26.目標は空気
入学式も終わり学園生活がスタートしていた。
この学園では貴族と難関試験に合格した少人数の平民が同じ学園で学んでいる…が、流石に貴族は平民と一緒にされるのは嫌な者が多いので分かれている。平民の方も平民の方で貴族と一緒は緊張や貴族からの虐めやらがあるかもしれないので分かれることは良い考えだと思う。
「お嬢様〜なぜ隠れているんですか?」
木の後ろに隠れている私を見て不思議そうにロキが言う。というかヤメノ感が残っているの気になるけどそれどころじゃない。
「しっ!ロキ貴方も隠れなさい!いつ何時危険が迫っているか分からないのだから!」
「え?どうゆうことです?お嬢様、狙われているんですか?」
「狙われてなんかないわ!」
なるべく会いたくないのよ!ヒロインと攻略対象に。前の私とは全然違うけど勝手に死ぬ方向にいかされても困るし、それなら極力距離を置いて私が関わらずに、そのまんまヒロインが勝手に頑張って前世攻略してたルイとかルイとか…攻略対象を手に入れてくれればいいのよ!私は攻略対象、全員覚えてるのだからね!私に刃を向けたヤツらを私はまだ覚えてるんだから攻略対象を避ければ、ヒロインと会うことはないの!ないのよ!そう私は頭が良い!頭がいいのよホホホホといつの間にか高らかに笑っていた。
「何で木の後ろで笑っているの?」
「えぇそれは!私が……ぁ…」
「私が?」
そこにはニコニコしながらルイと、しかめた顔のサファイアが立っていた。ルイとサファイアは双子だがこう育つと似ているのだが、かなり雰囲気の変わった2人になる。
ルイは甘い王子でサファイアは冷たい王子という感じである。冷たいというか無愛想というかポーカーフェイスという感じであるのだが、ルイと同様に何気なく優しい。彼と仲良くならない気づけなかったと思う。前世は全然関わりなかったんだけどな〜まぁ私も変わったから流れが少し変わったのだと思う。だって私には友人が4人もいる。4人もだ。前世は1人しかいなかったのに、今はルイにサファイア、リラにマークス…4人もいる。アルナとロキは私の家族だから友人には入らない。ロキは中間って感じがするけどやっぱりなんだかんだ家族の方が納得できるんだよな。かなり私的には成長をしたと思う。まぁそのうちの2人が攻略対象というのはちょっと嫌だが…しょうがない。今となっては大切な友人たちだもの。大切にしましょう。
「私が…どうしたんだ?」
サファイアまで聞いてきた。双子の王子と執事は私をジト目で見てくる。
「いえ!その友人を作りたいと思いまして!それで少し視察を…」
「そんなことか」と何故かホッとした様子の3人に違和感を感じる。何故…ホッとされないといけないのかしら?そして、双子の王子らは「頑張れ」と言って離れて行った。
「お嬢様、ご友人が欲しかったのですね」
「えぇ!欲しかったのよ!だからほっといて頂戴」
そう。今は、ほっといて欲しいのだ。本番はもう始まっているのだ。入学式が終わってから数日たった頃、ヒロインと攻略対象は出会う…そう出会いイベントが開催されヒロインは、ほとんどの攻略対象と出会いそして、前世私が死んだ乙女ゲームがはじまる。私の今回の計画は邪魔をすることなく影でひっそりと過ごすつもりだ。そう、空気のようにいるかいないかどうかなど、わからないように過ごそうと思っていたのだが…入学式早々にその計画は潰れた。まず『第1王子の婚約者』という点で無理だった。あまり表に出ないようにしていた私は、それはそれは珍しいらしく。貴族の子息や令嬢の者たちに絡まれて、ここ数日はゆっくりする時間を探すのに一苦労だ。隠れているのは、その理由も入っている。とりあえず貴族の子息、令嬢にはきちんとした淑女で接していたから悪いようには見えなかっただろう。だが令嬢たちは令嬢たちでひがみ、嫌味で大変だった。可愛いなりでニコニコしながら毒を混ぜてくるなんて、内心は引き気味の笑いばかりだった。
