File98 首都惑星ヴォルダルへの貨物輸送からの災難⑤ 不満の解消のやり方を間違えたら破滅する
お待たせいたしました
遅れて申し訳ありません
ササラの奴が、着替えと電磁警棒(コスプレ衣裳)を差し入れてきた翌日。
リュオウ警部とラツィム巡査がやってきて、取調べを行なった。
「元気そうだな」
「なんとかね」
「捜査の方は順調だ。明日にでも出してやれるだろう」
まあ、取調べと言う名の報告だ。
そうやって堂々と釈放の話をしていると言うことは、かなり絞り込むことが出来ているんだろう。
「だしてもらったところで、その後どうするかは決まってませんけどね。船が見つかるかどうかもわかりませんし」
「下部貨物船はいくつかのメーカーからでていたはずだが?」
「懐具合から考えると高いですし、希望の広さがあるかもわかりませんし」
しかし、捜査が進み、牢獄から出ることができたとしても、生活を安定させる船がない。
確かに下部貨物船を販売しているメーカーはあるが、最新型なだけあってお値段が高い。
さらには貨客船として使用できるかどうかも重要だ。
「だったらお前の知り合いに相談したらどうだ?
ドラッケン一族のお嬢さん達はこぞって面会に来ようとしていたみたいだしな。まあ、今回はちょっと事情があるから面会は控えてもらったがな」
その辺りが押し掛けて来ないとおもったら、警部殿がストップさせてたのか。
賢明な判断だな。
姉ちゃん達なら、この留置所くらい破壊しかねないからな。
「捜査は順調っていってましたけど、どんな感じになってるんですか?」
自分の現状が気になって尋ねたところ、
「鑑識からは、船体に爆発物の痕跡を発見。
防犯カメラの映像から、船と停泊地の爆破は宇宙港職員の仕業と判明。
職員は責任者に言われてやったと主張。
責任者は知らないと主張。
スターフライト社のヘンリー・タダヤマは自分は無関係と主張。
正直真っ黒なんですが、決め手がなかなか。
すくなくとも貴方がテロリストではないことは、間違いなく証明されました」
横にいたラツィム巡査が詳細に答えてくれた。
それを聞き、
「さしあたっては、でたあとの懐と船の問題か…」
改めて、懐具合が一番の問題点なのが浮き彫りになった。
「だったらいいバイトがあるぞ」
そこに、リュオウ警部が少しにやつきながら提案をしてきた。
「GCPOの潜入捜査の手伝いとかじゃないでしょうね?」
「惑星ヴォルダルのうちの支部にはいってるフードデリバリーの店だ。ケータリングのスタッフ募集もしてるらしい。明日チラシを持ってきてやろう」
とかなんとかいって潜入捜査の囮だったら訴えてやる。
今でこそ言わないが、俺が子供の頃は、もちろん冗談ではあったろうが、捜査官にならないかと言われていたこともあった。
案外今でも考えていたりするのかもしれない。
視点変換 ◇不良警官◇
俺が警官になったのは、その権力で色々とおいしい思いができると考えたからだ。
「監視カメラは?」
「ばっちり切ってきたぜ」
その考えに共感してくれる奴は、意外に少なくなかった。
「例の薬は?」
「ばっちりだ」
志を持って警官になりはしたものの、安い給料に、無能な癖に偉そうな上司にどなり散らされたり。
地位と名声と出世のためなら、冤罪や捏造くらい平気でする上層部の連中から、理不尽を押し付けられたりして、不満を溜め込んでいる奴のなかに、そう考える奴が出てきてもおかしくないだろう。
今回は、特定の人物を冤罪で逮捕し、必要な言質を取るだけで大金が手に入る簡単なものだ。
上層部は普通にやっている事を、俺達がやってなんの不都合がある。
しかも今回はおまけもついてきた。
その冤罪で逮捕したシュメール人を、女に変身させて襲って欲しいという話だ。
なので、シュメール人の性別を強制変換させる薬と、性別を固定させる薬も用意した。
共和国や星域連邦じゃあ持ってるのがバレたら裁判なしの無期懲役だが、帝国じゃあまだまだ秘密裏に流通している。
そうして、奴がいる留置所にやってきた。
しかし、
「留置所の消灯時間はすぎてるってのに、なにやってやがる」
署内でも有名な勤続ジジイが邪魔をしてきた。
「取調べだ。上からの命令なんだよ」
