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化け物『ハギザ』と僕と君。  作者: 秋乃しん
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28/120

ハギザ28

こりゃダメだな


  「おはよう」


『あ?またか、コイツも懲りねえな』


「あっ、え?おはよう?」


玄関を出てすぐ、眠そうではない君と、灰色で無表情な化け物の姿に、疑問にも挨拶を交わした。


「早いんだね、一緒に学校行こうよ」


「あっ、うん。別にいいけど」


薄く笑う君に、感じていた動揺が少し落ち着いた。


 「秋乃くん修学旅行楽しみ?」


「あー、確か。今日の五、六時限目に話し合いがあるんだっけ?」


スマホをいじりながら、ちょうど岡山からのメールの内容を目にしていた。それが修学旅行の班決めのことであった。


「それで、楽しみ?」


「え、まぁ。楽しみだけど。なんで?」


「私も楽しみなんだよね、それだけ」


普段見せない君の笑う表情。それと、今に気がついたけれど、今日は髪をセットしているし、薄く化粧もしている。

だから、今日は一段と可愛く見える。


「月乃さんってさ、謎に包まれてるって感じするよね」


「えっ、本当に?私って他人からは寝てるだけのイメージがついてると思ったんだけどな」


「いや、それはそうなんだけどさ。なんか感情的になったりしないと言うか、なんと言うか?」


「それはどういう意味?」


何気ない会話の中で、僕が君に対しての印象を口にすると、何か嫌なことでも言ってしまったのだろうか。君は驚いた様子で僕を見つめて来た。そんな君の目から逃れるように、すかさずスマホ画面に目を移す。


「別に変とかじゃないよ、ただ僕が月乃さんってそんなイメージがあるなってだけで」


何か嫌なことでも言ってしまったのか、性格も何もわからない君にそんな顔をされると、どうしていいかわからなくなる。


「あ、あのさっ…」


「おっ!秋乃と月乃じゃん!あっ、なんかお前ら名前ややこしいな。どっちがどっちだか忘れちまったよ」


 一瞬だけ見えた。

緊張のせいか、引き攣る君の顔。

必死そうなその君の顔には感情が映っていた。

なのに、邪魔が入った。


「僕は月乃でこっちが秋乃だよ。いい加減覚えてくれ」


背後からチェーンを鳴らしながら涼しげに通り越して来た岡山は引き返してくる。


「あははは、そうかそうか、そうだったな!」


「達也くんは朝から元気だよね、鬱陶しいくらいだよ」


「えっ!鬱陶しいのか俺っ!?」


 隣にいた君、先程の表情は既に消えていて、岡山に冷血なことを言った。


「うっそーん、いつも面白いから好きだよ」


「おっ、おお!だろ!?」


「好き」君が言うその言葉には、なんだか他人とは少し違う意味に聴こえる。


「達也、修学旅行の話なんだけどさ…」


「おっけ!じゃあ先行くわー」


「おい…、あいつ」


 騒がしい奴だけれど、岡山が僕の近くにいないと寂しくなるだろうし、僕はきっと他の人ととはあまり仲良くしたりできない。


「秋乃くんって、達也くんのことあんまり好きじゃないでしょ」


「えっ…」


『がはっ!俺は今寝てたのかっ!どこだここは!』


タイミングがいいのか悪いのかはわからないが、今思えば静かだった背後から、ハギザが現れた。


「なんでもない、じゃあ先行く」


「あぁ、うん」


『早く消えちまえ。おい、しん?どうしたんだよ、そんな間抜けな顔しやがって』


 あれはどう言う意味で聞いたのだろうか。

君は僕が岡山のことが嫌いだと思った?だけど、学校では毎日一緒にいるし喧嘩だってしたことがない。なのにどうして君はそう思ったんだろう。それと、あの時の君の引き攣った顔は、今思えば凄く魅力的だったかもしれない。そして、君はいったい僕に何を聞こうとしたんだろう。

 門に向かう君の後ろ姿は退屈そう。だけど、整った髪が揺れている。そんな君は綺麗でもある。


「なぁ、ハギザ。好きってなんだ?」


『こりゃ駄目そうだぜ、がはぁ』

がは

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