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投資

お父様の了承はいただいた。

だからあとは話をするだけだ


ヤヒア子爵は使者を送って懐妊を祝ってくれた。

「いいお兄ちゃんじゃないですか」と、アメリーお義姉様に言ったら照れ笑いしてた。可愛い。

それ以外にも領内の村人さん達から続々とお祝いが届けられる。

そして辺境仲良しクラブからは、ペラン子爵は本人が、アルテレサ伯爵は名代として息子のロニー君がお祝いに駆けつけてくれた。

純粋にありがたいし、今後のお話もしやすいんだけど、あなた達仕事ないの? 領地での仕事の方が優先よ?

こうして辺境仲良しクラブが揃うのは他の勢力に結束力を見せつけるという意味でもありなのは確かなんだけどさぁ……

特に目の前にヤヒア子爵の使者がいる状態でキャッキャウフフできるのは国中に、辺境仲良しクラブの仲良しっぷりを知らしめることができる。


「めでたいことです! これでペドレッティ伯爵家も安泰……いや、ユーリ様の背中を見て育つと、大芸術家になるのでしょうか」

「大芸術家! それは我々もこの子が活躍するころまでに平和な世の中にせねばなりませんね」

ペラン子爵とロニー君がおしゃべりをしている。

ユーリお兄様の背中を見て育ったら、仕事しない子になっちゃう。あとお酒も飲んじゃう。ある程度はアメリーお義姉様の背中を見て育ってほしい。

美文字書いて、美文字。

「ペラン子爵、ロニー様、お話があるのですがよろしいでしょうか」

アメリーお義姉様の前でワイワイやってる2人に声をかける。

2人は顔を見合わせた。




2人を招いたのはお父様の執務室である。

お父様と私とペラン子爵とロニー君だけの秘密の辺境仲良し相談室だ。

「領内から金鉱脈が見付かりました」

私の単刀直入の言葉に2人は「おぉ」と声を出す。

「それはめでたいことです。我々もあやかりたいものですね」

「これで名実ともに北方の守護者ですね」

……2人とも、笑って聞いてくれる、か。

やはりどこであっても、どんな時代であっても金は貴重だし、誰をも魅了する。すげぇ資産である。

で、その使い方の話である。

「私達、ペドレッティ家は、これらで儲けた資金をペラン子爵領、アルテレサ伯爵領の港の整備に投資したいと思います。港を整備すれば……もっと大きな港町にし、商人達を誘致すればどちらも今よりももっと儲けることができるはずです。儲けたお金の一定割合をペドレッティ家に還元していただけないでしょうか。私達はウィンウィンの関係になれると思いますわ」


ペドレッティ伯爵家領には港がない。

ペラン子爵領にも、アルテレサ伯爵領にも港がある。

しかし、二家の港はとても小さい。

ペドレッティ伯爵家には、資金という武器ができた。

港を整備してみんなでボロ儲け作戦である。


「ありがたいことではありますが……」

やや困惑した表情でロニー君が口を開く。

「港を整備してもらうのであれば、儲けたお金の一定割合をペドレッティ家に収めるのはある意味当たり前と言えるでしょう。しかし、そもそもこれはペドレッティ家の見つけた鉱脈です。我々に共に儲ける機会を与えてくれるのはなぜですか?」

にこりと笑う。




この2人は金鉱脈を見つけたことも我がことのように喜んでくれた。ありがたいことだと思う。

ただし、個人の愛が集団の利益に上書きされるのはよくある話だ。2人が善人であったとしても、集団に飲み込まれたら、ただの個人なんて弱いものだ。

二家の領内の全員がペドレッティ家の繁栄を100%喜んでくれるだろうか。

ペドレッティ家の繁栄を妬んで、恨みに思う人物はいないだろうか。


今は辺境仲良しクラブはともに同じ方向を向いて、この戦乱を乗り切らなければならない。ペドレッティ伯爵家だけで乗り切ることができる状況ではないのだ。

そんな中の、この金鉱脈の発見はペドレッティ家だけでなく、三家すべてが繁栄するものでなければならない。

辺境仲良しクラブがすでに一蓮托生の同盟となっている以上、金鉱脈の発見をそれだけにすることはできなかった。


二家には港を整備して必死で儲けてもらう。ペドレッティ家はそれを支える。




……なんてことは、口に出して言えないから、私はただ、にっこりと笑った。

この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。

男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。


モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。


☆今回の登場人物のモデル

ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科

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