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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程【大ドンデン返しミステリー】  作者: シロクマシロウ子
罪と罰編

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最悪の終点1

桜田風晴(さくらだかぜはる)・・・田舎の農業高校2年。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平の長男。農業高校2年。


 



 安西は重い足取りでオープンスペースに向かった。


 水樹が1人──大きな出窓の縁の部分に座っていた。

 窓の向こうの木々も、夜空も星も彼女にふさわしい背景のようになっている。


 安西は眼鏡をかけてこなくて正解だったと心底思った。


 見ていたくもない

 早く戻りたい

 逃げ出したい

 彼女から


「何の用事? 今日はちょっと……疲れてるんだけど」


 開口一番で嫌な口調だった。自分でも思った。それで良かった。


「……………………」


 いつもならやり返すどころか、こちらをズタズタに裂ける女王の言葉が今夜はなかった。

 彼女は悩むような表情で、無言だった。

 安西は少し近づいた。少しだけ──だ。


「何かあった? 真淵くんと」


 水樹がその美しい瞳でこちらを見上げたので


(ああ、そうか。やっぱり)


 と思った。


「仲良くなれなかった?まだ会って2回目だもの。大丈夫だよ」


「私は……」


 女王は唇を開いたけれど、珍しく言い(よど)んだ。それで、珍しく安西の方が言葉をかぶせることができた。


「水樹が本気だしたら、誰だって好きにさせることが絶対できると思うよ。真淵くんは…………今までの相手よりは時間はかかるかもしれないけれど」


「秀一は────」


 彼女の口から自分の名前が出たので、刹那(せつな)聴き入ってしまった。なんて恐ろしい女性だろう。


「秀一は、私と聖がうまくいったら本当に嬉しい?」


 彼は迷いなくうなずいた。

 願ってきた。

 君の幸せを────ずっと


「嬉しいよ。良いことだと思う。水樹に本当の好きな人ができること。真淵くんとだと遠距離になるだろうけれど、応援するよ」


「心から?」


 水樹の声が震えている気はしたけれど──眼鏡の無い自分には顔がぼやけていて、表情は見えなかった。


「勿論、心から」


 心から願ってきた。

 君の幸せを────だから


「分かった。…………もう、行って」


 女王の許しを得た。彼は足早にその場を去った。








 残された水樹は 1人窓辺の端で身を縮めた。長い髪がその身を包むように流れた。


 今夜──秀一に、借りていたハンカチと5年間持ち続けていた折りたたみナイフを渡そうと決めていた。


 何故だろう?


 分からないけれど、彼に渡したかった。

 そうしたらこの身から、何か言葉も出るような気がしていた。伝えるべき何かが。

 分からないまま、ただただ苦しくて悲しくて涙は(こぼ)れ落ちる。

 それを返し損ねた秀一のハンカチで、(ぬぐ)ってそして気がつく。



 自分は馬鹿だ

 本当に、どうしようもないほどに



 嗚咽(おえつ)を彼のハンカチで押し殺して、脚を丸めて泣いた。


 北橋は"取り返しがつかなくなる前に"と言ったけれど、もう充分 取り返しはきかなかったのだ。

 何も取り返せない。


 自分はやはり 戻れない。


 もう元には……戻れないんだ。









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― 新着の感想 ―
おじさんは脅迫文の事は聞いていなかったっけ? エアコンがついてて冷蔵庫がつかないなんて、どう考えても人為的であからさまな罠だよな。 ただ非道く確実性の低い罠でもある。 ワタシなら配電盤の蓋を手放す事は…
安西が眼鏡さえかけていれば……。 (´;ω;`) ま、高校生なんだし、すぐに新しい彼氏できるでしょ。 (´ε`) それよりもそれよりも! サクラちゃんが‼️ 一体誰がカバーを外れやすく細工していた…
過去編、面白かったです。色々な登場人物の過去話や、意外な繋がり、二手に分かれて捜査するところも楽しかったです。 最後に叔父さんが…(ToT) これからが更に進展して行くんですね!じっくり読んでいきます…
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