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勇者

ガスティン侯爵家の最強戦力、セリーヌ・ガスティンを加えたガスティン侯爵軍は山の麓に迫ってきていた。

シクス侯爵軍の到着まであと2日。しかしそれまでにこの砦を落とすことができれば、次になにかイチャモンをつければ、この砦からリスタートできる。念願の海までもうちょっとだ……ややこしい隣人がいると面倒だなぁ。


「……で、ベルナールお兄様。作戦会議で、私は何度も反対したとは思うのですが、今日も反対してよろしいでしょうか」

「いや、もう敵もきてるし……時間もないし……」

私の憮然とした顔に困った表情のベルナールお兄様。ココ将軍とペラン子爵は少し離れた場所からニヤニヤとこっちを見ていた。なに見てんだ。一緒にベルナールお兄様を止めろ。

「私には危険なことをしないように、と。私は家族からとても愛されていることを感じられます。だからベルナールお兄様を心配させてしまったということが事実としてある以上、この札も甘んじて受け入れましょう」

「私は無茶な作戦行動でお兄様を心配させました」の木札はまだ私の首にかかっていた。仕方がない。家族の愛だもの……愛。愛なのかなぁ?

「同様にベルナールお兄様が危険な行為をなさるのを見過ごすことはできません……ベルナールお兄様はこの砦を守るためにどのようになさるつもりなのか、もう一度教えてください」

ベルナールお兄様は珍しく口籠る。

「い、いや……この砦は山の上にある。攻め込もうとしたら狭い山道を登らなきゃならないだろう?」

そうですね。その通り。

「この狭い山道は並ぶことすらできない」

確かにそうです。

「一対一の戦場だったら、勇者なら守れる」

張遼みたいなことを言いやがった。孫権に支援を受けた賊が立て篭もった山を攻め落とすときに、張遼さんも「一対一の戦場だ」って言ったらしいよ、うん。そんで、一人で登山して敵を斬ったらしいよ、うん。


このクレティアン砦はベルナールお兄様も一目見て満足そうに頷いたようにとてもよい砦だ。

その理由として攻め込むための道筋が一箇所しかなく、そこもとても狭く細いことがあげられる。

タワーディフェンスゲームだったら最強ユニットを道に置くだけで完勝できちゃうような場所だ。楽勝マップと言われてしまう。


「……で、その勇者は誰なんです?」

「俺っ」

ベルナールお兄様が親指で自分を指差した。

「はい、どうぞ」

私は憮然としてベルナールお兄様に木札を差し出す。木札には「私は無茶な作戦行動で妹を心配させました」と書いてあった。

「マジかー……」

ベルナールお兄様が情けなさそうな顔で木札を受け取り、そのまま首から下げた。


私だって最強ユニットを狭い通路に置くだけで守り切れることの有用性はわかっている。

しかしそれが家族の危険を認めるのは話がちょっと違う。

違うんだけど……ここで最強の戦力を投入しない理由もない。

なにせ敵にも武力92がいる。これを超えるのは1人しかいないというのも事実なのだ。


ミッターマイヤーさんと金銀妖瞳さんが小細工したような落とし穴でオフレッサーさんをハメちゃおう(二重の意味で)作戦はできないように、セリーヌが合流するまでの期間にココ将軍やペラン子爵達がずっと走り回ってこの山砦を改造していた。

あとは本当に……一対一の戦いだった。


「今から、この砦を攻め落とします」

山砦の下から拡声の魔法による女性の声が聞こえた。恐らくセリーヌ・ガスティンなのだろう。

「今、降伏するなら命は助けましょう。しばらく待ちます」

「待つ必要はない。お互い忙しい身だ。さっさとはじめて、終わらせよう」

ベルナールお兄様が同じように拡声の魔法でセリーヌに返答する。

「……そうですか。あぁ、それからこのふざけた立て札を立てたものは覚悟しておきなさい。大変に痛くします」

立て札? 立て札ってなんのことだろう。

「あぁ、自分とココ将軍が山砦の入り口に『ようこそ! 歓迎、ガスティン家ご一行様』って立て札を作ったけどそれのことかもしれませんなぁ」

ペラン子爵が教えてくれた。

おもしろいな、このおっさん。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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