28話 真実
「人間を使って代替を用意しようとした………だと?」
シドの顔付きは厳しいものになった。
当然だ。自分の国民を勝手に使ってこの島の心臓に使おうとしたのだから。
「はい。それしか方法は残されていないと感じたので。それとここ数年で始まった土地の劣化や水質の劣化も気付いておられですか?」
「そういえばそれらの質は落ちていたな」
アマレウスがそう答える。
俺は監獄にいたから気付かなかったがそうらしい。
「あれはドラゴンの力が無くなってきたことによって起きた事態です。ドラゴンも水や土の浄化に回す力も無くなってきたのでしょう」
ルクスブルクがそう言った瞬間ガクンと足元が揺れた。
「地震か………?」
「もうそろそろ本気でまずいかもしれませんねシド王。ドラゴンの力はもうありませんよ?何処かの誰かが乱用したせいで」
ニヤッとまた口元を歪めるルクスブルク。
「………何をした」
鋭い視線を向けるシド。
「私は引き算しか用意されていないことに気付いてからは自分のために生きることを誓いました。桜花病と呼ばれる患者を集め実験をしました。ドラゴンの代わりになる存在を作り上げる実験。しかし大多数は失敗して死んでしまうか黒爪になりました」
「ゲスが………」
「ゲス?こんなにも国のために尽力した私がゲスですか?誰もやらないからこそやったのでしょう?この私が」
ふははははと声に出して笑うルクスブルク。
確かに誰かがやらなくてはならない事だったのかもしれないが。
「まぁ、他には我が妻を蘇らそうともしましたがね」
「蘇生だと?」
「はい。妻は何年も前に病気で亡くなりました。しかしドラゴンの力なら蘇生できるかもしれないと考えた私はドラゴンの力を乱用しました。その結果かなりの力を使ってしまいましたが」
その言葉を聞いて思ったことがあるので口を挟むことにした。
「強大な力には代償が必要不可欠だろう?それは魔法だってそうだ」
その乱用にも何か代償があったのではないか、そう聞くとせせら笑うルクスブルク。
嫌な予感がする。
「えぇ。ありましたよ。アルゲイスト家のご子息よ。その実験で使ったドラゴンの力があれば何十年も清き水と土が恵まれたことでしょう」
「………お前………まさか」
「引き算しかない………そう言ったでしょう?引いたのですよ。━━━━3区の1部を」
考える前に体が動いた。
「貴様!!!!」
「ふは、ふはははは失ったものは戻ってはきませんよ。アルゲイストの子息よ」
改めて言われては自分を抑えきれなかった。
鉄格子を魔法で壊して中に入るとルクスブルクの胸ぐらを掴む。
「俺はお前のせいでユミナ以外全部失った」
「だが結果貴方は私を下した英雄になれたではありませんか」
「………ふざけるなよ」
「やめろディラン」
シドに腕を掴まれて外まで引きずり出されようとしたがその前に1発ぶん殴っておいた。
「俺にお前の気持ちは分からん。だが落ち着け。このクズは直ぐに相応の罰を与えるのだから」
「………」
そう言われて黙り込むと壁に背を預けた。
とりあえずもう少し話を聞こう。
「あの震災で監獄が出来るのは予想外でした。勿論端から見捨てるつもりだったのでマトモな支援は通しませんでした」
クククと笑うルクスブルク。
「やはりあなただったか。他の貴族が何度も支援をしようとしていたのに日に日に監獄の環境が悪くなったのは」
「えぇ、そうですよ。しかしこのまま私の制御下を離れたリーヴァスは直に監獄も全て含めて地に落ちることでしょう。もう環境もくそもない」
だからかこいつがこんなに余裕でいられるのは。
「俺はこの島を落とすつもりは無い。足掻き抜くつもりだ」
「勇ましいですなぁアルゲイスト?」
「落ちるのはお前だけだ」
ただひたすらに睨むが奴に聞いている様子は見えない。
「それから桜花病について話せ」
シドがそう問いつめる。
「桜花病に関しては私も詳しいことは分かりませんでした。ただ言えることは黒爪になる可能性があるということだけです。勿論噂はデマです。効率よく人を集めるために桜花病を利用しただけですから。それにしても宮廷医療師が言ったといえばみんな騙されるのですから本当に楽でしたよ」
相変わらずクズという言葉以外見つからない男だがそれでもシドは問いかける。
「桜花病患者以外は黒爪にならないのか?」
頷くルクスブルク。
最低なヤツだ。桜花病患者以外にも手を出していたのだなやはり。
「私から話せることはこれが全てです。どうか足掻いてみせてください」
俺達を嘲笑うように見てくる男。
「当たり前だ。落ちるのはお前だけだ」
最後にそう告げて俺は先にこの地下牢を出ることにした。
※
「レイ、エル」
俺は2人を今日も部屋に呼んだ。
「どうしたのですか?」
「どうしたの?」
ふたりの質問に答えることにする。
「桜花病は感染しない。それは確定した」
「良かったです」
そう言って泣きながら抱きついてきたエル。
「良かったよ………」
レイも同じふうに抱きついてきた。
2人を抱きしめる。
今までこんなこともあまり満足にしてやれなかったな。
「私………ディランと結婚したいです」
「私も」
その言葉を聞いてはっとする。
結婚か………。
「別にいいよ。ティナがうるさいだろうが俺が黙らせよう」
「えへへ、良かったです」
「結婚してくれるの?」
エルは涙を流して喜びレイは確認を取ってくる。
「勿論だよ」
そう答えて俺は2人を抱き締めたまま寝転ぶことにした。
「き、緊張します………」
「私も」
「力抜けよ」
そう言って笑うと寝ることにする。
明日からもやる事が多いのだから。




