↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
会社をクビになった俺、金を使うほど資産が増える神システムで人生をやり直す  作者: MagnusOps


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

122/132

第122話 ー『母の店』

第122話 ー『母の店』


2026年7月24日(金)——午前8時30分。


成城·キサラギ・プライベート・レジデンス——朝食室。


成城のマンションの朝は、いつもより暖かく感じられた。雲一つない青空のせいかもしれない。あるいは、週末が近づき、皆がどこか違う高揚感を感じ始めているからかもしれない。樹は朝食のテーブルに座り、母が作ったご飯と味噌汁を味わっていた。千春は台所でその日の弁当を準備しながら忙しく動いている。


「……樹、今日は時間ある?」


樹は皿から顔を上げた。「……うん、母さん。どうしたの?」


千春は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……今日、サロンに一緒に来てほしいの。話したいことがあるから。」


樹は瞬いた。「……サロンのこと?」


千春は頷いたが、それ以上は説明しなかった。「……それはサロンで話しましょう。今は、朝ごはんを食べてしまいなさい。」


樹は頷いた。母が何を話したいのか気になりながらも。彼は静かに朝食を済ませ、世田谷の千春ビューティースタジオへ向かう準備をした。


---


午前9時30分——千春ビューティースタジオ、世田谷——ロビー。


千春ビューティースタジオは、世田谷の大通り沿いにある小さな二階建てのビルにあった。千春の人生の一部となって十五年になる場所だ。ビルは大きくはないが、よく手入れされている。壁は温かなクリーム色に塗られ、入口には丹精込めて育てられた鉢植えの花が並んでいる。


樹はZeekrをサロン近くの駐車場に停め、母と一緒に中へ入った。サロンの中は静かで居心地が良かった。温かな黄色い照明、柔らかなヘアケア製品の香り、そして隅のスピーカーから流れる静かなジャズ。数人のスタッフが微笑み、千春が入ってくると挨拶した。


「……おはようございます、千春さん!」


「……おはよう、みんな。今日はお客様がいるの——私の息子の樹よ。」


樹は好奇心を持って自分を見つめるスタッフたちに丁寧に一礼した。「……おはようございます。お会いできて嬉しいです。」


スタッフたちは親しみやすく微笑んだ。何人かは少し緊張しているようだった——おそらく、ビジネスニュースで樹の名前を聞いたことがあるからだろう。


千春は樹を奥の部屋——小さなオフィスとして使われている部屋——へ案内した。そこには千春の机があり、書類とノートがきちんと積まれている。壁には常連客の写真と、地元の美容イベントで受賞した賞状が掛かっている。


「……座って、樹。」


樹は机の向かいの椅子に座り、母が話し始めるのを待った。


---


午前10時0分——オフィス——千春が語る。


千春は椅子に座り、真剣でありながら温かな眼差しで息子を見つめた。


「……樹、ずっと前から考えていたことがあるの。このサロンを大きくすることについて。」


樹は頷き、続けるよう促した。


「……このサロンを巨大企業にしたいわけじゃないの。あちこちに支店を出したり、フランチャイズチェーンにしたいわけじゃない。それは私の望みじゃない。」千春は言葉を止め、適切な言葉を探した。「……ただ、このサロンをもっと良い場所にしたいだけ。お客様が大切にされていると感じ、スタッフが快適に働ける場所に。」


樹は注意深く聞いていた。「……どうしてそれを考え始めたの、母さん?」


千春は小さく微笑んだ。「……このサロンを十五年やってきて、お客様が来ては去っていくのを見てきた。サービスが好きで残る人もいれば、狭すぎたり忙しすぎたりして去る人もいる。私は……彼らの体験を向上させたいの。」


樹は頷いた。「……何が必要なの、母さん?」


千春はしばらく考えた。「……もっと広い場所が必要。お客様を窮屈に感じさせずに、もっと多くの人を迎えられる場所。ゆっくり座って、お茶を楽しんで、急かされていると感じない場所。」


樹は注意深く聞き、母のビジョンが形になり始めるのを感じた。「……つまり、このサロンを拡張したいんだね?」


千春は頷いた。「……ええ。でも、どうすればいいか分からないの。ファミリー・ファンドからお金を借りるのは、明確な理由もなくしたくないし。」


樹は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……お金の心配はしなくていいよ、母さん。大事なのは母さんのビジョンだ。」


