25 どうしてここに?
アラン!?どうしてここに!?
アランは私を数秒見つめたあとに抱きしめてくるのであった。
…え!?なにこの状況!?ふぇ!?
私は内心はてなはてな状態である。
「…血?」
私のことを抱きしめていたアランの手に血がついたのだろうか。アランはそう呟くのであった。
「なわ、外す、とき、背中、に、針、刺した、か、ら…。」
私が途切れ途切れでそう言っていると、アランの顔がガラッと怖い顔に変わった。
怒ってる…?
私は思わず感じとった。
「アラ、ン。わた、し、だいじょ、うぶ、だから。」
「こんなにも手が震え、体も冷たく、顔が真っ青なお前のどこが大丈夫なんだ?」
私はその言葉に口を閉ざすざる負えないのであった。
あちゃ。アランにも、もう限界なことがバレちゃったのかな?
私はアランの体にもたれかかるのであった。
アランはあたたかくてここちいい。
私のその行動にアランは心配そうな目で見ながらも、私を横抱きしたまま、歩くのであった。
「アラ、ン。わた、し、あるけ」
「まさか歩ける、とでも言うのか?痺れているのだろう?大人しくしておけ。」
私はその言葉通りにするしかなかった。
なんでだろう。どうしてか、アラン・アントニーが優しい気がした。
小説の中では、ヒロイン以外には誰にも優しくもないし、微笑まない彼がこんな男だったなんて。
私が弱ってるからそんな風に見えるだけなのかな?
しばらく歩くと、死体の山の上にトーマスが立っているのであった。
流石、騎士王と呼ばれるだけある…。
トーマス・ドリュウズ。若手騎士でありながらも、100人の敵騎士を1人で制圧したとされる伝説的存在。〝伝説の騎士〟とまで象徴されている。トーマスがその人物であると公に明かしていないことから、その正体が誰なのか?という噂までが上がっている。
まさかそんな伝説の騎士がアランの騎士だなんて誰も思わないでしょ。
「姫君!?」
トーマスは私の元へ来て、跪くのであった。
「申し訳ありません。私が席を外したばかりにこんなことが…。」
「い、え。トー、マス、様、に、むだ、んで、ここ、に来た、わたし、の、失態、で、す。」
私の弱々しい言葉を聞き、トーマスは涙目でこちらを見るのであった。
可愛い子犬みたい。この人があの伝説の騎士だなんて主人公以外わからなかった理由もわかった気がする。
「標的は?」
アランは低い声でそう言うのであった。
やっぱり、怒ってるよね?
「あちらに。」
トーマスが視線を向けた先には私の侍女の一人が軽々とガウル伯爵を捕まえているのであった。
侍女のティア!?なんでここに…。
「あの女は元暗殺者だ。」
アランは私の疑問を察したのか、そう言った。私はその言葉にぽかんと口を開けてしまう。
…アラン。そんな侍女を私にくっつけたわけ?
「安心しろ。他の侍女はちゃんとした侍女だ。」
確かにティア。…なんか武術とか得意そうだったもんね。
「離せ!私はあのガウル侯爵なのだぞ!お前はどこの使用人だ!?」
ガウルの暴れる言葉にティア「面倒くさい。」という目で見ているのであった。
「ガウル。久しぶりだな。」
アランのその言葉にガウルは顔を真っ青にするのであった。
「こ、アントニー公爵様。お久しぶりでご、ございます。」
焦っているのね?まさか、公爵様がここにたどり着くまでに私が逃げ出すだなんて思ってなかったから。
「我が愛しい婚約者を傷つけたようですね?…罰を受ける覚悟はできているんだろうな?」
アランはいつも私とトーマスしか知らないであろう表情と声色でガウルに言うのであった。
相変わらず圧が怖いことだ。
ガウルは顔を真っ青にしながらも、なにかをハッと思いついた様子で口を開くのであった。
「フィール様。…どうかお許しを。」
私はその言葉に首を振る。
地獄に落ちろ。この小太り爺さんが。
私の笑みにアランのトーマス以外の騎士は真っ青を浮かべるのであった。
「で、では、こんなのはいかがでしょうか?あなた様を狙う人物について、ですよ?ほら、私にこんなことをさせた真犯人の…。」
「…え?」
私は静かにそう呟くのであった。




