飲酒
村のお産婆さんにアメリーお義姉様を診てもらった。
「おめでとうございます。ご懐妊ですよ」
うん、もう確定だわ。まぁ、家に帰ったら侍医のファンニ医師にも念のために確認してもらうことになるんだろうけどさ。
ユーリお兄様から遠話の魔法を使ってお父様にお伝えする。
そのあとはルノワ村からの帰還を1日延長して、村人全員巻き込んでのどんちゃん騒ぎだ。
村人さん達も喜んでくれているのが、本当に嬉しい。
ここで村人さん達が自分のことのように喜んでくれるのは、ペドレッティ家の……お父様の為政が誤っていないからだ。ありがたいことだと思う。
アメリーお義姉様はお酒は一滴も飲まなかったけど気分悪そうだった。気分悪そうだけど嬉しそうだった。
ユーリお兄様は飲みまくり、詩を読みまくっていた。プロ詩人かよ。プロ詩人だったわ。
アルノーら、護衛さん達はかわいそうに一滴も飲めなかった。ごめんねー。
村人さん達は全員浴びていた。比喩じゃなく浴びていた。浴びて、飲んでいた……絶対明日の朝、生き残りいないやつじゃん。
私? 飲んだよ。
記憶がなくて、気がついたら朝だったよ。
村人さん達は頭を押さえ、明らかに悪い顔色で、それでもそれなりに盛大に見送ってもらった。
帰りの馬車に中、まだまだ余裕そうなユーリお兄様……アルティメイットアルコールモンスターかよ。
お酒を飲んでいないので、それなりに余裕そうなアメリーお義姉様。この人は私より弱いから。
そして、私はこの世の地獄を味わっていた。吐きそう。やばい。吐きそう。口の中が胃液味。
「お前、飲み過ぎだぞぉ」
からかうユーリお兄様と苦笑するアメリーお義姉様。
「祝い酒なんだから飲まないわけにはいかなあっ、あっ、頭痛い」
うずくまる。
子供ができたことと、村人さん達が本気で祝ってくれてることの二重の喜びである。飲むよなぁ、そんなん。
「馬車酔いかぁ?」
違いますぅ。どう考えても違いますぅ。
反論しようとしたら、その瞬間馬車が揺れて、またうずくまった。
「でも、ジェルメーヌ様も気をつけなければ……まだ未婚なのですし」
アメリーお義姉様がなんか言った……なんだ? 私はなにをした?
私がアメリーお義姉様のほうを見ると、私に記憶がないことに気づいたのだろう、アメリーお義姉様が少し考える。
「……いえ、覚えていらっしゃらないのでしたら、そのほうが幸せなのかもしれません」
待て。私はなにをした。
「大丈夫ですよ、ジェルメーヌ様。私は味方ですから」
いいから、私はなにをしたんだ。
「強く生きていきましょう」
だからぁ!
教えてもらえなかった。
家に帰ったら、家中酒臭かった。
ユーリお兄様から遠話の魔法で話を聞いたお父様とベルナールお兄様が使用人を巻き込んで飲みまくったらしい。地獄ですよ、ここは。
乙女が触れちゃいけない嘔吐物とかがそのあたりに吐き散らかされてて、なにがどうなったらこうなるんだ……
それでもお父様とベルナールお兄様はピンピンしてた。家宰のシャルルとかメイドのルネとかはしばらく使い物にならないだろう。かわいそうに。
お父様はアメリーお義姉様に頭を下げ、アメリーお義姉様はひたすら恐縮している。
ユーリお兄様とベルナールお兄様はさっそく乾杯してた。いや、兄弟仲がよくて、それはとても嬉しいんだけどさぁ! まだ昼間よ、昼間!
ヤヒア子爵と辺境仲良しクラブの面々にもアメリーお義姉様の妊娠の報は伝わり、それぞれ使者を送ってくれるらしい。
使者は手厚くもてなすにしても、これはシクス侯爵家との友誼にはプラスでしかない。
しかし……
辺境仲良しクラブの人が使者としてやってくるのか。ペラン子爵とアルテレサ伯爵、彼らは戦乱の世の中でペドレッティ伯爵家が生き残るために絶対に対立してはいけない柱だった。そのために……
酒に焼けた頭でぼーっと考える。
ちょうどいいからこの機会に交渉してみよう。
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科




