15.僕たちは街に出掛ける②
僕の言葉により、少女の眉間にシワがよってしまった。
機嫌を損ねてしまったかもしれない。令嬢に同じことを言ってしまえば、いくら王子だからと言って、令嬢たちの陰口は酷くなって、その後の始末も大変だろう。
「…リュビ、失礼だ」
と言って自分の着ている服装を見た、あぁ、そうだ。
僕たちも、かなりダサい服装を着ているんだった。
「いや、すまない。そうだな、僕たちも言えない格好だった」
彼女は少し何かを考え、額の眉間のシワはだんだんと、なくなっていき。
何故か目を輝かせ始めた…。
待て…。
よくよく、見てみればこの顔…地味目にしてあるが、知っている顔だ。僕は疑問を感じた。何故ここに貴方が?何故、サファイヤと?
「サファ、この方はどなたですか?」
「あぁ、俺の兄だ」
普通に彼女…ダリアはサファイヤに話しかけた。
サファイヤの友人がダリアだったとは…。
「はじめまして、兄のリュビです。弟がお世話になってます」
「はじめまして。私はダリーです。こちらこそ、いつもお世話になっております…あの」
と彼女は何かを言いかけた所にサファイヤに
「ダリーあの人は誰だ?初めて見た」
と遮られた。
何を言いかけたのだろう。ダリアは俺たちに気づいたのか?なら、この会っていることを内緒にしてほしいということを言うのか??
「えぇ、私の兄のロキ兄さんよ」
ロキ兄さん…?彼女の兄はソロンという名前だったはずだが……偽名を使っているのか?
「お兄さんか、挨拶してこよう。リュビは行くか?」
「いや、ダリーさんとお話しとくよ」
「分かった」
と言ってサファイヤは、ロキという人の所に行った。
……挨拶はした方がいいが…少しダリアの行動が気になる。それに、サファイヤが居ては聞けないこともあるかも、しれない。
「…ダリーさんは、いつサファと出会ったのですか?」
「ええっとそれは、お恥ずかしい話で…私が街で、はしゃいでしまって姉とはぐれて迷子になった時にサファと出会ったんです」
「なるほど、意外とお転婆なんですね」
「前はそうだったんですけど、今はそんな感じではないのですよ」
「そうですか?さっき、サファの元に一直線で走ってきましたよ」
先程のことを思い出す。
彼女はサファイヤを見つけたら、まるで飼い主を見つけた犬のように走ってきた。
「それはもう、目を輝かせて」
思い出すだけで笑いそうになる。
いや、笑っていた。
先日のお茶会では、凛とした令嬢だったのに今は令嬢っぽくない…犬みたいだ。
ダリアも、子どものようにはしゃぐということも意外だった。令嬢としての、マナーを学んでいるのに、走ることはマナーとしてよくないことも分かっているはずなのに。
彼女に目を向けると、顔を赤くして頬を膨らまして怒っていた。
顔が赤いのは怒りで、ではなく。
恥ずかしさからきているのだろう。
「久しぶりに会えたから嬉しかったんです!あれに見えたのでしょう?飼い主を見つけた犬みたいって思ったのでしょう?」
彼女が思っていたことを言い、また笑ってしまった。
「本当にそんな感じです。喜びが溢れていましたよ」
彼女を見ていると面白い。考えていることが顔にでている。きっと今は恥ずかしすぎているのだろう。顔が真っ赤だ。
「面白い人ですね」
クスクスと笑いながら、思わず言ってしまった。
「そんなに笑わないでください!恥ずかしいです!」
彼女は、ますます赤面しながら言った。
「本当にすみません。ふふっ…ちょっと心配だったんですよ。サファは少し感情を表に出すというか色々と疎いので。友人ができたと言われた時はびっくりしました。それで、今日は来たのです。ダリーさんがどうゆう方なのか知りたくて。
ダリーさん、これからもサファと仲良くしてください」
「そうだったのですね…もちろんです!サファは唯一の友人なので!」
「ありがとうございます」
この子なら大丈夫かもしれない。
あのダリアだけれど、初めて見た表情やサファイヤや僕との関わりを見ていて、ダリアのことを、改めて見直した。
それに、顔にでやすいし、嘘もつけなさそうに真っ直ぐだ。
「あの…ひとつ、よろしいでしょうか?」
「?えぇ、なんでしょう?」
「私とお友だちになってくれませんか?
