ハギザ55
よろしくお願いします!
『や、やめろぉ!もうこれ以上は近づくなぁ!』
ハギザが僕の上で唸っている。
それは、僕と君の身体が触れるぎりぎりの距離にいるからだ。
確かに、どうしてこんなことをしているのかと言うと、『僕らはお互いを知らなくてはならない』と言うハギザの要望に応える為だ。
そうだ、だからこれは、決して疚しいことを考えている僕の欲望がそうさせた訳ではない。決してそんな訳ではない。
それに、君と僕が距離を縮めた途端、灰色の化け物が君の背中へと取り憑いたのは警戒しているからなのだろうか。
「秋乃くん、もっと攻めてみてもいいんだよ?我慢なんてしなくてさ」
「そろそろやめとく、ハギザも君の化け物に根を上げてるところだし」
僕は凄く君を感じていた。
匂いも体温も、この部屋にいることさえどうでも良くなるくらいに、今僕の一番にいる君。
『がはがは!なんか喋れや!ほんまに!こいつはなんだ!』
僕と君に比例するよう、ハギザと灰色の化け物も近づいているけど、ハギザがこの中で一番に情けなかった。
「じゃあ、離れるね」
君の掛け声と共に感じた喪失感。
人が離れていくその虚しさは、君であったから感じたものなのだろうか。
「なんか、ごめんね。でも少しだけ月乃さんのこと見れた気がするかも」
「ならよかったね」
灰色の化け物は君の後ろでいつものように在る。
『がはぁ、もう、帰りたい』
こんなにも弱っているハギザを初めて見る。
化け物同士に相性なんてあるのだろうか。
それよりも、僕はどうしてこんなにも冷静なのだろうか。
もっと、こう…。
「月乃さん、僕ってつまらなそうにしてる?」
テーブルに置いてあるジュースを口にしていた君に問うと、君は潤っただろう喉から綺麗な声を出して僕に返答した。
「凄くつまらなそうにしてる」
「うわっ、まじか、聞かなきゃよかった」
あははは。
君が笑ってくれたのはありがたいけれど、きっと君が言ったことは本当なんだろう。
きっと僕は、人とは少し違うんだ。
ありがとうございます




