日本から
日本からは、祖母、外務省の人もイギリスに到着、現地、総領事館の人と合流、そして私の病室へと来た。
(愛・・大丈夫かい? 本当に無事で良かったよ・・)
祖母の心配した表情を見るとほんとに切なくなってくる。
(こんなんなっちゃった・・・ハハハ・・ ^_^; )
(笑いごとじゃないよ。お祖母ちゃんもしばらく愛に付き添うからね。)
(ありがとう。でも、お婆ちゃんどこに泊まるの?)
(そこは心配しなくていいからね。私たちが手配したホテルにお祖母ちゃんはしばらく滞在することになるから。)
外務省の人が祖母の宿泊先を用意してくれたようで、私も安心した。
(そこで、少し、事件当時のことを詳しく聞きたいのだけど、大丈夫かい?)
(はい。大丈夫です。)
日本総領事館、外務省の人と聴取が始まった。
今回の、イギリス連続爆破テロは、日本だけでなく世界でも大きなニュースとなり注目を浴びている。現地の新聞やTVでも毎日、報道されており日本人の被害者は今のところ私一人だけのようで、報道関係の人たちも病院を取り囲み取材をしていた。
聴取は一時間ほどで終え、また後日、あるようで今日は祖母と一緒に病室で過ごすといいと祖母が横になるスペースも病院側に手配してくれた。
(お祖母ちゃんも愛の側にいるから、しばらく何も考えない方がいいよ。)
(うん。ありがとう。でも、そんなに長くこちらには居れないでしょ?どれくらい入院するかもまだ分からないし・・・)
(愛がちゃんと治るまでいるから、大丈夫だよ。お祖母ちゃんの家は隣や近所の人にも頼んで来たから。)
高齢の祖母にこんなにも迷惑をかけてしまって本当に申し訳ない・・・
(愛?さぁ、用意して来たわよ。ちょっと、ここ辺りにスペースを作るから。)
ミアと他の看護師の人たちが私のベットの横に祖母が寝れる簡易的なソファーを用意してくれた。
(これで、お祖母ちゃんとも一緒に過ごせるからね。)
(ミア、ありがとう。)
(初めまして。ミアです。愛の看護を担当します。よろしくお願いします。)
(こちらこそ。愛をよろしくお願いします。)
( ゜д゜ )・・・・
(ミア、日本語、話せるの???)
(少しだけよ。笑。 そんなに驚かないで。)
(そりゃ、驚くわよ。まさか、日本語が話せるなんて思ってもいなかったから。)
ミアが日本語を話せるなら、祖母も安心して過ごすことが出来るだろう。ミアも祖母に歓心があるのか親しげに話している。 ところで私の隣にいたお姉さんはどうなったのだろう?
(私の隣に座っていた、お姉さんはどこにいるかわかる?)
(正確な情報がまだこちらにも届いていないけど、愛が乗ってたバスは、2階に乗車していた人はほとんど助かっていないの。だけど1階に乗ってた人たちは重症者が多いけどまだ死亡者の報告は受けていないから、恐らく助かっていると思うわよ。)
(だけど、私が見たときには地面に席ごと落ちていて血だらけになってたの)
(愛、あまり悪く考えないことよ。助かってるんだ、と思って会えるときを待ったほうがいい。)
(愛?ミアのいうとおりだよ。そのお姉さんも絶対に助かってる。そう信じなきゃ。だって愛だって助かってるんだから。)
祖母とミアの言うとおりかもしれない。お姉さんは助かってるんだ。そう思わないでどうすんだ。
祖母は一旦、宿泊先の戻り、ミアも他の病室へと移動した。体が動かないなんてほんとにしんどいがこれも何かの試練のようで、逆に奮い立たせるものも気持ちに芽生えてきた。
少し、ウトウトして眠くなってきた・・・・
ん? 何か頬に触れるものが?
ボヤ~んとしてよく見えないが、髪の長い女の人が私の頬に手を触れていた。
誰? 手が動けば目をこすり見えるのだけど、これではどうにもならない。
( 愛・・・ )
へ?誰だ? 私を知っている?
(あ、あの・・・)
思い切って問いかけてみた。とそのとき、
ハッと驚くように頬にあてていた手を引き、慌てるように病室を出ていった。
今の女の人は一体誰なんだ? あのお姉さんではないことだけは確かだ。私を(愛)と確かに言った。それも日本語で。ミアなら制服を着ているし、私服で私の病室にくるわけがない。
え? まさか?
まさか、瞳がイギリスに? いや、そんなはずはない。いくら日本でも報道されてるからといって現地まできて、ましてや入院している病院までわかるはずがない。
しかし、あの髪の長い女の人、私が渡米するときに会った瞳にとてもよく似ている。
そうだ!私に面会するには記名がいる。この病室に来るには入室記録として記名が必要なのだ。もし、今の女性が瞳なら記載があるはずだ。 ミア、早く来てくれ・・・
入室記録に(hitomi shingyouzi)と名前があるはずだ。