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炎と水と〜黒竜池に眠る秘密〜僕達の推理道程【改訂完了版】  作者: シロクマシロウ子
過去編・忘れえぬ人

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踏み外しながらも

ー登場人物紹介ー


桜田風晴さくらだかぜはる・・・田舎の農業高校2年。

桜田晴臣さくらだはるおみ・・・風晴の父親。市議会議員だったが、6年前から行方不明。

桜田孝臣さくらだたかおみ・・・晴臣の実弟。ミステリー同好会顧問。地学教師。


大道正火斗だいどうまさひと・・・ミステリー同好会部長。高校3年。実家は大企業の財閥グループ。

大道水樹だいどうみずき・・・ミステリー同好会メンバー。正火斗の妹。高校2年。

安西秀一あんざいしゅういち・・・ミステリー同好会副部長。高校2年。父親は大道グループ傘下企業役員。

桂木慎かつらぎしん・・・ミステリー同好会メンバー。高校2年。

神宮寺清雅じんぐうじきよまさ・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。

椎名美鈴しいなみすず・・・ミステリー同好会メンバー。高校1年。


真淵耕平まぶちこうへい・・・灰畑駐在所勤務。巡査部長。

真淵聖まぶちひじり・・・耕平と実咲の長男。農業高校2年。


北橋勝介きたはししょうすけ・・・フリージャーナリスト。

 

 S県に向かうメンバー達は、すでに一つ目の道の駅は通過していた。


 トイレ休憩をして 名産品ソフトクリームを風晴、水樹、正火斗は買った。聖はただのバニラソフトクリームを買った。

 これについて正式に詳細を話すと、ソフトクリームは北橋が(おご)ってくれた。ただし、昼飯代は出さないと彼は言った。

 3人がソフトクリームを受け取り、北橋は、聖の分は水樹に渡し、彼女の手から渡されるようにした。これ以上揉め事を増やしたくなかったのだろう。

 彼自身はブラックのアイスコーヒーを買った。


 名産品の味噌&醤油ソフトは期待以上に美味しかった。

 水樹は歓喜の声をあげた。


「うまっ! コレいいわね、東京でも売ってくれたらいいのに!」


「オレも初めて食べた。美味い!」


 風晴は隣県なので、また食べにも来れるかもしれない。


「なんて言うか……味噌味、醤油味ちゃんとするのに……キャラメルみたいになってる」


 正火斗は不思議そうだ。水樹が


「兄さんホラ、買って良かったでしょ? (おご)りだし」


 と話しかけた。


「そうだな。S県じゃないと食べられないし。奢りだしな」


 と正火斗はうなずいた。

 会話を聞いていて、北橋はハ──ッと大きくため息をついた。


「君達は、オレにそんなにガメつくなることないでしょ。

 大財閥の御子息御令嬢なんだから。経済格差で言ったら、オレが運転手代もらってもいいところかと思うよ?」


「あんなに強引に連れてきたくせに、ですか?」


 正火斗は流石(さすが)に反論した。


「会社のお金だもの、私達が勝手に自由にって訳にはいかないのよ」


 水樹も言い返す。


「水樹ちゃんはね。でも正火斗くんは14歳から株やってるでしょ? 都心部のITライカム社じゃ、今はもう筆頭株主。実質、君の会社になっているのが もういくつかあるんじゃないの?」


 正火斗は一瞬だが言葉を失った。それでもすぐ建て直した。微笑んで答える。


「母が、そういうことは勉強になると後押しをしてくれるので。でもよくご存知ですね」


「ここ3年は君を追っているようなものだったからね。登下校送迎付きで外出もボディガード有りじゃなければ、もっとはやく捕まえてるよ? 日本であんなにする必要ある? 敵でもいるのかなぁって思っちゃってたよ」


 北橋の言葉を聞いて、風晴は気がついてしまった。

 正火斗にも水樹にも()()()()


(大道英之だ…………!!)


 東京では正火斗はもう戦いを仕掛けてる。おそらくは水樹が事件を起こしてしまった5年前から、彼は義父の会社を狙いだしたんだろう。大道英之側もそれに気づいている。


「母が心配症なもので。海外にも行っていて、自分はついては歩けないから──と」


「へぇ。いいお母さんだね」


 前列の2人は何食わぬ顔で会話をしてるが、風晴は底知れないものを感じた。北橋はどこまで調べ、どこまで知っているのか。

 だが、話しの方向は水樹が大きく変えた。


「そんなことより、さっきの病院の話の続きでしょう!?