そして、疲れた私は一時は学園の人を避けながらの生活を過ごすことに決めたのだ。友人も作りたいしね。だけど今は、それどころじゃないし……そう、そろそろなのよね。
私の出番のイベントは。
本当は行きたくないが……この目で本人を見ないと私の気が済まないのでバレないように忍者のつもりで視察に行ったのであった。
*☼*―――――*☼*―――――
私の出番のイベントはひとつだけなのだ。ルビーを、攻略するルートだけ。多分だがそれ以外の人と付き合うのであれば私は用無しキャラだった。何故ルビーを選んだんだヒロインとキレそうになるが、ルビーがタイプだったんだろう。まぁカッコイイから分かるが。
ルビー出会いイベントは、中庭で行われる。前世の記憶から言うとヒロインがルビーにぶつかり、そのままヒロインは謝り去るがその場にヒロインが大事なハンカチを落とし、それをルビーが拾うというイベントだった。経緯は前世のルイに聞いた。ちなみに私も、そのイベントにしっかり参加をした。ゲームの私は何をしたかは分からないが…私は、ルイから聞きそのハンカチを受け取りヒロインのところに行って渡し返したという感じである。その時に少し注意を促しをしたが何もしていない。だがヒロインの顔には涙がつたっていて周りの居たもの達は私が彼女を虐めていたように見えたらしい。もうそこから始まっていたんだろうな…。私が行けば始まるかもしれない…けれど行かなければならないのだ。この目でヒロイン…アリフィアを確認しないと私がまた勝手に死ぬ方向にいかれても困るから。
「お嬢様、先程からおかしいですよ」
中庭が綺麗に見える窓のところで潜んでいたら隣にロキがいた。
「ごめんなさい。集中しすぎて気づかなかった…」
「だろうと思いましたよ」
と、よいしょと言って私の隣に座り私の見ていた方向を眺めていた。
「お嬢様質問していいですか?」
「えぇどうぞ」
「なんでおかしなことをやってるんですか?」
「んーそれは言えないわ。あ!そうだわ!思ってたことがあったの」
「え、答えてくれないんですか…はぁ……なんですか」
「喋り方を友人のようにしてくれない?貴方だけ喋り方が違うのも嫌だわ」
「いやいや、それは執事ですから無理です。わがまま言わないでください」
「じゃあ命令よ、その喋り方やめて」
「わがままだな〜じゃ2人の時だけならやめる」
と困ったように笑いながら私のわがままを了承してくれた。
「ありがとう!ロキ」
「いえいえ。どういたしまして…あ」
「?」とロキの視線を向けている方を見るとルイとアリフィアの出会いイベントが終わったところだった。み、見逃したあぁ〜!!!アリフィア立ち去るの早すぎる!髪の毛しか見られなかった!!
「なんかルビー様拾ってるな。行こう、ダリア」
「えぇ!?行くの?!」
「あぁ行こう」
とロキは私を置いてルビーのところに走り去って行った。
「どうしましたか?王子」
「やぁロキ。リーアは?」
「後ろに…」
「ごきげんよう。ルイどうしましたか?」
淑女の礼をしニコニコと笑ってみせる。
ロキが出るなら私も行かなきゃならないのよ!!後で叱ろう。アルナにも叱ってもらおう…はぁぁ気をつけようとしたのになんでイベント参加だわ!ロキを連れてくるんじゃなかった!!!もうしょうがないわ…今度からロキも要注意人物よ!気をつけましょう。
「先程ぶりだね。今、人とぶつかってね。これ落として行っちゃったんだ」
とルイはハンカチを差し出してくる。ひゃぁぁやめてハンカチを私に見せないでぇぇえ
「それは大変ですね」
とロキが言った。ナイスロキ!ナイスよ!
