大戦
さて、まったく関係のない話をしよう。
私は前世でとてもハマっていたゲームがあった。
いや、この世界の原作ゲーム、王冠の野望もハマってたんだけど、それとは別に……
それは某社のアーケードゲーム、にゃん国志大戦である。
ゲームセンターに置かれた筐体の上でにゃんこカードを操作して敵にゃんこツリーを攻め落とそう! というゲームで、私はこのゲームでランカーになったこともある……といっても全国100位ギリギリとかだったし、翌日にはランキングから消えていて二度と浮上しなかったが。気に入ってたんだよねぇ、大徳デッキ……
さて、このゲームはにゃんこ達がいろいろな兵科になって、敵のにゃんこツリーを攻撃するのだが、基本的には弓、槍、騎馬3つの兵科がある。本当はもっと多くの兵科があるけど説明が冗長な上にオタク特有の早口で語ってしまうことになるため、省略することを了承されたい。
弓にゃんこは遠距離攻撃で行軍速度の遅い槍を一方的に撃ちまくることができる。
槍にゃんこは部隊の前に槍オーラが出ており、突撃してくる騎馬にカウンターで大打撃を与えることができる。
騎馬にゃんこは一定距離を走ることによりオーラをまとい、弓での攻撃がほとんど効かなくなる。
この騎馬の考え方は三国時代では非常に正しい。
騎馬は馬鎧をまとっていて、弓からの攻撃を速度で無効化する兵科なのである。
では、そんな騎兵部隊とどのように戦うのか。
騎兵をぼっこぼこにした戦争は長篠の戦いだけではない。
三国志の時代に界橋の戦いという戦争があった。
白馬義従という精強な騎馬軍団を率いる公孫瓚と、まだ北方の地盤が固まっていなかった当時の袁紹との戦いである。
この戦争で袁紹軍の名将……あれは名将って呼んでいいんだよねぇ? まぁ、名将の麴義さんは公孫瓚軍、中央に歩兵30000と両翼に騎兵がそれぞれ5000ずつ布陣する前にたった800人の歩兵で立ち塞がる。
私が橋のたもとで少数でリシャールと対峙したのはこれを参考にしました。
公孫瓚は敵が少ないのを見て突撃をしたのだが、麴義さんは槍と盾を装備した……いわゆるファランクスで迎え打ち、さらに長槍で突進の止まった騎兵に対して両翼から弩の一斉射撃で騎兵を殲滅したのだ。
立ち止まってしまい、オーラの消えた騎兵は敵じゃないということである。
さて、私達には弩はない。
でも、私達にはシュヴァリエがいた。圧倒的な威力の投げ槍部隊がいた。
馬防柵と長槍によってオーラの消えたイヴォン隊は、私にはカモにしか見えなかった。
マリウス達、シュヴァリエの鍛え上げられた筋肉から繰り出されるピルムによって、柵に引っかかったままのイヴォン隊は再び大混乱に陥った。かわいそう。
後方でまだ兵達を制御し切れていないリシャールはそれをずっと見ていることしかできなかった。
馬は倒れ、熟練の兵達が一方的にばったばったと倒れていく。
そして……
「離せ! 離さんか!」
賑やかな楽しそうな声が私に近づいてきた。いつも私の護衛をしてくれているアルノーと、彼が縛り上げた……誰だろう?
「敵将、イヴォンを捕らえました!」
「あらー」
その報告を聞いた私の声はきっとハートマーク付きだったと思う。
「口に布を噛ませて絶対自殺なんかさせないでください。ちゃんと丁重に扱ってくださいね。彼の身代金でたっぷり儲けたら皆さんにちゃんと還元するんですから」
「貴様っむぐぅ!」
気を利かせてアルノーが猿轡を噛ませてくれた。ありがとう、アルノー。
「はぁー、敵将なんてみんなお金にしか見えないわね。みんなもがんばって働いて、いい汗をかいてお金を儲けましょうー!」
握り拳を振り上げたら、イヴォンが私に飛びかかってきて怖かった。
アルノーが縛ったロープで動きを止めてくれなかったら危なかった……
フレデリックに指示をして再び拡声の魔法を使ってもらう。
リシャールは橋の向こう側まで撤退していた。逃げ足は早い……まぁ、逃げ足が早いなんて完全無欠の褒め言葉だけど。
「リシャール様、私はこれにてお先に撤収させていただきますが、そちらが進軍なさるときはちゃんと柵を片付けてくださいね! 後片付けのできない男性はもてませんよ!」
なにか向こうの陣地からむぐむぐ言っているのが聞こえた気がしたけどブサイク語だったからよくわからなかった。
まぁ、後片付けといっても柵を建てたのは私達なんだけど……そのあたりも気にならなかった。
「じゃあクレティアン砦まで撤収しましょう! 皆さん、歌でも歌いながら陽気にいきましょう!」
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科