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「ふぅ〜」
失礼しますと言って音楽室に入る。
椎名君はやっぱりいた。
「き、キタコレッ!」
「へ?」
途端に椎名君は私との距離を詰め私の両手をギュッと握る。
「ひ、ひ、ひ、姫野たん、いえ、つつ、つ、椿たん」
「ひぃッ!」
あまりの迫力と怖さに後ずさってしまう。ていうか息荒すぎだし近すぎる。手も汗かき過ぎてびっしょりだし‥‥
「あ、あの、椎名君?」
「つ、椿たん大好きです!椿たんの視線いつも感じていました!拙者の推しキャラにそっくりな椿たんに好かれるなんて光栄であります!」
ええ?何を言ってるだろう?
あ!ちょうど斜めに飯塚君と椎名君がいたから私が椎名君をチラチラ見てたと勘違いされたんだ‥
拙者とか推しキャラとかわけわかんないけどとりあえず謝っておこう。
「あ、あのね、それはちょっと誤解があるというかなんというか‥‥別に椎名君を見てたわけじゃなくて‥とにかくごめん」
「椿たんは恥ずかしがり屋だなぁ。拙者の好意を受けてここに来てくれたんでござろう!?」
そ、それは違うでありんす‥‥あ、ヤバ、変な言葉遣いが移った。一応私は告白してくる人にはちゃんと答えておこうって思って来ただけで‥
というか唾まで飛んできてるよ‥
「私、そういう事まだ考えてなくて‥ごめん」
握られた手を離してもらおうとするが全然びくともしない。
「おい、椎名嫌がってるだろ?離してやれよ」
と後ろから声がし振り返るとそこには飯塚君がいた。え?なんで?
椎名君もパッと手を離した。
「椎名、そんな強引に行くから怖がられるんだよ。あとそのキャラなんとかしろ」
強引なのはあんたもね!と私は心の中で叫んだが助かったので言わないでおこう。
「うるさい!チートイケメンにはわからんでござる!」
な、なんかちょっと変な雰囲気になりそうだ‥
なんとかしないと!
「あ、あのさ!椎名君」
「は、はひぃ!」
「いきなりでビックリしたけど友達になろう?」
「ほ、ほんとでござるか?」
「うん」
「ウヒャーーッ!目的達成でやんす!」
あれ?最初からそのつもりだったんだ、私変な勘違いしてたんだな‥‥
恋だのなんだの振り回され過ぎちゃってるよ‥
そして走って椎名君は出て行ってしまった‥
「なぁ、姫野。なんだったんだあれ?」
「私が飯塚君を見てるのを椎名君が自分を見られてると勘違いしたんだって」
「へぇ、え?」
「あ‥‥」
盛大に自爆してしまった‥ヤバい!どうしよう!?
「い、飯塚君はどうしてここに?」
「あ、椎名と姫野なんてなんか珍しい組み合わせだなって思って。それより俺のこと見てるとかなんとかは?」
「えと、それは‥‥い、飯塚君って面白い顔してるなって思って‥」
そして沈黙‥‥なんか言ってよ!
私は恥ずかしくなって音楽室を飛び出した。