「あぁ困ったよ」
とりあえず気を取り直してルイと話す。
「そうですわね、それは困りましたね…相手の方も困ってらっしゃるかもしれませんわね。届けてきたらどうでしょうか?」
「あぁそうだね。後を追いかけて届けてくるよ。ありがとう」
「いえいえ。全然ですわ」
と笑顔で送ったが隣で笑っているロキに腹が立ったので彼の足をヒールで踏んであげた。
*☼*―――――*☼*―――――
「まだ痛いんだけど」
「あら可哀想に」
ロキは涙目になりながら足をさすっている。それはそうだ。私の怒りをヒールに込めたのだから。今回は前世と同じにならないよう回避出来たが次はどうか分からない。回避出来たと言ってもこれがどう転がるかも分からないのだ。不安でしかない。
「…やっぱり見に行くんじゃなかったわ」
この行動も控えなきゃいけないわね。
「はぁダリアが何考えてんのかわかんないけどまぁ俺も連れてってよね。女性が寄ってきて大変なんだから」
「私は貴方の予防線か…」
「まぁまぁ。姉さんやご主人様にも言われてる見張りもあるからね、しっかり仕事はしてるよ」
予防線か…前世もルイの予防線だったが多分、今も予防線だ。なんでロキの予防線を今回してるが分からないが本当に先が分からなすぎる。不安なんてないと思ってたけど今になって不安だわ。
「眉間シワよってる。おばさんになったら大変だぞ」
と隣でまた笑っている。先程の痛みは無くなったみたいだ。
「ロキは悩むことなさそう」
はっとして失礼なことを言ってしまったと思いロキを見ると笑っていた。
「まぁ悩むことはあまりないな〜困ることはあるけどなんとかなるって思ってるし」
だからあんまりダリアも気にするな。と相談したい時はしてほしい。と励まされてしまった。
「ふふっそうね!私の悩みもきっと何とかなるから大丈夫だわ!」
と言ったら「そうだ。そうだ」と、とても満足そうな顔をしてニヒヒとロキは笑った。
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「あの、これ落としましたよ」
と笑顔を作って先程ぶつかった金髪の彼女にハンカチを差し出す。彼女は僕の顔を見てぼーっとしていた。
「あの?」
「…あぁ!すみません。ありがとうございます!」
「いえいえ。先程はぶつかってしまい申し訳ありません。お怪我はありませんか?」
「はい!全然大丈夫です!えっとお怪我はありませんか?私のようなものに……本当に申し訳ありません」
頬を赤く染め涙目になりながらシュンとする姿はとても可愛らしく他の男には見えるだろう。だが、やめてほしい。何だか僕が虐めてるみたいじゃないか…。とりあえず変な噂が経つ前にこの場を去ろう。
「いえいえ。大丈夫です。お気になさらずに。それでは」
「あ、ありがとうございます!私…アリフィアと申します」
急に自己紹介をされたが無視は出来ないので一応、自己紹介をする。
「私はルビー・ノルマージュと申します」
「えぇ!!王子様じゃないですか!私なんてことを…」と彼女は今にも泣きだしそうになってしまった。わぁやめてくれ。なんで泣きそうになるんだ。とりあえず溢れてきた涙を僕のハンカチを渡し涙を拭くように言った。そしたら泣きだした。彼女が落ち着くまで離れるにはいかないので早く離れたかったが傍にいた。変な噂がたったらどうしてくれるのだろうか…はぁ人通りがなかったからよかったが……リーアには知られたくないな……。彼女が知ったらどう思うのだろうとは知りたいと思うけど彼女に負担を掛けてしまうことは嫌だな。と青い空を見ながら思っていると彼女がだいぶ落ち着いてきた。
「そろそろ、私は行きます」
彼女に告げその場を去った。あ、ハンカチとも思ったが特に大事なハンカチではなかったから良いだろう。歩いていたら窓に座ってるサファイアを見つけた。落ちたらどうするんだ…と思ったが何か見ているらしい。何となく予想はつくが聞いてみる。
「…何を見てるの?」
「!!別に少し外を」
「そっか」とサファイアの視線を追うと、まぁ当然だと思ったがそこにはリーアとロキがいた。サファイアは慌てたように「仲が良いと思ったから見ていた」と言っているが、それでもそんな目では…愛しい者見るような目では見ないだろう…と思ったが言うのをやめた。
また自覚してもらっても困る。もう少しだけ。もう少しだけ気づかないでいて欲しい。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱
「なぁんで来なかったの?あの場面はダリアが来るはずだったのに?なんでルビーが来たのよ」
はぁ今回は期待外れ会えると思ったのに。
「まぁ次があるから次は仲良くしましょうね」
と呟き彼女は笑っているダリアを横目で見て通りすぎて行った。