千春は感謝の気持ちに満ちた目で息子を見つめた。「……ありがとう、樹。」


---


午前11時0分——サロンの外——隣のビルを見る。


母と話した後、樹はサロンの周りを見ることにした。彼は外に出て、通りの建物を観察した。彼の目は、千春ビューティースタジオのちょうど隣にある空きビルに留まった。くすんだガラスのファサードと閉ざされたドアを持つ二階建ての建物だ。窓には、電話番号が書かれた「売り物件」の看板がある。


樹はそのビルの前に立ち、細部を注意深く観察した。ビルは手入れが行き届いていないようだった——ペンキは剥がれ、いくつかの窓はひび割れている。しかし立地は完璧だった。母のサロンのすぐ隣、賑わう世田谷の大通りに面している。


彼はスマホを取り出し、「売り物件」の看板を撮影し、電話番号をメモした。それからサロンに戻ると、母はお客様と話していた。


「……母さん。」


千春が振り返った。「……うん、樹?」


「……隣のビルが空いてる。『売り物件』の看板がある。」


千春は瞬いた。「……隣のビル? 気づかなかったわ。」


樹は微笑んだ。「……それを買って改装したらどうだろう? サロンを拡張できるし、お客様のためにもっと快適な空間を作れるかもしれない。」


千春は驚きに満ちた目で息子を見つめた。「……君は……本気で言ってるの?」


樹は頷いた。「……本気だよ、母さん。あのビルは母さんのサロンの一部になれる。お客様がゆっくり座り、お茶を楽しみ、急かされない場所。スタッフがもっと快適に働ける場所に。」


千春はしばらく沈黙し、そのアイデアを消化しようとした。「……それは……魅力的なアイデアね。」


樹は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……あのビルについて調べるよ。もし価格が妥当なら、買える。」


千春は優しく息子の手を握った。「……ありがとう、樹。」


---


午後0時30分——世田谷のレストラン——母子の昼食。


彼らはサロン近くの小さなレストランで昼食をとった。木製のテーブルと家庭的なメニューのある簡素な店だ。千春は和食セットを注文し、樹はカレーライスを注文した。


「……樹、隣のビルのこと、考えてみたの。」


樹は眉を上げた。「……それで?」


千春は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……アイデアは気に入ったわ。でも、このサロンが魂を持ち続けることを確認したいの。あまりに豪華すぎたり、冷たすぎたりする場所にしたくない。」


樹は頷き、母の懸念を理解した。「……母さんは温かくて親しみやすいサロンが欲しいんだね。お客様が家のように感じられる場所。」


千春は頷いた。「……ええ。それがずっと私の望みだった。」


樹は微笑んだ。「……なら、そのコンセプトで改装しよう。豪華な場所じゃなく、快適な場所。人がもっと長くいたいと思う場所。」


千春は誇りに満ちた目で息子を見つめた。「……本当に分かってくれてるのね、樹。」


---


午後2時0分——サロンに戻る——スタッフとのディスカッション。


昼食後、千春は常勤スタッフ——由紀、美香、彩、里奈——を集め、拡張計画について話した。彼女たちは何年も千春と共に働いてきた。


「……みんな、お知らせがあるの。」千春は落ち着いているが、熱意を込めた声で言った。「……このサロンを拡張するかもしれない。」


スタッフたちは目を見開いて互いに顔を見合わせた。「……拡張ですか、千春さん?」


千春は頷いた。「……ええ。隣に空きビルがあって、それを買えるかもしれないの。全てが順調に進めば、サロンをもっと大きくして、お客様にとってより快適な場所にできる。」


