番外「誠くん」4
…………え、何これ…
今度は、オレの顔が引きつり始めた。
無理やり入った聡美の部屋。
男の荷物などなさそうだ…、よかった…
…………ぜんぜん、よくない。
部屋の中が、すばらしく汚い…。
脱ぎ散らかされた服。
シンクに投げるように置かれた、たまりにたまっている茶碗。
テーブルの上には、テーブルクロス代わりなのか、こともあろうかオレがあげたゴーディオンのポスターが引かれていて、鍋が置かれ、カップ麺の空の器が転がり…
オレたちゴーディオンの顔がぁぁああああ、メチャクチャだ…
ぁぁああ、ラベルは緑茶じゃないのに、このペットボトルの中身の緑は、なんだ!
ぇえええ、鍋敷きの代わりに、ゴーディオンのCD!!??
うぉおお、今、目の前を何かか飛んで行ったぞ!!??
ショーーックッッッ!
仕事が忙しくて、時間がなくて、家の中のことができない…と言い訳する聡美であった。
いや…、これは、できないのではなく、「面倒くさくて、しない」だけだよ…聡美…?
オレに合鍵くれない理由がわかったよ……
オレとは対象的な性格ということもわかったよ……
オレは綺麗好きだ、コロコロ命だ。
空気の淀んだ部屋の窓を開け、日も暮れ落ちた西の空に向かって叫んだ。
こんな部屋があって許されるものかぁぁああああああ!
青い空の下、オレは緑色のガーデンに立っていた。
あのペットボトルの緑色とは、ぜんぜん違う、ステキなグリーンガーデン。
「おめでとう、誠」
「おまえも、とうとう落ち着くのか」
「家族持ちになるんだなぁ」
礼服姿のメンバーに、口々に言われた。
「うん、聡美がまだ仕事したいっていうから、子供はまだ先だけどな」
オレは、そう言って、少し離れたところで、友達と笑顔で話している白いウエディングドレスを着た聡美の方を見てニンマリした。
聡美が投げたブーケを受け取ったのは、キヨの恋人、夏海さんだった。
「番外編」読んでいただきありがとうございました。