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19話 やはり狂人だった

「一応聞いておくけれどこんなところで何をしていた?出来ればいい返事を貰いたいんだがね」


 俺のことを疑っていることは丸分かりだ。

 威圧するようにその腰に提げた剣の鍔を親指で持ち上げてカチカチと音を鳴らしている。

 そしてローエンは最後の1段を降り終わると俺にそう問いかけてきた。


「昼間に来た時にその入口を見つけてね。どうなってるか見に来たんだよ」

「何をしに?ここに宝探しにでもきたのかい?」


 皮肉げに笑うローエン。

 俺の嘘などお見通しだと言わんばかりだ。

 もっとも誤魔化す気は変わらないが。


「そうだよ。こんなところに隠れた地下室。お宝があると思うのは不思議なことかい?何せ俺はトレジャーハンターなのだから」

「で、宝物は見つかったかな?」

「いや、見つからないな。ガラクタばかりさ」


 黒爪の死体を指さしてそう答えた。


「それはなんだと思う?」

「見たところ黒爪の死体だな」


 何を分かり切ったことを聞いているのやら。

 理解不能だな。


「君の活躍は知っている。だがしかし黒爪を保護しているのは捨て置けない」

「何の話だ?」


 待て。意味が分からない。

 今までと同じく何も知らない体で応えようと思ったがそれだけは素の反応で問題なかった。

 黒爪の保護?どういうことだ。


「もう気づいているのでは無いのか?桜付きは生きていてはいけないと」

「………どういうことだ?」

「桜付きは黒爪の卵だよ」


 そう言うとローエンは部下に指示を出し俺たちに見えるように何かを自分の前に出した。

 中年の男性だ。

 薄暗かったがその手の甲に桜の模様が見えた。

 桜持ちか。


「そのおっさんを連れてくるのはここでなく施設だろ?」

「まぁ見たまえよ」


 ローエンは男性に目をやった。

 しかし逆に不安そうに男性はローエンに目をやる。


「桜狩りさん。俺は何もしていない。施設に連れていってくれるんじゃないのか?」

「連れてきたでは無いですか」


 場違いな違和感のある笑顔を受かべたローエン。


「━━━━ここがあなたの治療施設だ」


 ザン!

 ローエンが牙をむく。

 彼は男の胸に後ろから剣を突き刺した。


「………そんな………」


 パタリと胸から血を流してそこに倒れた男。

 余りにも突然過ぎて何が起きたのかを理解できない。

 俺達が唖然としている一方で笑い始めるローエン。


「はははは。これが!桜花病の治療法だ!桜花病は死ななくては治らない!これが正しい治療だ!見たか?!ディラン?!これが治療だ」


 顔を右手で覆い笑うローエン。

 その瞳は俺だけを見ていた。


「つまり施設では殺しが行われているということか?」

「あぁそうだよ。こんな風にね。桜花病は治さなくてはならないからね」

「治さなくちゃならないのはあんたの頭じゃないのか」

「それは君だろう?桜付きを匿っているのは知っているよ。丁度いい。そのエルフを引き渡してもらおうか」


 そう言い俺の後ろで震えているエルフに右手を差し出すローエン。


「悪い風にはしない。きちんと渡してくれるのなら最後まで可愛がってあげるさ」

「ディラン………」


 それを聞いて俺の服の裾を掴むエル。

 どうやらエルが桜付きであることは分かっているらしい。もうごまかせないか。

 だが渡せる訳が無い。


「あんた頭おかしいんじゃないのか?今の見せられてはいどうぞと渡すと思うのか?それよりエルが桜付き?何を馬鹿な」


 ローエンは何も見ていないはずなのになぜそう判断したのかは気になる。

 単純に鎌をかけてきた可能性というのはあるがティナでもなくエルを名指ししたことを考えればその可能性は低そうだ。


「これを見たまえよ」


 そう言うと鉱石を取りだしたローエン。

 別になんの変哲もないただの石に見えるが。

 

「この鉱石がそのエルフを桜付きだとそう教えてくれる。そう、最初に出会った時から彼女は私に脅えていた。それは自身が桜付きだからではないかね?」


 なるほどな。

 ただの直感というわけか。

 なら話し合いは最早無用。


 何故ならこいつは直感は信じるタイプなのだろう。

 それに常人とは思考回路が違う。

 今回ばかりはその直感はドンピシャだが。


「お前たち早くエルフを丁重に保護するのだ!」


 ローエンが部下にそう告げた。


「しかしローエン隊長証拠もない一般人を捕らえるのは………」


 なるほど。やはりローエンだけが事実に辿り着いているらしい。


「私の命令が聞けぬか?無能」


 ローエンが返事を聞く前に疑問を持った部下を刺し殺す。

 それを見て騒然とするこの空間。


「ディラン………助けてください………」


 エルの小声。

 言われなくてもそうするつもりだ。

 それにエルなしでこの先には進めないだろう。ここで失う訳にはいかない。


「歯向かうなよクズ共。我々の目的はただ桜付きの保護なのだ!迅速に保護せよ!」

「「「は、はい!」」」


 部下全員が恐れたのか俺に向かって剣を抜いた。

 それを見てから右手を前に突きだす。


「溶けよ」


 それぞれの刀身のある位置に高温の火を生み出す。

 先ずは敵の無力化だ。


「な、何だこれ!」

「剣が溶けた?!」

「た、隊長!」


 どよめく隊員達。


「恐れるな。捕らえよと言っただろう?」


 指示を仰ぐような言葉を受けたローエンは隊員達を皆殺しにした。


「………そんな………」


 パタリと倒れる隊員達の声は虚しく響いた。

 こいつ………やっぱりイカれてやがる。


「さぁ、無能な部下が恥ずかしいところを見せたね。私が直々に丁重に保護しよう」


 今、ローエンが剣を抜いた。

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