「そんな話は聞いてねえな」
ちっ…面倒臭い。
まあいい、ちょっとだけ予定を変更すればいいだけだ。
「ぐうっ!」
俺は光線銃を抜き、ジジイの腹を撃ち抜いた。
こういう時は音のしない光線銃は便利だ。
ジジイも抜こうとしたが、俺に敵うわけがねえ。
「おっ、おい!」
「さすがにやばいぞ!」
焦る2人を尻目に、俺は手袋をしてから、呻いているジジイの銃を奪った。
「あいつが殺って逃げ出したってことにすりゃいいんだよ」
最初の話では、留置所内で取調べをしてくれという話だったが、身柄さえあれば文句はないだろうから、連れ出してから取調べればいい。
ターゲットがぶちこまれている牢にくると、そいつは眠っていた。
しかも女の姿で。
「なんだよ。上玉じゃねえか!」
シュメール人は美形が多いと聞くからそれなりに期待はしていたが、どうやら当たりだったらしい。
「女の姿なのは、おそらく『月のもの』とか言う、生理機能が働いて女になってるんだな。最低1日はこのままだから、強制変換させる薬を打つ手間が省けたな」
「じゃあ固定薬の方を打っとこうぜ」
1人が鍵を開け、いそいそとそいつに近寄り、
「じゃあ年中無休の女の子のままでたっぷりと楽しも…」
薬を打つために腕を掴もうとした時、急に動きが止まり、床に倒れ込んだ。
「まさか役に立つとは思わなかったぜ…」
そいつは身体を起こして立ち上がると、片手に電磁警棒を構えていた。
「こんな時間になんの用だ?」
そいつは、油断なくこっちを睨み付け、臨戦態勢を整えていた。
「取調べだよ。お前は留置所内に電磁警棒を持ち込むような極悪なテロリストだからな。不意打ちの取調べで情報を吐き出させる必要があるんだよ」
どうやら武術の心得はあるらしいが、所詮は素人だ。
銃で傷をつけて価値が下がっても面白くない。
「あんたらは制服だろ。捜査権や取調べの権利はないはずだが?」
「これは特別な取調べだ。それに、そんなものを留置所にもちこみ、警官を昏倒させた現行犯だ。取調べは厳しくなると思えよ?」
俺も電磁警棒を取り出すと、もう1人を手で制する。
「受けるのはお前らだろ。守衛のじいさんを撃ったり、人に怪しい注射を打とうとした時点でアウトだ」
「大丈夫だ。ジジイを撃ったのはお前だからな!」
不意打ちしかできない素人であり、腕力が劣る女の身体。
日々チンピラをぶん殴ったり、ジムでトレーニングしているこの俺が負けるわけがない!
視点返還 ◇ショウン・ライアット◇
不良警官が、にやついた顔をしながら、電磁警棒を振り下ろしてきた。
間違いなくこっちを舐めているのだろう。
確かに腕力的なことなら敵わないだろうが、俺もこいつも、持っている武器は電磁警棒だ。
振り下ろしてきた電磁警棒を上半身を反らしてかわし、電磁警棒を警官の膝に押し付けてスイッチを入れる。
すると当然電気が走り、
「ぐあっ!」
足だから気絶はしないが、痛みで体勢は崩れる。
その隙に、電磁警棒を警官の首に叩きこむ。
「がっ!」
警官はそのまま意識を失い、ゆっくりと床に倒れる。
「野郎!」
それを見ていた残りの1人が銃を向けてきたので、電磁警棒を投げつけて怯ませようとしたところ、レーザーがその警官の腕を貫いた。
「ギャアッ!」
俺はその隙に、警官の首に電磁警棒を押し付ける。
そのレーザーを撃ったのは、片手で腹を押さえた老警官だった。
「おい、じいさん!大丈夫か?」
「急所は外れてるみてえだ…」
とりあえずじいさんを座らせると、内線を使って報告し、救急搬送も要請した。
「それにしても…女の姿はなかなか別嬪だな。女房の若い頃みたいだ…」
「しゃべらない方がいい」
意識もしっかりしていて軽口もたたける。
レーザーが傷口を焼いたためか出血も少ない。
これなら、救急搬送が来るまで大丈夫だろう。
「ともかくありがとうな。助かったよ」
「仕事だ。気にするな。しかし…ちくしょう…47年目の皆勤賞がパアだぜ…」
「46年もやってりゃ十分立派だよ」
気にする所はそこなのかと思っているうちに、大勢の足音が近づいてきた。
コスプレ衣裳(一部)が役に立ちました。
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