第八話
「......抱いても、いいかい?」
「まぁ!!もちろんですわ♡」
僕はその小さな命を腕に抱く。
軽いようで、命の重みがしっかりと感じられる。
......可愛い。これは可愛すぎるぞ。
ヴィレリアは僕と子供達を温かい目で見つめている。
......こうしてみると、彼女もただの一人の女性、一人の母親だ。
――僕の愛した女性がここにいる。
「......ヴィレリア。君が決めたルールは覚えているかい?」
「?もちろんですわ♡」
「......一つだけ、訂正をしてもらいたい」
「?」
僕はヴィレリアの瞳を真っ直ぐに見つめた。
僕が訂正したいルールとは......
「僕が君より先に死なないこと。これを変えてもらいたい」
「......え?」
彼女の顔が固まり、次第に暗くなっていく。
「......いやですわ。それだけは譲れません」
「まぁ、最後まで聞いてくれ」
僕はルクスとノクスをヴィレリアの腕に抱かせると、ヴィレリアごと全員を抱きしめた。
「り、リオネル様?!」
ヴィレリアは驚き頬を紅潮させていた。
――そんなヴィレリアがとてつもなく愛おしい。
「......訂正する内容は、"死する時も共に"だ。......ヴィレリア。遅くなってすまない。愛している」
「......リオネル、様......」
「ペットにされた時はどうなるかと思ったが......やはり、君を想う気持ちは消えなかった。」
気づくとヴィレリアは僕の腕の中で涙を流していた。
......泣かせたかったわけではなかったのだけれど。
「......わたくし、幼い頃から独りぼっちで......お父様に出会うまで聖女の力も上手く使えなくて......聖女と知れ渡ってからは、たくさんの人に囲まれてました。......けれど、皆が見ているのは"聖女ヴィレリア"で、ただのわたくしを見てくれる人はいなかった。」
「......うん」
「けれど、リオネル様。貴方様だけは違った。旅をする前からわたくしを一人の女として、人間として見てくれていた。それがどれだけ嬉しかったことか......」
僕はヴィレリアを抱きしめる腕に力を込めた。
「......だから本当の姿を知られるのが怖かった。けれど、貴方様は戸惑うだけで私を嫌おうとはしなかった」
「僕の想いは簡単には消えないよ。ヴィレリア。」
「......何度も何度も力を使って貴方様の想いを見ていましたから。本心だって信じていましたわ」
――僕を信じてくれていた。
それがどれだけ嬉しい事か。
「ヴィレリア。この地でこの子達と共に世界を見て行こうじゃないか」
「......!!はい、はい!!」
こうしてみると彼女は"魔聖女"でも"神・コスモス"でもない......ただ一人の女性だ。
僕の愛した、いや、愛する女性だ。
これからはどうなるかは分からない。
けれど、僕はこの幸せを噛み締めるのであった。
――全世界の平和を彼女と共に見守る。
それがこれからの僕の使命だ。




