美女
このゲーム、王冠の野望では季節の最初に特別イベントが起こることがある。
以前、ユーリお兄様がユニコーンにまとわりつかれて「こいつ、まさか広義の処女なのでは?」と思ったのがまさにそれ。
あのイベントではユーリお兄様の魔力が1上がることによって、ユーリお兄様が魔法使いになるという……処女だけに。いや、アメリーお義姉様と結婚してる現状、魔法使いというのは問題があるのだけど、それはそれとしてユーリお兄様は魔法使いになる素晴らしいイベントであった。
ユニコーンイベントで上がる能力値はランダムなので、ベルナールお兄様の武力が101とかにもなったりする。
もちろんいいイベントばかりじゃなくて、亜人の侵攻もあったりする。ゲーム内では強制的に兵士が減らされるイベントだったけど、ベルナールお兄様が大活躍すればそこまで兵士は減らないんじゃないかと思っている。
あとはコボルドが採石場に出現して、石をコバルトに変化させることによって採石場が使えなくなるとか……うん、こっちは純粋に困る。
そして、この、絶世の美女のイベント……
「あめりーおねーさま、あめりーおねーさま」
アメリーお義姉様の肩を揺する。
「ごめんだめゆらさないで。でる」
ダメだ、この人使えないわ。
いや、アメリーお義姉様を責めないでほしい。常に飲ませ続ける父と兄が悪い。
いや、弱いのに飲んじゃうアメリーお義姉様に責任がまったくないとは言わないけど。
「そんちょーさん、そんちょーさん、そんなにびじんさんだったんですか?」
「わしはみてないけどねー。このよのひとじゃないみたいだったらしいですぞ」
バカみたいな喋り方だけど、とにかく必死なんだ。許してほしい。
「そのゆびさしたばしょは、わかりますかぁ?」
「わしはわからんけど、びじんをみたむらびとならわかるとおもうよぉー」
わかるんだな? ほんとだな? よし。
机の下でガッツポーズ。
「おとーさま、これはだいじですよ」
「ジェルメーヌ、お前、呂律が回っていないぞ」
あんたはなんで呂律回ってるんだ、呂律がぶんぶん回ってるじゃないか。
お父様も2人のお兄様も顔色も変わっていない。化け物どもめ。
あっ、なんか、視界がぐらぐらしてきて……
「お、おい、大丈夫か?」
「あしたのあさ、だいじなおはなしがあります」
ぐらぐら……
ぐぅ。
翌日、頭が非常に痛かった。
でもアメリーお義姉様と村長はそもそも起き上がれてすらいないので、私にも多少は酒強遺伝子があるのかもしれない。っていうか、なんだこのお父様とお兄様2人。
「ジェルメーヌ、顔色が悪いぞ」
「そういえば、アメリーも調子が悪そうだったなぁ」
他人事のようなユーリお兄様。
「そうなのか。義姉上のところに見舞いに行ったほうがいいか」
いかないでやってくれ。声かけられるだけでつらい状態だ。
私も大概につらい。でも伝えなければならない、大事な情報なのだ。
痛む頭を手で抑える。
「そういえば、昨日、寝る前に大事な話と言っていたね?」
「はい……あっ、ちょっと待って」
頭痛がひどくなった。もうお酒飲まない! ……と言いながらまた飲んじゃうんだろうなぁ。
「……あの絶世の美女のお話です。ただの美人さんだったらともかく、直後に姿を消したとか」
「不思議な話だね」
お父様が穏やかに話を聞いてくれる。
「その場所を掘ってください」
頭痛に耐えながらの私の言葉にお父様は不思議そうな顔をする。
「頭が痛いのかい?」
そうじゃない。質問してほしいことはそれじゃない。
「学園でいろいろな本を読みました。ある伝説をまとめた本の中に、あの話とそっくりなお話が書かれていたんです」
ピンときていない様子のお父様とベルナールお兄様。
あれ、ユーリお兄様は……
「あ、俺も思い出した。女神パルミラの伝説だ」
知ってたか! さすがに詩人やなー。
「そうです。女神パルミラが人間に化けて顕現し、指を差した場所を掘ってみると……という、あのお話です」
そう、そのイベントです!
この話の舞台になっているのはイタリアによく似た地形の架空の地域です。
男性登場人物のほとんどにはモデルとなっている人物がおり、「そのモデルとなっている人物の所属している、または所属していたチーム」の本拠地が、その登場人物の勢力範囲となります。
モデルとなっているのはあくまで外見と地域だけであり、その人物の能力や適正、チームの規模や本拠地の規模などはまったく関係ないものとします。
☆今回の登場人物のモデル
ジェルメーヌ・ペドレッティ:ヒト科