由紀——最も古株のスタッフ——が慎重に手を挙げた。「……千春さん、それはつまり、お客様がもっと増えるということですか?」


千春は頷いた。「……そうなる可能性が高いわ。でも、みんながここで働き続けて快適でいられるようにしたいの。」


美香が希望に満ちた声で付け加えた。「……休憩室がもっと良くなりますか?」


千春は微笑んだ。「……ええ。みんなが休憩できる快適な場所を作りたいの。」


彩と里奈は大きく微笑んだ——彼女たちは長い間、狭い休憩室について不満を言っていた。


部屋の隅から聞いていた樹は微笑んだ。母はお客様のことだけでなく、スタッフのことも考えている。それがこのサロンを特別なものにしている。


---


午後4時0分——サロンの外——もう一度ビルを見る。


樹は再びあの空きビルの前に戻った。今回は母と一緒だ。彼らは歩道に立ち、長い間手入れされていない建物を見つめた。


「……このビルは二年間空いてるの。」千春が観察しながら言った。「……昔は花屋があったのを覚えてる。オーナーが引退して、誰も継がなかった。」


樹は頷き、このビルがどう変わるかを想像した。「……サロンの追加スペースに改装できる。一階は待合室と小さなカフェ。二階は追加のトリートメントルームとスタッフの休憩室に。」


千春は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……それは素敵ね、樹。」


樹は優しい眼差しで母を見た。「……明日、不動産業者に連絡するよ。価格が妥当かどうか見てみよう。」


千春は息子の手を握った。「……ありがとう、樹。いつもお母さんを幸せにする方法を知ってるのね。」


樹は微笑んだ。「……ただ母さんに幸せでいてほしいだけだよ。」


---


午後6時0分——千春ビューティースタジオ——夕方。


日が西に傾き始め、オレンジ色の光がサロンの窓から差し込んでいる。千春は道具を片付け、スタッフたちは部屋を掃除している。樹は待合室に座り、スタッフの一人が入れてくれたお茶を楽しんでいた。


彼はサロンを見渡した——お客様の写真で飾られた壁、きちんと並べられたケア製品の棚、そして使い古され始めたトリートメントチェア。この場所はシンプルだが、魂がある。銀座の高級サロンにはない温かさがある。


「……樹、まだいたの?」


樹は振り返り、母が戸口に立っているのを見た。「……うん、母さん。ここの雰囲気を楽しんでたんだ。」


千春は微笑み、その隣に座った。「……この場所が気に入ってくれて嬉しいわ。」


樹は優しい眼差しで母を見た。「……今、分かったよ、母さん。なぜこのサロンを巨大企業にしたくないのか。」


千春は眉を上げた。「……分かったの?」


樹は頷いた。「……このサロンは大きくなることについてじゃない。人々が大切にされていると感じる場所であることについてだ。人々が来て、家のように感じられる場所。」


千春は微笑んだ。心からの、温かな笑顔だ。「……本当に私の息子ね、樹。」


---


午後8時0分——成城·キサラギ・プライベート・レジデンス——夕食。


樹と千春は成城のマンションに到着した。正則、美咲、留奈、小春が既に食卓で待っている。千春はすぐに台所へ行き、料理を温め始めた。樹は席に座った。


「……お兄ちゃん、母さんのサロンはどうだった?」美咲が好奇心を持って尋ねた。


樹は微笑んだ。「……拡張するかもしれない。隣に空きビルがあって、買えるかもしれない。」


留奈は瞬いた。「……母さんのサロンを拡張? それ、すごい!」


小春は小さく微笑んだ。「……母さん、きっと喜ぶね。」


正則は落ち着いた目で息子を見た。「……母さんを手伝ったのか?」


樹は頷いた。「……うん、父さん。でもただ買い与えるんじゃない。手伝うけど、決断は母さんがする。」


正則は頷いた。満足に満ちた頷きだ。「……よし。」


---


午後9時0分——樹の部屋の中——思索。


樹は窓際の椅子に座り、自分で入れた緑茶を楽しんでいた。窓の外の日本庭園が月明かりの下で色を変え始めている。


彼は今日のことを考えていた。母のこと、サロンのこと、そして拡張計画について。全てのビジネスが大きくなる必要はないと理解し始めていた。ただ良い場所になりたいだけのビジネスもある——人々が大切にされていると感じられる場所。


「……母さんのサロンはそういう場所だ。」


彼はお茶を一口すする。温かさが体に広がるのを感じながら。


---


【次話 第123話——『三人姉妹』】


美咲、留奈、小春が樹と自分たちの夢について話す。美咲はファッション/ライフスタイル、留奈はテクノロジー、そして小春は自分自身の分野を見つけたいと考えている。樹はそれぞれにメンターを与える——縁故主義は一切なし。小春はいつか樹の会社で働きたいと言う。


【第123話へ続く……】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。