 北橋さんのお兄さんの、入院してた時のヤツ。産婦人科病棟に行って、お兄さんに一体そこで何が起こったの?」


 北橋は少し笑った。


「水樹ちゃん、その言い方だと兄貴が何かされたかみたいな表現だけど、大丈夫。兄貴はただ話しを聞かされただけ」


「何なのよ。思わせぶりしてただけなの?」


 水樹の問いかけには、北橋は正火斗に向かって答えた。


「妹さんは根っからの男殺しか何かなの? 登下校送迎付き・ボディガードも、こりゃしていた方がいいのかもね」


「クセが抜けないだけです」


 と正火斗は返した。

 風晴は たまらず聞いた。


「それで? 輪命回病院の産婦人科病棟で、何の話しをされたんですか?」


「不妊治療だよ。当時の最先端の──だったかは、まあ、怪しいところだけど」


 北橋はやっと話しだした。


「どういうこと?」


 水樹は困惑した顔をした。


「不妊治療……つまり妊娠しづらい女性が、妊娠するためにする治療法だ。君達も聞いたことくらいはあるんじゃないか? 人工授精、体外受精、タイミング法あたりは」


 風晴も聞いたことがある。牛には人工授精マニュアルなるものも存在する。世の中には"家畜人工授精師"だっている。


「兄貴にされた話しは、不妊治療で最新式の"卵子提供"の話だったんだ。

 卵子提供は 第三者からの卵子で結合させた受精卵を、母親となる女性の子宮に移植して出産させる方法だ」


「ええっと、自分が体外受精の受け皿になって、産まれた子供は自分の子供として育てられるってことですか?」


 風晴が確認した。


「あってるよ。母親は出産はするが、遺伝子的なつながりは父親側としかない。卵子の老化や問題のある女性の選択肢。あとは同性婚カップルなんかが望むこともある」


「それって卵子を第三者から購入するってことよね? 不正な人身売買には該当しないの?」


 水樹は眉間に(しわ)を寄せて尋ねた。

 アイスを食べ終えた聖は、隣りであくびをしだした。

 水樹には正火斗が答えた。


「該当しないと思うな。──病院を通じて治療として行われていれば。

 2020年に日本には生殖補助医療法がやっと成立したけれど、それもまだまだ問題は多いと指摘されているんだ。2013年なら、もっと際どい医療行為が行われていても、違法の立証は難しい。

 何よりも水樹、医者も患者も生命(いのち)を産み出したいと願って探る手段なんだ。罰するとか罰しないとかの問題じゃない。だがある程度の規則(ルール)は必要ってことさ」


「そう、それだよ」


 運転している北橋が正火斗を指差しながら、同意した。

 少し車内が静かになった。そのあと質問したのは風晴だった。


「つまり、北橋さんのお兄さん──田所高文さんは、輪命回病院産婦人科で 規定外のような"卵子提供"を、勧められたってことですか?」


「そうそう。読みがいいよね、やっぱり一流高校の生徒は」


 と北橋が勘違いしていたので、風晴は慌てて訂正した。


「北橋さん、オレと真淵はA県の農業高校で、凰翔院(おうしょういん)学園じゃないんです」


「ああ、そうなんだ。じゃあ、君が桜田? 桜田風晴くん? 桜田孝臣さんの甥っ子の?」


「はい」


 風晴は答えた。北橋は


「オレ叔父さんと話したよ。面白い人だよね?」


 と続けた。水樹は見かねて話しの方向を戻す。


「はいはい。"卵子提供"は、具体的にどんな内容だったんですか? 北橋さん、話そらしてばっかりですよ。兄さんに調べさせる気持ち本当にあります?」


 その言葉に北橋は笑った。


「勿論。"追い求めてきた相棒"だからね。隣りに座ってて気が(たかぶ)っているのかも」


「やめてくださいよ」


 正火斗は渋顔で言った。その正火斗を見て北橋はさらに笑ったが、すぐに言葉を述べた。


「そら、見えてきた。あのマンションだ。輪命回病院からの"卵子提供"についての話は、()()から聞こう。オレよりよく知ってる」


()()って?」


 水樹が聞いた。


「旧姓 庄司(ゆい)。今は山岸結。彼女は()()()()()結でもあった」


 北橋はレクサスを、マンションの外来者用駐車場に停めた。マンションの中階あたりを見上げる。


「兄貴の()嫁さんだよ」







今回、名産品に味噌&醤油ソフトなるものが登場しましたが、フィクションです。S県は空想上の県になります。万が一どこかの県で存在してましたら、申し訳ありませんでした。教えて頂ければ改訂を考えます。でも多分美味しいはず。醤油ソフトクリームは人生で食べたことあります。美味しいんですよね。

読んで頂きましてありがとうございます。引き続き宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
味噌ソフトクリームは、心当たりがあります。 醤油ソフトクリームはないだろ、と思っていたら、実食済み、ですと……!? めちゃくちゃ気になります。今度機会があったら食べたい~!
ああ、その醤油ソフトは美味しいと何かの番組で見たかも? 食べたことはないけど。 のらりくらりな北橋は何か信用ならないなあ。 ただ彼も学生たちを信じ切れないのかも知れないし……………。
名産品といいつつ、ただのソフトクリームはあるあるだなぁと、サ行の県を思い浮かべて検討していたら、まさかの空想だった……。 (´;ω;`) というか最近の高校生は、不妊治療のことを男女間で堂々と議論で…
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