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01.森中
茜色に染まりつつある空がある。
夕暮れだ。
深緑の一面が、一様に夕紅に色変わりしていく。
深い、深い森だ。人が主人となることは適わない、人以外の生命に満ち満ちた世界。
草木と、鳥と、獣と、蟲とが生きる空間。
しかし、それが今は、奇妙に静かだった。鳥獣の息遣いも、蟲の声もない。
じっと、息をひそめている。
侵入者だ。
自分たちとは相容れない異質な存在が、それも数多くこの森奥に侵入しているために、彼らは警戒しているのだ。
人間だ。
人間がいる――と。
明らかに組織立った動きで広域に散らばり、沈黙している。
そして、その森の中で、偶然わずかに開けた場所に、一際大きな存在感を放つ人間が数人集まっている。




