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抱擁

まず自分が馬から降り、そのあと私を降ろしてくれるベルナールお兄様に満面の笑みで駆け寄り、ベルナールお兄様を抱きしめるユーリお兄様。

「よく帰ってきた! 本当によかった!」

バンバンと肩を叩くユーリお兄様にベルナールお兄様も苦笑を浮かべる。

「俺達は無事だと報告はさせていただろうに……」

「それでも実際に顔を見るまでは安心できんさ! それが家族だろう?」

バンバンバン。まぁ、ユーリお兄様、いい人なのだろう。


私達の長兄である、このユーリ・ペドレッティという人は詩人だ。

愛をうたう詩を得意とし、後の文学書に「口を開けば愛となり、囁きは小鳥をも蕩けさせる。筆をのせれば真冬に花が咲く」と言われた人らしい。設定資料集にそう書いてあった。

間違えて貴族に生まれてしまったような人である。

平時であればもてはやされたであろう、その口から出る言の葉も、これからどうなるかわからない。

能力値でいえば政治力51が多少使えるかなくらいで、あとは軒並み壊滅的だ。武力4とか、統率力8とか……

ただ、実は魔力が29で、イベントで魔力が1でも上がることがあれば魔法を使うことができるようになるのだ。

戦争時の魔法威力はうろ覚えだが「魔力+(知力÷2)」だったと思うので微々たる威力の魔法ではあるが……

それに、実はその政治力51でさえベルナールお兄様よりははるかに高いのだが。

そして、これが一番重要なことなのだが……とてもよい兄だ。


「そして君……ジェルメーヌだね?」

そうか、ジェルメーヌは王都の学園に通うために寄宿舎に入っていたからユーリお兄様とは何年かぶりの再会なんだな。

「ジェルメーヌも、よく帰ってきてくれた! 兄さん嬉しいよ!」

私を抱きしめて……

……目を丸くしながら離れた。

「……大きくなったなぁ」

どこ見て言ったよ、ユーリお兄様。

……いいよいいよ、イケメン無罪だよ。


「ベルナール様、ジェルメーヌ様、よくご帰還くださいました」

兄妹の再会を邪魔しないようにしていたのだろう、穏やかな笑みを浮かべた初老の紳士が声をかけてくる。

この人は……ペドレッティ伯爵家の家宰のシャルル・ディアッラだ。

家宰というのは要するに家政を取り仕切る役職の人だ。

扇谷上杉家でいえば太田道灌。

三好家でいえば松永久秀。

……大丈夫、この人?


まぁ、大丈夫だろう。

反乱とかやっちゃうような人だったらゲーム内で武将になってるだろうし。

そう考えると、武将の数が少ないからこそ、ペドレッティ伯爵家って「内側に敵がいない」ということが確定しているすごいいい場所なのでは、と思う。

「さぁ、伯爵閣下もお2人の帰還をお待ちでございますよ。こちらへどうぞ」

シャルルに導かれるように城門の奥……館に入る。


玄関ホールは広く作られており、そこに並んでいた使用人さん達が私達が館に入るのと同時に一斉に頭を下げてびっくりした。

そこそこ高級そうなインテリアとかもあるが、基本的には武家らしい質実剛健とした作りだ。

「玄関ホールは雨天などに兵達がここに集まれるように、広めに作ってある」

ベルナールお兄様に教えてもらった。なるほどねー。

そのベルナールお兄様に、帰還が嬉しくてたまらないというように、肩を抱いたり、背中をバンバン叩いてユーリお兄様がいちゃついている。ベルナールお兄様も満更でもなさそうだ。

兄弟仲がよくて私も嬉しいよ、うん。

まぁ、ユーリお兄様がまた私に抱きついておっぱいのことを言ったら今度は手が出るかもしれない。いかにイケメンでも二度目はないのだ。




きょろきょろと物珍しそうに周囲を見回していると、先導するシャルルに奥まった部屋に案内される。

ドアをノックしながらシャルルが声をかけた。

「伯爵閣下、お2人がお戻りです」

「入れ」

分厚そうなドアの向こうから威厳に満ちた声がした。

ドアが開けられ、気難しそうな初老の人物が部屋の奥の執務机に座っているのが見えた。

彼はゆっくりと立ち上がり、こちらに歩を進めて……


「よく帰ってきてくれた、私の宝物達よ」

ベルナールお兄様と私をその広い腕に力強く抱きしめた。


ユーリお兄様はベルナールお兄様とひっついてたのでついでに抱きしめられていた。


この人が、現ペドレッティ伯爵、クリスティアン・ペドレッティ。私達の父親。






なにもしなければ、5年以内に、この人は死ぬ。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

シャルル・ディアッラ:フランコ・バレージ

クリスティアン・ペドレッティ:アレッサンドロ・コスタクルタ

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