ハギザ56
昨日に戻りたい
夜まがい。
僕はハギザと喧嘩しながら帰っていた。
『おい!俺様はもう飽き飽きだ!』
「なんだよ、お前があんなに怖がってるところ初めて見たんだけど?やっぱり腰抜けなんだな」
『ああ?怖がってる訳じゃない、勘違いするなよクソ餓鬼』
「じゃあなんで警戒するんだよ、もしかして、異性と話すのが苦手なのか?」
『お前、俺が見えてなかったら何もできないだろ、調子に乗るなよ?』
「はあ?お前が見えるからこの世界がつまらないんだろ?勘違いすんなよ、化け物」
いつもの夜道、誰も聴いていない喧嘩を邪魔するものなんていなかった。
『なあ、しん。少し、本当に少しだ。真面目な話をしよう』
「なんだよ、急に」
こんないつもの言い合いの雰囲気を遮ったのはハギザ。
いつもよりも少し暗くて見づらいハギザは、目を細めて口を開いていた。
『あのな、まだ俺様には時間がある。だけどそれは有限だ。無限じゃない』
「何が言いたいんだよ、あんまり僕に難しいこと言うなよ」
『俺様はそのうち消える。それはお前もわかってるだろう?』
ハギザにそう言われた瞬間だった。
確かに、僕は何も考えていなかったし、知ろうともしていなかったことだった。
なのに、たぶん知っていたし、気づいていたように思えた。
「いつ?」
単純であり、純粋な僕の質問。
『がはは、お前が変わっちまう時だ』
ハギザは、こんな僕との夜の言葉交わしを、まるで望んでいたかのようだった。
明日を睨んで見る。
おやすみ。




