第一話
とうとうやって来た魔王城の玉座の間。
辺りにはおどろおどろしい空気が蔓延っている。
ここまでの戦いでたくさんの仲間を失ってきた。
今、自分のそばにいるのは聖女である、"ヴィレリア"ただ一人。
「ヴィレリア。ここまでありがとう」
「いいえ、リオネル様。まだ魔王討伐が残っておりますわ」
「......果たして僕に勝てるだろうか」
僕は思わず弱音を吐く。
すると、ヴィレリアはくつくつとなんだか不気味に笑いだす。
「......ヴィレリア?」
「そんなに怯えないでくださいな。......あぁ。なんて可愛らしい。そうは思いませんこと?魔王よ」
ヴィレリアが玉座に語りかけると、玉座に座っている巨大な影がゆらりと動き出した。
――一気に瘴気が舞い踊った。
「ヴィレリアよ。よくぞここまで勇者の戦力を削って来た。褒めて遣わす」
「ありがとうございますわ。魔王ヴァルガス。それで約束なのですが......」
「あぁ。何でも言ってみるがよい。聖女であるお前を拾いここまで育ててきたのだ。それにより、聖なる力と、魔の力を得ることが出来るという素晴らしいサンプルにもなった」
「お褒めにあずかり光栄ですわ」
......ヴィレリアは何を言っている?
この会話では、まるで魔王に育てられてきたかのような......
......はなからヴィレリアは、魔王と繋がっていた?
そうとしか考えられない。
「ヴィ、ヴィレリア......君は一体?」
「勇者リオネル様。今までの旅路、なかなか楽しいものでしたわ。それによりわたくし、もっと。もーっと欲しくなってしまいましたの」
「......一体何をだ?」
するとヴィレリアは魔王の前に跪き、願いを乞うたのであった。
「ヴァルガス様。わたくしは褒美に"勇者リオネル"を所望いたしますわ」
「ほぅ......。してその理由は?」
ヴィレリアは聖女に似つかわしくない恍惚とした笑みを浮かべた。
そして、だんだんと正気を保てなくなってきている僕のところまでやって来る。
「だって......だって必死になってわたくしを守りながら戦う姿が美しくて美しくて......。これは手に入れなければと思ったのですわ」
「......ヴィレリア。私はお前を娘のように思っている。だからこそ、願いは叶えてやりたい」
「!でしたら......!!」
僕は瘴気に当てられすぎて立っていられなくなった。
頭もぼうっとし始めた。
目の前も霞み、今この場で起こっていることが見れないでいた。
「ヴィレリアよ。お前の願い、しかと受け取った。勇者リオネルをここ"魔界"で飼うことを許可しようではないか」
「まぁ!!ありがとうございますわ、ヴァルガス様......いえ!"お父様"!!」
「......お父、様......?」
ここまでのやり取りを聞いて僕はその場で記憶が途切れた。
――これから、僕は"聖女、ヴィレリア"に飼われることになるのか。
――彼女に抱いていたほのかな恋心は行き場をなくしてしまったのであった。




