ハギザ64
よろしくお願いします
がたんがたん…がたん。
お金と言うのは、人を繋いでしまう呪いだ。
だからこの状況は仕方のないことだった。
『おまえ馬鹿だろ』
「月乃さん、今度は奢るから、絶対」
「いいのいいの、今日は私の我儘に付き合ってよ」
ひたすら、僕が君のお金で電車に乗っている言い訳を考えていた。しかし、幸福なことにも、女の子に奢られて電車に乗る僕の姿を君以外誰も見ていなくて、座席に座る僕らの距離は一つ個分離れていた。
化け物が見えていない君のことを、僕は好きになれるんだろうか。
そうも考えて仕舞えばまた面倒な思考。
だったら、僕は君に【恋】と言うくだらなくて、単純な言葉で結び付けてしまった方が、苦しくはないし、寧ろそっちの方がよっぽど良い。
そして、もし僕が君と付き合うことになったら、僕はきっと…。
※
『なあ、お前は食えないのか?』
「はあ?」
目の前は真っ白な空間と、真っ暗で不確かにぼやける化け物。
その化け物は、自分自身の黒い両手をこれでもかと舐め回していた。そんな化け物の足元を見れば、原型のままならない肉の欠片がまとまっている。
一方で、僕はこの空間から一歩も動くことが出来ず、ただ立ち尽くしている。
『うまいうまい、がはっ!』
「おまえ、一体何者なんだよ」
『なあ、お前は食えるのか?』
「ぼ、僕は食わないよ…」
化け物の質問に真面目になって答えている時点、冷静ではないのだろう。
『ちがうちがう、お前は食えるのか?』
何度も同じ質問をしてくる化け物に苛立ちを覚えるが、意思疎通のできない化け物に、僕の感情の何を向けても無駄だろう。そう思わせるように、両手をまだ舐め回している。
「お前は、食べたことあるのか?」
『がは…』
「な、なんだよ。なんとか言えよ」
僕の質問に対して遂には黙り込む化け物。僕の顔をじっと見つめてきている。それはまるで、僕が獲物であるよう…。
『がはっ!』
「?!?!!!!」
一瞬にして広がった黒色は白い空間を暗くした。そして、一つ目の大きい目で僕を覗き込んでくる。
そんな化け物の行動に慌てていたはずだった。
なのに、なのにだ。
僕はどうしてここまで冷静なのだろう。
心が矛盾していることに気づく。
「僕はどっちなんだよ、どっちだっていいから、何者かでいたいだけだ」
やっぱり混乱している僕の戸惑いの言葉。
話の通用しない化け物は僕に向かって口を大きく開けた。
『おまえ、食えるのか?』
「えっ、食えるって、僕のことを食うってことだったのか?」
てっきり、僕自身が人間を食べられるか否かを問いているのだと思っていた。
僕の勘違いに区切りがついたところで、僕は化け物の大き過ぎる口に吸い込まれていく。
『食えそうだな』
化け物の声が響き渡る空間で、焦りも戸惑いも、緊張も確かにあった。
でも僕はやっぱり、冷静だった。
「食えよ、でも僕は美味くないぞ」
※
ありがとうございます




