24.甘いわ!甘すぎるわ!!
失恋を乗り越え、変わらない当たり前の日常を過ごし何年も経った。
あれからサファとは会ってない。
ルイとは頻繁ではないが度々、会うように時間を作ってくれるので会いに行っている。ただルイと会う時に変わったことは、何故かこれも度々ルイが無理やりサファイアを連れてくることだ。サファイアはかなり嫌がっているけど、話すと落ち着くので、とてもいい友人だと思う。
私たちは来年にはゲームの舞台…学園に入る。あの私が死ぬ場となった学園に。
なんとなくだが…大丈夫だと思う。なんとなくだが。
「お嬢様、ぼーっとしないでください」
髪の毛を結いながら執事服のロキが言う。さすがにもう侍女服が似合わなくなったので執事服を着ることになったロキは、もう他の侍女にモテモテで仕事ができないくらいで、アルナが頭を抱えていた。
そしてソロン兄さんは一足先に学園に行ってしまった。我が学園は全寮制なので兄に会えるのは少なくなった。正直、寂しい。でも長期休みは必ず会いに帰ってきてくれるので嬉しい。
そして数少なく…うぅ数少ない友人リラはと言うと…これは……今から会いに行くから言わなくてもいいわね。
「お嬢様!できました〜!」
「うわぁぁあ!!!何してるのぉぉお!!?」
ロキがセットしてくれた髪はソフトクリームみたいな髪になってる!!!
「笑わないで戻しなさい」
お腹を抱えて笑っているロキをアルナが注意する。
「了解しました〜姉さん」
そう変わったことと言えばロキがアルナのことを姉さんという事だ。そして姉さんと言われたアルナは満更でもなさそうな顔をしている。私も姉さんって呼ぼうかしら?
「ね…姉さん?」
あ………すごい顔してる。ロキの時はすごい嬉しそうな顔してるのに…え……ロキまでちょ、口まで抑えて驚愕しなくていいから髪直して
「でっできました〜!さっさ!行きましょお嬢様」
「そっそうね!行きましょう!ありがとう2人とも」
「お嬢様…その「姉さん」と言うのはお嬢様が言うのは…違う気がします。その…嬉しかったのですが、立場が違いますので」
ふわわぁあ!照れてる。アルナが照れてる。
言ってよかった!言ってよかったわ!
「それじゃあ行きましょう〜!」
馬車に乗りリラの家、ムインズ家に向かった。
「ダリー!待ってたわ〜」
「久しぶり!リラ」
リラは、すごく可愛い元々可愛いのにもっと可愛くなってる。まぁ可愛くなってい理由が
「お久しぶり、ダリア」
こいつなんだけど!おーっといけない淑女に戻らなければ。
「えぇお久しぶりですね、マークス様」
と淑女の礼をする。マークスはリラのそう!好きな人だ!!
そして、私を死に追いやった1人…つまり攻略対象だ。まさかリラの幼なじみがマークスだったとは。彼、マークス・シメルアは剣が強く騎士希望の青年だ。髪は短髪で茶髪。とても好青年の彼だ。そして、彼女には一途。いい所取りである。そんな彼も学園でヒロインを好きになりヒロインに選ばれなかったらヒロインの幸せを願ういい男だ。是非ともこのいい子のリラとくっついてほしい。
リラの幼なじみじゃなかったら仲良くなんてしたくないが、リラの幸せそうな顔を見ると私も幸せになるので彼とリラが上手くいくよう私が恋のキューピットになるつもりだ。
「今日もお相手願えますか?」
「あぁもちろん。手加減はしないぞ」
今日は予定があって来たのだ。
お相手願えますか?なんて聞いたら踊りの相手だと周りが思うだろうが残念ハズレ。
そう。今日は恋のキューピット兼、剣の稽古である。女に剣を向けるなんてと最初言っていた彼を無理やり稽古に付き合わせ相手になってもらっている。彼の性格上、適当にあしらうということもしないので、きちんとした稽古をすることができるのだ。これも学園に行った時のためだ。前世、私は剣で殺された。あの時も剣の稽古は一応、習ってはいたが…剣とか持ってなかったので太刀打ちができなかった。今回は殺されそうになっても自分で身を守れるようにしなければいけないということで騎士希望の彼に教えを乞うているところだ。リラは、この時間はお茶を飲んで私たちの稽古を見ている感じだ。
リラも参加しようとしたところ、マークスに止められたらしい。「リラは女なのだから俺や好いた男に守ってもらえ」と。
まぁ私はと言うとマークスに最初は言われてはいたが、無視をし続け稽古を受けていたら諦めたらしい。でもこの頃は結構上達をしてきて彼を負かすことが多くなってきている。
ふふふ私は強くなっているのだ!!
「結構強くなったな」
「えぇ!師匠のおかげですわ!」
「師匠というのはやめてくれ」
「師匠は1番強いのですから!師匠でしょう」
「?俺は同年代では2番目だ」
「え?師匠の上にも人が?!!」
マークスの上に1人いるのか!!そんな彼より剣が上手い人がいるなんて!これは、マークス師匠を負かしまくったら、その人のところに言って弟子入りをしなければ。
「2人、ばっかりずるい」
頬を膨らませたリラがマークスと私の間に座った。可愛いな〜にやけるわ〜。
「私だって動きたい」
そっちか…そっちなのか。
「それなら休憩をして外で歩きましょう?」
「あぁそれがいい、歩こう」
お茶を飲み、少し話をした。
少し気づいたことがある。リラとマークス両想いなのではと。だって2人話したあと目が合って照れるのよ。片方は「あぁそう言えば」って私に話しかけ、もう片方はそっぽ向いて照れるのよ。甘いわ!この場の空気が甘いわ!
ていうかキューピット必要ないじゃない…。
私、キューピットなりたかったのになれないじゃない。
「そろそろ歩こ!」とリラに連れられて、マークスも歩くと思ったら彼は「俺は少し用事がある」と言って帰って行った。
「なんか幸せそうね」
ニヤニヤしながらリラにそう言うと赤面な顔をしながら
「幸せと言えば幸せね。でもねダリーのおかげでマークスと話すことも増えたの」
「え?」
「ダリーが変わった令嬢だから面白いんですって稽古をしてくれって来た令嬢初めてだったからって言ってたよ」
「そ…そう」
「ダリーのおかげ、ありがとう」と言われた。あれ?私、しっかりキューピットの仕事してるんじゃない?キューピットなんじゃない?
「よかったわ、リラが幸せで」
「うん。私もダリーの幸せを願ってるね!」
と手をがっしり握られた。
そうね、私も幸せになるのよ。今世では必ず幸せになってやるんだから。待ってなさい、ヒロイン。
私は前世のようにはいかないわ。
――私は必ず幸せを掴むの。
⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰ ⋱⋰
『ふふっあと少しね』
『あと少しで出会えるのね?』
『あぁ、楽しみ!私の目の前でゲームが始まるのよ』
と彼女は踊りながら鈴が鳴るような可愛い声で笑うのだ。