私、友人が少なくて…サファともう1人の子しか友人がいなくて…それに!リュビさんとは仲良くなれると思うんです!」
「僕と友人ですか?」
「はい!ダメでしょうか?」
彼女は、上目遣いを故意でやっているのか、天然でやっているのか…。
いや多分、天然でやっているのだろう。
天然上目遣いで僕を見る。
子犬に遊んでほしいと言われてるように見えた僕は、断ることはしなかった。
「…構いませんが」
「ありがとうございます!!」
彼女が嬉しそうに笑い、喜びが溢れていた。
犬みたいだ。
「ふふっ、いえいえ。これからも兄弟共々よろしくお願いします」
「?はい!よろしくお願いします!」
「すまん、少しロキさんと面白い話をしていた」
「いいよ、こっちも面白い話をしていたからね」
「へぇ、どんな話だ?」
「ダリーさんがいぬみ」
「リュビさんんんん!!!それは!!面白くない話ですよよおおお!!」
彼女の大声にびっくりしたが、必死に止めようとする彼女は面白かった。
「はははっ!そうだね、面白くなかったね。ごめん、これは面白くない話だったよ」
「そうか、残念だ」
サファイヤに話したいが、これは僕達だけの内緒の話にしておこう。
その後は、サファイヤとダリア、僕とロキとで一緒に色々な話をした。
夕方くらいに、本を読んでいたダリアの姉ではないだろうが、姉(仮)が本を閉じてこちらに来た。
「ダリー、そろそろ、家に帰りましょう」
あぁ、もう帰る時間か…意外と早かったな。
ダリアはスっと立ち僕たちの方を見て綺麗に礼をした。
「はい。じゃ、サファ、リュビ帰りますね」
「あぁ、また」
「また会いましょう。ダリー、ロキさん」
「えぇ、また」「またね」
3人を見送り。
「…そろそろ帰ろうか」
と言うとサファイヤは無言で頷いた。
馬車に乗ってから、中でサファイヤが口を開いた。
「今日はありがとう」
「いや、こちらこそ、ありがとう。楽しかった」
僕の顔をじっと見て「何だ?」と言うと…
「……ルビーもあんな風に笑うんだな」
「あんな風に笑う?いつも通りじゃなかったか?」
「いや、全然違った顔だった…。ちゃんとした自然な笑顔だった。」
「そうか?」
自然な笑顔か…。そうかもしれない。いつもだったら、仮面を被ったような笑顔をしているから。今日はみんなの王子様としてでは無く、僕として…ただの僕として話したから。
彼女と話して笑えたから、自然な笑顔なのかもしれない。
今日は良い息抜きだった。
色々な発見ができた。サファイヤは、街で楽しんでいたし、ダリアも本当はいい人だって気づくこともできた。
少しして、僕は、朝話そうとしていた事を思い出した。
「サファイヤ…昼の時に話そうと思ってたんだが、ルルーシュ公爵家のダリア・ルルーシュ嬢と婚約しようと思う。まぁ相手方が断れば無理だが。」
「そうだな、どうなるかは分からないからな。お互いがどうとか、まだ分からないだろ。
2人で話したりすればいいんじゃないか?」
「話し合いか…」
今日のことは、僕しか気づいてないみたいだ。
それに、僕は彼女のことを知っていても、彼女は僕のことを知らない。
僕だってまだ、知らないこともたくさんある。令嬢の彼女とは媚を売ってくるか…距離を取られるかと真面目に話したことはないから、いい機会かもしれない。
この前までは彼女のことを知りたいと思ってしまうなんて、考えられなかったのに、何か病気にかかってしまったのかな。
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嬉しそうに外を眺めるルビーを見る。
ルビーは、まだ笑顔だ。
本当にダリーはすごいと思う。
あの兄を自然な笑顔にしてくれるのだから。
また街に行こうと言ったら、一緒に行ってくれるだろうか?彼女は、人を惹き付ける人だから。これからも兄や俺の良き友人となれると思う。
でも、兄がダリーと話している時。
少し胸の奥が痛かった。ロキさんとの『おかしい令嬢』の話を中断して、2人の元に戻った。
その時は、胸の奥の痛みはなかった。
さっきの痛みは、なんだったんだろうか。
首を傾げていると、ロキさんに
「青春ですね〜」と言われた。
意味がわからなかった。
2人が友人になってくれて嬉しかった。
兄に婚約者ができてしまえば、兄は会いに行けなくなってしまうだろう。
それは、友人の少ない彼女は悲しんでしまうから、俺が悲しまないようにさせるか。
兄をまた変装させて、お忍びで会いに行くか。
色々と考えなければならない。




