や暴行事件の首謀者が、スターフライト社およびその関連会社であることがGCPOの調べによって判明しました。

この一連の事件はスターフライト社が自社の経営建て直しのための人材スカウトを進めるにあたり、非合法な人材発掘会社と協力し、犯罪を捏造したり、暴力や家族などの人質を取っての恐喝を行っていました。

なおこの一連の犯行には、各惑星の地元警察や、宇宙港関係者の関与が疑われており、GCPOと公安委員会は慎重に調べを進めています。

またGCPOは、フォトンクラウド社に対してのテロ行為の主犯として、社長であるエルカ・ダイムル氏を、フォトンクラウド社に対する威力業務妨害の容疑で逮捕しました。

それを受けてスターフライト社は、エルカ・ダイムル容疑者を社長職から解任、新しい代表取締役社長を、夫であり副社長であるウィルソン・ダイムル氏に決定しました。

なお、妻であるエルカ容疑者とは離婚協議中とのことです。今回の一連の事件について政府は…』

俺はそれを全部聞く前に、眠ってしまったような気がする。

やっぱり留置所での生活は、色々疲れていたんだろう。


翌日。

当面の指針として、船を手にいれるべく、惑星上の中古船屋を巡ることにした。

の、だが。

下部貨物室型輸送船は、古いタイプの貨物船のため、耐用年数を過ぎて、廃棄をされてしまっていることが多い。

さらには、多くのメーカーが生産を中止しているため、流通も少ない。

とはいえ製造されていないわけではないので、新造船(しんしゃ)ならある程度数がある。

が、なかなかの値段がする。

保険はともかく、賠償金や慰謝料は、全面的に向こうが悪くても、被害者の過失がごり押しされるだろうから、満額は期待していないので、何とかして中古の奴を探さないといけない。

祖父に初めて乗せてもらったのも、一緒に乗って仕事を覚えたのも、祖父が亡くなってから仕事を始めたのも、このタイプの船だったので出来ることなら乗り続けたい。

この際新品を買うのもいいだろう。

その場合は、値段と船の広さや設備の兼ね合いだ。

主に値段に重きが置かれるが。

まあどうしようもなければ、後部貨物室型輸送船に切り替えるしかないだろう。

だが、出来る限りは下部貨物室型輸送船を手に入れたい。

購入は慰謝料やら賠償金やら保険金やらが入ってからになるが、それまでには時間がある。

それまでに、少しでも稼いでおいた方がいいのかも知れない。

その瞬間、昨日もらったチラシの存在が頭の中にちらついた。

本格的に暑くなってきたので、皆様お気をつけください。


ご意見・ご感想・誤字報告よろしくお願いいたします


ところてんは黒蜜

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― 新着の感想 ―
[気になる点] "心配かけるな!と怒られた" …怒られる事なの?なんか理不尽
[気になる点] というか賠償金に期待出来ないとか、どんな世界やねん・・・ 賠償金って、被害を補填するものでしょう。被害額満額が当たり前というか、そうじゃないものを賠償とは呼ばないけど・・・ どっちに過…
[一言] ケビンもいいんですけど他の人もありです。ショウンに対して脈なし女友達とか逆にショウンに惚れてる女たちの牽制し合いとか
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